閑話 サウナに入ろう
数日後。
ゴルドが再び
湯けむり亭へやってきていた。
「なるほどなぁ」
「改築は大浴場拡張」
「外には巨大露天風呂」
「休憩所と食堂も作る、と」
ゴルドは紙を見ながら頷く。
「街外れの土地を活かす方向で行きたいんです!」
ミリナが説明する。
「いいと思うぞ」
「湯けむり亭の強みを伸ばしてる」
そして。
ゴルドはもう一枚の紙を見る。
「で」
「問題はこれだ」
「……さうな?」
全員の視線が桶さんへ向く。
(まぁ説明だけじゃわからんよな)
桶さんも納得だった。
(でもこれ、割と簡単に作れるぞ)
「マジか?」
(試しに簡易的なの作ってみればいい)
「ほぉ?」
ゴルドの目が輝く。
職人魂に火がついたらしい。
(小屋作って)
(熱くした石置いて)
(そこに水かけるだけだ)
「だけって言うほど簡単か?」
(異世界なら火の魔法石あるだろ?)
「あー……」
ゴルドが納得する。
火の魔法石。
熱を発する一般的な魔道具素材。
比較的安価で。
暖炉代わりにも使われている。
(火を直接使わんから煙突もいらん)
「確かに便利だな」
さらに。
桶さんは頼んだ。
(あと熱に強い石用意してくれ)
「任せろ」
そして。
翌日。
湯けむり亭の裏庭には。
小さな木造小屋が完成していた。
「早っ!?」
ミリナが驚く。
「まぁこれくらいならな」
中は六人ほど入れる広さ。
中央には熱した石。
壁際には座る段差。
簡易的だが。
かなりそれっぽい。
さらに。
外には。
木で作られた簡易水風呂まで設置されていた。
「とりあえず水張っといたぞ」
「おぉー!」
(いいじゃんいいじゃん)
桶さんはかなりテンションが上がっていた。
そして。
いよいよ試運転。
最初の温度は八十五度くらい。
「もう十分熱いんだけど!?」
シャルネが汗を流している。
「うぅ……あつい……」
エナ達子供組も涙目だ。
一方。
ミリナとルーナは意外と平気そうだった。
「じわじわ温まりますねー」
「なんか不思議です」
対して。
ゴルドとバルミナは微妙そう。
「……で?」
「これの何がいいんだ?」
「ただ熱い部屋だねぇ」
(まぁ待て)
桶さんはニヤリとする。
(本番はここからだ)
ミリナへ念話。
(熱くなった石に水かけてみ)
「はい!」
ミリナが柄杓で水をかける。
しゅわぁぁぁぁ――!!
一気に蒸気が広がった。
「うわっ!?」
「熱っ!?」
空気が変わる。
一瞬で温度が跳ね上がった。
「あっっつーーい!!」
「無理無理無理!!」
エナ達が飛び出す。
シャルネも耐えきれなかった。
「なんだこれぇ!?」
猫耳を押さえながら逃げていく。
だが。
ミリナとルーナはまだ残っていた。
汗だくだが。
まだいける。
一方。
ゴルドとバルミナは。
「……ほぉ」
「ようやくちょうどよくなったねぇ」
むしろ満足げだった。
(ドワーフつえぇな)
桶さんは若干引いていた。
「もう一杯いくか?」
ゴルドが確認する。
皆頷く。
再び。
しゅわぁぁぁぁ!!
蒸気が小屋を満たした。
温度は百度近い。
その時。
(ミリナ)
(タオルで二人仰いでみ)
「えっ」
「この暑さの中ですか!?」
(いいから)
「や、やってみます!」
ミリナはタオルを持つ。
(あと『熱波入ります!』って言いながら仰ぐんだ)
「ね、熱波入ります!!」
ぶわっ!!
「ぐおっ!?」
「はははっ!!」
熱風が直撃する。
「これやばいねぇ!!」
「だが嫌いじゃねぇ!!」
ドワーフ二人が笑っていた。
しかし。
ミリナは限界だった。
「あっつーーい!!」
「もう無理ですぅ!!」
脱出。
残ったのは。
ルーナ。
ゴルド。
バルミナ。
三人とも汗だくだ。
すると。
ルーナが真顔で聞いた。
「……もう一杯いきます?」
ゴルドとバルミナが顔を見合わせる。
「……ここで引いたら」
「負けた気がするねぇ」
「だな」
しゅわぁぁぁぁ!!
三度目。
灼熱の蒸気。
その瞬間。
ルーナが立ち上がった。
「熱波入ります!!」
ぶわぁぁぁっ!!
「ぐああああっ!?」
「熱っっっ!!」
まさかのルーナ参戦。
その熱波に耐えきれず。
ゴルドとバルミナが脱出した。
「負けたぁぁ!!」
「なんだこの娘ぇ!!」
その直後。
ルーナも真っ赤な顔で出てくる。
「はぁ……はぁ……」
「し、死ぬかと思いました……」
すると。
ミリナが説明した。
「今度は水風呂です!」
三人は半信半疑で浸かる。
「――っ!!」
その瞬間。
全員の顔が変わった。
「……なんだこれ」
「体の中から変なの溶けてく感じするねぇ……」
「やばい……」
さらに。
外で休憩。
風が気持ちいい。
そしてまたサウナ。
これを繰り返す。
子供組とシャルネは。
「もういいわこれ!!」
「熱すぎる!!」
途中離脱。
だが。
ミリナは二セット。
ゴルドとバルミナはしっかり三セット。
そして。
ルーナは誰より長く三セット完走した。
最後。
三人は放心したように空を見上げていた。
「……これは」
ゴルドが呟く。
「あぁ……」
バルミナも頷く。
そして。
ルーナが静かに言った。
「絶対導入しましょう」
三人は。
がしっと固い握手を交わした。
(……サウナ適性高ぇなルーナ)




