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転生したら桶でした  作者: 玉葱将軍


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第二十七話 湯けむり亭の現状


 桶さん誘拐事件から。


 二週間ほどが経った。


 湯けむり亭は相変わらず大盛況。


 いや。


 以前よりさらに忙しくなっていた。


「いらっしゃいませー!」


「次のお客様こちらです!」


 受付ではミリナが元気に動き回り。


 ルーナの湯土産コーナーも大人気。


「新作の温泉まんじゅうですよー!」


「こっちの薬湯石鹸もおすすめです!」


 そして。


 その横には。


 シャルネの姿もあった。


「並べるなら、こっちの方が見やすい」


「あ、ほんとだ!」


「シャルネさん、センスありますね!」


「まぁな」


 シャルネは普段。


 湯けむり亭周辺の警備をしながら。


 ルーナの手伝いもしていた。


 盗賊団の件以降。


 不審者対策も兼ねている。


 しかも。


 冒険者としてかなり優秀らしく。


 常連達からの信頼も厚い。


「おっ、シャルネちゃん今日も警備か?」


「まぁね」


「変なの来たら頼むぞー!」


「任せとけ」


 そんな感じで。


 すっかり湯けむり亭の一員になっていた。


 そして。


 シャルネが正式に家へ引っ越してきた日。


 事件は起きた。


「ここが新しい部屋です!」


「おー、結構広いじゃん」


「シャルネさん、荷物少ないですね!」


「冒険者だからなぁ」


 皆でわいわい荷解きをしていた時だった。


(まぁ改めてよろしくな、シャルネ)


「うん、よろしく――」


 シャルネが止まる。


「…………は?」


 部屋の空気も止まった。


 シャルネがゆっくり振り返る。


 ミリナを見る。


 ルーナを見る。


 桶を見る。


「……今」


「誰?」


「あ」


 ミリナが固まる。


 そういえば。


 まだ話していなかった。


「あ、あのですね!」


「実は桶さん……」


「みんなと会話できるんです!」


 数秒の沈黙。


 そして。


「……は?」


 シャルネが桶さんを見る。


 黄色い桶。


 いつもの黄色い桶である。


(どうも)


「ぎゃあああああああっ!?」


 ものすごい勢いで飛び退いた。


「しゃ、喋ったぁぁぁ!?」


(いや、喋るっていうか念話だけどな)


「うわあああまた頭の中にきたぁぁ!?」


 普段クールなシャルネからは想像もつかないくらい取り乱していた。


 猫耳は逆立ち。


 尻尾はぶわっと膨らみ。


 完全にパニックである。


「なななななにこれ!?」


「桶だよな!?」


「なんで喋ってんの!?」


「いや落ち着いてください、シャルネさん!」


「無理!!」


 ルーナ達は慣れた様子だった。


「最初みんなそんな感じでしたよー」


「うんうん」


「私もびっくりしたし」


 だが、シャルネは止まらない。


「いやだって桶だぞ!?」


「黄色い桶だぞ!?」


(そこ強調する?)


「しかも今ツッコミ入れた!?」


(そりゃ入れるだろ)


「うわぁぁぁ頭の中にぃぃ!!」


 ミリナ達は思わず笑ってしまった。


 その日から。


 シャルネもまた。


 賑やかな湯けむり亭の家族になったのだった。


 ――だが。


 そんな湯けむり亭には。


 新たな問題も生まれていた。


 一つ目。


 人気が出すぎたこと。


「本日も予約いっぱいです……」


 ミリナが申し訳なさそうに頭を下げる。


 以前までは。


 なんとか予約を回すことができていた。


 だが最近は違う。


「来月まで空いてないの!?」


「うそだろ……」


「せっかく街まで来たのに……」


 予約を取ること自体が困難になり始めていた。


 そして。


 二つ目。


 湯土産の効果上昇。


 今までは。


 桶さんで直接かけるより効果は弱く。


 温めても普通の回復薬より少し弱い程度だった。


 だが。


 最近は違う。


「これ普通のポーション並みに効くぞ!?」


「怪我の治り早すぎない!?」


「疲れもめちゃくちゃ取れるんだけど!」


 噂は一気に広がった。


 結果。


 爆発的に売れている。


 中には。


 転売目的で大量購入しようとする者まで現れた。


 そのため。


 こちらも現在は予約制。


 本数限定販売となっていた。


 そして。


 その二つの原因。


 それは間違いなく。


 秘湯事件の時。


 桶さんが新スキルを得たことだった。


(効能倍加の影響だろうなぁ……)


 桶さんは内心で呟く。


 嬉しい。


 もちろん嬉しい。


 だが。


 複雑でもあった。


「最近予約取れなくて寂しいよなぁ」


「あぁ……」


「昔はもっと気軽に来れたのに」


 そんな常連達の声も。


 耳に入っていたからだ。


 そして。


 ある日の夜。


 湯けむり亭の家では。


 みんなが集まっていた。


「というわけで!」


 ミリナが真剣な顔で言う。


「今後の対策会議です!」


 その場には。


 バルミナ。


 ルーナ。


 シャルネ。


 エナ達。


 そして。


 ゴルドの姿もあった。


「おう」


 ゴルドが頷く。


 彼には事前に。


 常連達から、今の湯けむり亭についての意見を集めてもらっていた。


「まぁ改善点、結構出てきたぞ」


 その言葉に。


 皆の表情も少し引き締まる。


 湯けむり亭は。


 今まさに。


 次の段階へ進もうとしていた。

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