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神の頬に触れるような気持ち  年代記第七章  作者: ヌメリウス ネギディウス


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第二章 ロックタイト島綺譚 14

 私は秘密基地に何か手がかりがないかもう一度調べて見るつもりだった。それにもう一箇所行っておかなければいけない場所がある。私はその足で道具屋へ向かった。

 爺さんと再び顔をあわせるのは全く気が進まないのだけれど仕方がない。おそらく何らかの情報を持っているはずだ。あの爺さんが少年を匿っているのかもしれない。荒事となっても相手は爺さんだ、執事の力を借りるまでもないだろう。私は少年と爺さんとは以前からの付き合いがあり、少年が下巻を持っているのを見て上巻がこの店にあることを少年に伝えたのではないだろうかと推測している。それを確かめよう。

「誰だ。店は休業だ」

 店に入るなり爺さんが言った。私の姿を確認すると眉根を寄せ不快感をあらわにした。

「まだこの町にいたのか。わしがお前を通報したんだ。まだ捕まっていなかったか」

 まったく食えない爺さんだ。

「おかげで人探しをする羽目に陥りましたよ。ジュリオのことはご存知ですよね」

 私は言った。

「領主の命でその少年を探しているんですよ。協力していただけると助かるんですが」

 知り合いならどこへ行ったか手がかりを持っているかもしれない。

「わしは子どもが嫌いでね。いつも店に来てはいろいろ聞いてくるんだよ。私はうんざりしていたところだ。そういや今日は姿を見ていないな」

 どうやら知り合いという線は消えたようだ。けれど嘘を言っているかもしれない。

「この本に見覚えはありますか?」

 私は上巻を渡した。私が買い取る時と同様何の興味も示さなかった。

「この本はどこから手に入れたのですか?」 

「ふん、なぜそんなこと答えなければならないんだ」

「この本が行方不明の鍵かもしれないんですよ」

 老人は今度は幾分真面目に本を手に取り調べる。

「前からあったかもしれないがわからんね。そんなことはいちいち気にしちゃいない」

 と言う。

「この本について少年と何か話しましたか?」

「いや、そんな覚えはないな」

 弛んだ瞼の奥の小さな目を見るが、嘘を言っているようには見えない。本当に知らないらしい。

「ではこちらの肋骨レコードはどこで手に入れたものなんですか?」

 私は買い取った肋骨レコードを見せた。老人はそれを受け取るとぞんざいに扱った。

「それはもう私のものです、もう少し丁寧に扱ってください」

「ふん、くだらんね」

 老人が私に返すのを慌てて受け取った。

「こんなものがこの店にあるはずがない。黄金の犬のレーベルマークが入っている、つまり後期のものだ。わしはそれ以前のものしか取り扱っていなかったからな。こんなものがここにあるはずもない」

 老人はここにあるはずはないとまた同じことを繰り返した。

「まだ肋骨レコードに対して愛があるのではないかと思ったが違っていたようですね」

「ふん、愛、そんなものはない。憎しみだ。なんならそのレコードは燃やしてやりたいくらいだ。私は肋骨レコードが嫌いだ。憎んでいるといってもいい。なんでこんなものに翻弄されなければいけないのか。全く腹がたつ」

 吐き捨てるように言った。

「その二つはここにはないものだ。わかったなら帰ってくれ、これ以上は話したくない」

 だとすれば肋骨レコードは誰のものでどうしてここに持ち込まれたのかだ。

「わかりました」

 本の情報は老人がもたらしたという私の仮説は見当違いだったようだ。

 私はそれでも諦めきれずに帰るふりをしたが踵を返しいきなり店の奥へ分け入った。「いるんだろ、返事をしろ」私は叫んだが、部屋の奥は狭く、どうみても爺さんが一人で住んでいるようにしか見えなかった。どこにも匿うような場所はない。そこは狭くてみすぼらしくて哀れだ。私はてっきり少年は爺さんと数少ない信用できる知り合いだと思っていた。古いものに精通している者などこの町にはほとんどいないだろう。だから見ず知らずの私にまで懐いてきたのだろう。しかしその読みは全くのところ外れていたようだ。そうであれば話は簡単に片付くという私の願望であったようだ。だが外れていたことを確認できただけでも良しとしよう、そう思うのはあまりにも楽天的すぎるだろうか。

「邪魔して悪かったね」

 私は爺さんに謝りその場を辞した。


 その後メンドーサのもとを訪れ、二、三の確認を行うと私は領主に一日目の捜査は何の収穫もなかったことを伝え、宿屋には戻らず秘密基地に戻った。

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