winter vacation 5
藤本麻衣の家は京都駅から本当に近くてのんびり歩いても三十分は掛からないとのこと。
道中は会話をしたり見かけたお店を覗いてみたり。そんな感じで歩いていたから結局一時間近く経ってしまっていた。
「こっちに着いた時より気温が下がったように感じます」
「実際下がっているよ。言ったでしょ。雪になるかもって」
見上げると空はいつの間にか雲一面の曇天に変わっている。
黒色寄りの灰色として有栖の目には映っていた。
「重そうな雲です」
「今すぐ降ってきても不思議じゃない。待ち遠しいな」
「待ち遠しい?そんな風に思うのはなぜですか?」
「京都の雪景色はそりゃもう風情の塊みたいだから。まあ、地元愛ともいうけど。見たら有栖だって絶対に同じこと思うよ」
有栖は想像してみる。
真っ白な雪に包まれた均整の取れた古都の街。
歴史のある寺院の屋根に積もってやがて真っ白に変わってゆく・・・雪が降ればどこでも同じ景色だと思っていたけれどあらためて言われると
「確かにそうかもしれません。私も楽しみになってきました」
「あ〜あ、どうせなら今すぐ降って欲しい」
二人はもう一度空を見上げる。本当に今すぐにも降りそうなのにまだ降る様子はなかった。
風が一段寒くなったのは雪がカウントダウンを始めたからなのかもしれない。
「ずいぶんのんびりだったけど、到着!」
麻衣の指差す方には
「・・・立派な門構えですね。歴史を感じます」
重厚な門は見るからにこれまでたくさんの時代を通して家を守ってきたという威厳にも似た圧を感じる。
さらに門の両側はこの一角を囲むほどの塀が連なっている。どこまで続いているのだろう。
さすがの有栖も溜息を漏らさないわけにはいかなかった。
「そう思ちゃうよね。ウチってさ、生粋の京都人だからその分歴史もあるんだって」
「でしょうね。正直圧倒されています。それに由緒ある出身ということを初めて聞きました・・・・・・あら?」
有栖は目に留まった表札を見て
「ここには『九条』とありますが・・・」
「だよね。えっと・・・九条ってさ、お母さんの旧姓なんだ」
歯切れの悪い麻衣のことを見て、きっとなにか事情があるのだろうと察して深く聞かないように言葉を選んで
「なんだか京都って感じの名字ですね。カッコいいです」
「でしょ。有栖の『水無月』だってカッコいいよね」
「ありがとうございます。私も常々思っていました」
「う〜今頃になって冷えてきた。早く入ろ」
「そうですね。では・・・お邪魔します」
有栖達は正面の門の脇にある通用口から敷地の中に入ってゆく。
「これは・・・」
真っ先に飛び込んできた景色に再び圧倒させられる。
「広いお庭ですね・・・想像の遥か上をいっています。それにとても素敵な日本庭園です」
「なんか仰々しいよね」
「そんなことありません。木々の配置、池の形、全てが計算されています。正面から見ても縁側から見てもどちらからも素晴らしい景色を繰り出しているはずです」
「さすが生粋のお嬢様は感想が違うね。私にはただただ大袈裟な庭くらいにしか見えないのに」
「麻衣だって生粋のお嬢様。ですよね。もっと価値を知るべきですよ」
「私はそんなんじゃないよ・・・」
その声はあまりに小さくて有栖の耳には届いていなかった。
「お疲れ様です。水無月有栖様。お荷物を預からさせていただいてもよろしいですか?」
いつの間にか使用人が現れて挨拶のためのお辞儀をしていた。
「こちらこそお世話になります。ではよろしくお願いします」
使用人はスーツケースを受け取ると
「それではお部屋まで運んでおきます。それと必要なものがありましたらなんなりとお申し付けください。では失礼します」
使用人が行ってしまうと
「なんかさ、落ち着かないんだ。慣れてなくて。ずっとどこかで見られているみたい」
「それがあの方の仕事です。私は・・・・・・」
有栖にはずっと春日がついていてくれている。生まれた時からだから当たり前のことだと思っていた。けれど麻衣はそうじゃないらしい。
「もしかして突然の訪問は迷惑だったでしょうか」
「ううん。そんなことない。むしろ来てくれてありがとうって思っている。あ〜早くアメリカに帰りたい。向こうの方がよっぽどリラックスできるよ」
笑顔を見て麻衣の本心だと理解する。一体どんな事情があるのだろう。それは麻衣が言い出さない限り立ち入ることではない。
「私もです。自由って言葉が似合う国ですよね」
「ね〜。でもさ、有栖が急遽帰国してくれたことホントに良かった。実はさ、有栖が一緒なら楽しいクリスマスとか年末年始を過せるんじゃないかなって思ったんだ」
「なら良かったです。今回の帰国はきっと麻衣に呼ばれたんでしょうね」
「それって運命的なこと?」
「そういうことにしておきましょう」
「玄関先でいつまでお喋りをしているのです?風邪でも引かれたら九条家の名折れですよ」
今度は目の前に白髪混じりだがキレイに髪を整えて着物を召している女性が立っていた。
有栖は一目でこの家の当主だと感じる。和やかな笑顔の奥には意図的に隠されている鋭いまでの視線を感じないわけにはいかなかった。
「初めまして水無月有栖と申します。この度は突然のお伺い大変失礼しました。ご迷惑にならないといいのですが・・・」
「ご丁寧にどうも。こちらこそご来訪歓迎いたします。この家の当主をしています『九条 静』です。よろしくお願い致します」
「こちらこそよろしくお願い致します」
有栖は圧倒されて深々とお辞儀をしていると
「麻衣。お話なら応接室を使いうといいですよ」
「はい・・・おばあさま」
麻衣は急に大人しくなって声も小さくなっていた。
「それにしても水無月の家はなかなか寛大なのですね」
何を言われているのかすぐに察する。有栖は髪を触って
「はい。最初は驚いていましたが事情を話したら冬休みの間だけ、という条件付きですけど許してもらえました。これは向こうでの生活を楽しんでいるという・・・そうですね・・・わたくしなりの表現です。意外なことですけど似合っていると思っています」
「有栖、今『わたくし』って」
「仕方ありません。緊張しましたから・・・そんなにおかしいですか?」
笑いを堪えている麻衣を見て緊張が少し緩んだみたいに感じる。
「麻衣も見習った方がいいです。言葉遣いでその人の品というものが計られるのですよ」
和やかに諭すように・・・だが、この人の奥底の鋭さを感じる有栖だった。
「今夜にも雪が降るでしょう。温かいお茶を用意させます。有栖さん、ごゆっくり寛いでください」
「はい。ありがとうございます。あの・・・」
行こうとする当主に声を掛けると立ち止まる。そのままの後ろ姿に向かって
「素敵なお庭です。雪が降る前に見ることができて良かったです」
振り返るととても上品な笑顔がある。
「気に入っていただけましたか。有栖さんなら雪景色も楽しめることでしょう」
「ありがとうございます。とても待ち遠しいです」
当主は『失礼』とだけ言葉を残して振り返ると行ってしまう。
「あ〜緊張した・・・おばあさまと話すのってまだ慣れなくて」
緊張が解けたのだろう。有栖の知っている麻衣に戻っていた。
「そうですか?私には素敵な方だとお見受けしました」
「え?それは・・・ほら・・・有栖が生粋のお嬢様だからだよ。言ったよね私は違うって」
さっきは聞き取れなかったが今度ははっきりと聞こえた。
「麻衣はもっと理解した方がいいですよ」
「言っていることは分かるよ。でも、ま、いろいろあるんだ。ホント寒くなってきた。中入ろっか」
「そうですね。名折れにはさせたくはありませんから」
玄関に入るとまたしても歴史を感じないわけにはいかない。
広いのは当たり前だとしても磨かれた廊下は一体何年の歳月を過ごしてきたのだろう。柱も太く時代を感じる。今じゃこれだけの質の木材を集めるなんて不可能に近い。
「凄いです・・・・・・お邪魔します」
有栖はブーツを脱いでスリッパに履き替えてから麻衣の案内で廊下を歩いてゆく。どこまで続いていると思うほどの長い廊下。
屋敷は平屋建ての日本家屋だから階段なんて存在していない。水無月の家と比べるのは失礼だと分かっていても歴史のあるお金持ちの家とは平屋なんだと感じていた。
通された応接室は板張りの和室で大きな革張りのソファーが設えてある。テレビなんて下賎なモノだと言わんばかりに排除された、訪問者との談笑や接待をするための場所だった。
水無月家の応接室にはテレビもオーディオも備え付けてある。それは訪問者が退屈しないようにしていたものだが、実際にはこれが応接室なんだと思わされていた。
使用人がそれぞれの前にお茶とお菓子を置いて退出すると
「さ、どうぞ」
「ありがとう。いただきます」
ポットに入っていたのはアールグレイだった。これは麻衣が事前に有栖の好みを伝えていたから必然として用意されていた。
それにいっしょにおいてあるのは
「京都のウエルカムお菓子と言ったら・・・」
「八つ橋」
「だよね。でも紅茶と合わせるのは初めて」
「なら気に入ってください。合いますよ。いただきます」
ポットから立ち昇る湯気がさらに気温の低下を示しているみたい。
「・・・へぇ・・・ほんと・・・合う」
「でしょ。日本茶もいいですが紅茶との組み合わせも美味しいんです」
「気に入った。今度おばあさまにも勧めてみようかな」
「いいと思います。元々日本茶も紅茶も原料は一緒ですから」
「そうなの?初めて聞いた」
「カメリアシネンシス。学名だとそう呼ばれています。両者は発酵させているかいないかの違いです。烏龍茶も同じです」
「博識だね。さすが有栖」
「そうですか?一般常識かと」
「だから、そういうところが生粋かそうじゃないかの違いなんだって」
「さっきから同じこと聞いています。事情があると思っていましたからこちらから聞かないようにしていましたが話せる程度でいいです。聞いてもいいですか?」
麻衣は紅茶を新しく注ぎ足して八つ橋を一口で食べてから、なんとなく周りを見回して
「私がこの家に来たのは去年の春だったの」
麻衣は首からペンダントを取り出してロケットを開く。
「・・・私のお母さん」
中に入っていた写真を見せる。
「きれいな方ですね。どことなくおばあさまに似ていますが、もっと・・・柔らかい感じがしますね」
「でしょ。自慢のお母さんなんだ。残念ながら私はお父さん似だから美人じゃないけど」
「そんなことありません。十分可愛いです」
麻衣はちょっとだけ顔を赤くして
「ありがとう・・・あんまり楽しい話じゃないよ。おばあさまから全部を聞かされたこと。自分の出生ってそうだったんだって驚いたしショックだった・・・そんな話になるけど」
「私で良ければ聞きますよ」
麻衣は写真を見ながら話し始める。
『九条 桜子』と『藤本 高彦』は駆け落ちをした。
その時にはすでに麻衣のことを身籠っていた。
許嫁がいた桜子は勘当されたのは言うまでもない。
元々たった一人の跡継ぎとして育てられたことに我慢がならなかったことに加えて結婚相手も選べない境遇にうんざりしていた桜子は当時こっそり付き合っていた高彦と既成事実を作ってしまえばせめて結婚だけは好きな人と出来ると思っていた。
しかし。彼女の思惑は見事に粉砕された。
子供を産むことは認められたが結婚は叶うことはなかった。
むしろ跡取りの娘を、由緒ある九条家に傷をつけたということで高彦の家族は京都の街を追われることになった。
それからは半ば監禁状態で家の中に閉じ込められていた時。
桜子のことを案じていた使用人の一人が高彦一家のことを調べてくれた。
婦人科の定期検診という名目で家を出た桜子は使用人の手引きによってそのまま姿を眩ました。渡された僅かなお金と着替えだけ持って・・・・・・
しかし
やっと会えた喜びも束の間。
今度は高彦の家族から白い目で見られることになった。
その結果。臨月間近だったにもかかわらず二人は真夜中を利用して消えてしまった。
見知らぬ土地で麻衣のことを産み、家族三人で裕福ではなかったが幸せな日々を送っていた。
ここまでイッキに話すとちょっと疲れたのか目を閉じて黙っていた。
有栖は冷めてしまった紅茶を一口飲んだ。けれど味なんてよく分からなかった。
ドラマのようなことが実際にあって、それが目の前で語られていることに上手く自分のことを順応させることが出来なかった。
こんな時、どんな言葉を掛けたらいいのか分からない。自分とは全く違う境遇がこんなにもかけ離れた存在だと思わなかった。
だから同じように黙っているしかなかった。
「・・・それで・・・去年・・・お母さん・・・病気で死んじゃって・・・私が一人になるのを心配して前もっておばあさまに連絡していたみたいなの・・・おばあさまは出て行ったお母さんのことはとっくに探し出していたんだって。どんな暮らしをしているのかも知っていた・・・でも、おばあさまは自分から連絡を入れなかった。お母さんの最後の時に初めて病院にやって来て言葉を交わしていた。どんなことを喋っていたかなんて知らないんだ。部屋から出るように言われて・・・それから最後に見たお母さんの顔は笑っているような・・・泣いているような・・・でも・・・とても安心した顔で目を閉じてそれっきり・・・私は・・・言葉を交わすことできなかった・・・」
「麻衣・・・これ」
有栖がハンカチを渡すと涙を拭った後、思いっきり洟をかんだ。
「ありがとう・・・お母さんの葬儀が終わってすぐに私はこの家に入ることになった。お母さんがこんな凄い家の出だったなんて知らなかった。教えてもくれなかったから」
「それで自分のこと生粋のお嬢様じゃないなんて言ったんだ」
「だって本当のことだから・・・でも今はそうならなきゃ・・・九条の家を継ぐのは私だって教えられた」
「それでなんで留学?」
「おばあさまの命令なんだ。もっと見聞を広げなさいって。ここは何もかも別世界なの。それに私にはちょっと窮屈なの。でも、お母さんがおばあさまに私のこと託してくれたって思ったらやらなきゃって・・・お母さんの意志だもん。私は期待を裏切ることはできない。そのおかげで今は路頭に迷う心配はなくなった」
「お父さまは?」
「働き過ぎの過労死だって。私はまだ小さかったからそんなに記憶に残っていないんだ。それからはお母さんが働いて暮らしていたんだ・・・多分だけど・・・お母さんには世間の仕事なんて無理だったんだよ。ずっと生粋のお嬢様だったんだもん」
笑っているのか泣いているのか、どっちとも取れる表情で有栖のことを見ている。
「なんかごめんね。こんな話し聞いてもらって・・・なんかさ、有栖だから話せたのかな」
「私で良かったなら・・・麻衣には辛い話をさせてしまいましたね。気になったのですがなぜ今もまだ『藤本』の姓を名乗っているのですか?」
「・・・私のことおばあさまに認めてもらったら『九条』の姓になろうって思っている。そのことはちゃんと話してあるんだ。そしたら『分かりました』って。だから元のままなの」
「そう・・・私から言わせれば今すぐ『九条 麻衣』として生きるべきだと思います」
「最初は・・・ちゃんと考えたんだ。でもさ・・・なんか踏ん切りがつかなくて・・・」
「・・・麻衣にはそうするべきタイミングが分かっているのでしょうね」
「そうかも。多分そうだと思う。あと聞いてくれて・・・ありがとう。ちょっとスッキリしたかな。こんな話はもう終わり。気分転換しないきゃ。そうだ有栖。泊まってもらう部屋に案内するね。もうすぐ夕飯になるから。着替えとかあるでしょ」
「そうします。向こうにいた時のようにラフになりたいですね」
「それにしても金髪、ホント似合ってるね」
「お褒めに預かり光栄です。今だけのレアな水無月有栖です」
案内された部屋は十二畳ほどある和室だった。来客用の部屋だすぐに分かった。ユニットだけどバスもトイレも完備されている。部屋と窓の間には板張りのスペースがあって藤で出来た椅子と小さなテーブルがあって、そこから見える景色は有栖が思った通り庭園が見える。それはまるで日本画のように厳かで荘厳だった。
「美しいです。雪が加わったらさらに情緒が深まるでしょうね」
「そういう感覚ってお嬢様には必要なことなんだろうね」
「そんなことありません。感性です。麻衣がこれから身につけなくてはならないことは」
「感性・・・か。ま、とにかく良いものを見て目を肥やせってことでしょ」
「言い方・・・でも実際にそうかもしれませんね」
「そうだね。頑張らなきゃ。さ、私も着替えようかなラフな格好に。夕食になったら迎えにくる。それまで休んでなよ。ここで軽く汗を流してもいいし、なんならお風呂でもいいよ。おっきいし温泉宿みたいなの」
「それは楽しみですね。なら後で一緒に入りましょう」
「いいよ。向こうだとシャワーばっかりだったからね」
「はい。ではのちほど」
「うん。じゃあまたね」
麻衣が行ってしまうと有栖はそのまま窓を見ながら椅子に座って用意されていたお茶を淹れて一息をついた。
そしてさっきのことを思い返していた。特にそんなことしたいわけじゃなかったけれど、あまりにも強烈だったから無意識に脳裏で再生されていた。
聞いただけ。それ以上何かできることなんてあるはずがない。そんなことを思っていると
「・・・あ・・・雪」
堪えくれなくなった雲からついに雪が京都の街に舞うように降り始めた。
音なんてないのにチラチラと静かな音を肌で感じる。
「確かにキレイですね・・・」
雪を見ているとこれから何か始まりそうな予感がしている有栖だった。
☆★☆☆★★
『今夜は全国的に急激に冷え込むと予想されます。場所によっては初雪の可能性もありますので、もし雪が降った場合は皆さま足元に十分に気をつけて転倒などしないように注意しましょう』
朝。
たまたま見ていた天気予報はそんなことを宣言していた。
窓から空を見てみる。
とても良い冬晴れでとても澄んだ色をしている。東京には縁のないことだと思っていたのに会社が終わる頃には雲行きがかなり怪しくなっていた。
「今夜あたり本当に雪が降るかもしれませんね。ちょっと楽しみですね」
隣りで同じように窓から空を見ていた立花さんが追い打ちのように言う。
「立花さんまで・・・今の僕には雪なんて全然嬉しいことなんてないんだ。寒いし冷たいし道路は凍って滑って転ぶ確率が上がるし、電車だって停まる可能性もあるんだ」
「嫌ですね。そういう暗い面ばかりに焦点を当てるの。いいですか、軽井沢なんてこんなもんじゃないと思いますよ」
「・・・そうだった。天気のことなんて気にしてなかった。確かにその通りだ」
「せっかく打ち合わせしようと声を掛けたんですが・・・雪が怖くてさっさと帰ります?」
暗い面ばかり・・・その言葉が妙に刺さる。
はぁ・・・歳を重ねるほど言われて気が付くことが多いような気がする。
人生長く生きていると自分の中の価値観と固定観念でいわゆる柔軟な考えということがだんだん出来なくなってくる。
だから人によっては他人の意見に反発したり、嫌悪感を抱いたりする。
ただ歳を取るというのはマイナスの傾向が目立つものなんだ。
若い人から見たら頭の固いおっさんという認識は強ち間違ったことではないのだろうな。
「いや仕事だからやろう。打ち合わせ」
「といってもそんなにオフィシャルなことじゃないです」
「・・・・・・・」
「だからですね。どうです?コーヒー一杯だけの時間。あの時以来話してませんよね」
「確かに・・・何か新しい話題でもあったのかい?」
「別に。なんか、こんな天気だし、急に飲みたくなっただけです」
「それは打ち合わせというよりは飲みに付き合えと言っているの?」
「それでも私は構いませんよ。雪見酒っていいですよね」
「僕には分からない感覚だよ」
「今日は定時ですよね。せっかく後輩の私がお願いしているんです。それに軽井沢のこともあります。全くのプライベートなわけじゃありません」
ここまで押してくるということは二人じゃないと話せない事情があるのかもしれない。
それはなんだろう。魔法少女のことなのか、それとも出張で何かあるということなのか。
「分かったよ。立花さんの熱意に負けたよ。店はこの前と同じでいいのかな?」
「はい。私は先に行って待っています」
「それって先に飲んでいるってことでいいのかな?」
「主任。それ以上は約束違反ですよ」
「そうか・・・すまん。それと今夜のことは了承したよ」
「はい」
そうして僕との約束を取り付けた立花さんは仕事に戻っていった。
僕も同じように仕事を再開。
雪を楽しいって思ったのはいつまでだったのか。
そんなことすら遠い記憶になっていた。
晴れた。久し振りに。青空を見るのはいつ以来?
読んでいただきありがとうございます。
嬉しくて早めのアップです。
しかし暑さ復活。これはちょっとヤダな・・・
物語は冬なので少しでも涼しくなれば・・・なんて思って書いてます。
さてアップも終わったので出掛けよう。
また来週。よろしくお願いします。




