魔法には空腹がついてくる
一晩経って
体力も十分回復したミアンは一人空中に浮かんで研究所のことを思い出していた。
紫苑・・・他にもたくさんの能力者達。みんな子供だった。
外国は日本と違ってもっとオープンな感じだと思っていた。
ただの研究ではなく何か別の目的のための極秘の研究施設なのかもしれない。
それは・・・
あまり推奨される目的じゃないのかもしれない。
映画とかでよくある軍事的なこととか戦術的なにかとか。
匿名で世界に公表すれば自然と解体される可能性もある。
そうなったらあの子たちは無事家に帰ることができるのだろうか・・・
その後の生活に支障が出ないだろうか・・・
今、一番気に掛けなくてはならないのは紫苑のこと。
そしてドリーチェのこと。
「どうやったら紫苑の中にいるドリーチェを倒すことできるかな・・・ん・・・やっぱりゲーム?」
ミアンは考える。
魔法しかないよね。どういう風に使うのが有効なの?
「う〜・・・実際問題、あたしってどこまで魔法を使うことができるのかな」
一番は魔法でドリーチェを引っ張り出すこと。
けれど紫苑の身体に負担になるかもしれない。
「う〜ん・・・ゲームならドリーチェは出てくる。あたしが魔法少女だと気が付かなければ隠れることしない・・・あたしが魔法少女じゃない。みたいな筋書きができないかな」
カードなら・・・魔法もっと使えるようにならなきゃ。
ミアンはカードを展開。
四十八枚の花札はいつものようにキラキラ光ってミアンの指示を待っている。
本来ならタロットカードだった。タロットは七十八枚。それが半分とまではいかないがかなり凝縮された形で使っている。
これまでいろいろな希望を叶えてくれたカード達。
「信頼しているからね。よし・・・試してみなきゃ分からないよね」
この魔法はどれだけの魔法力を使うか予想ができない。
自分の魔法のことをもっと知るためにはやるしかない。もし駄目なら次の方法を考えればいい。
ミアンの出した結論。やってみたいなら気持ちのままにやってみよう。
「よ〜し。せっかくだから派手にいこう」
降り立った場所は『エアーズロック』
誰もが知っているオーストラリアの象徴みたいな自然の一枚岩。
人間にとっては途方もなく大きな岩だ。
けれど宇宙全体から見たら大したことないのかもしれない。
見上げる星空にそんな想いを馳せていた。
深呼吸して叶えたい魔法を今一度心の中で整理する。
規模が大き過ぎる。だから余計に細部を確認する必要がある。
失敗したらまた一からやり直しになるのは覚悟の上。
それにドリーチェだっていつまでも隠れているようには思えない。
きっといつもみたいになるんだ。
ゲーム。
紫苑の身体のどこかに隠れているドリーチェは姿を現す。
「かくれんぼはおしまいにしようね、お兄さん」
意識を集中すると身体全体から銀色の眩いばかりの光が辺り一面を照らしてゆく。
「さあ。いくよ。今まで一番大きな魔法。カード達、お願い。あたしの願いを叶えて」
一層光を増してゆく。
魔法力が体中から外に放出してゆくような感覚が全身を駆け巡ってゆく。
「こ、こんなに?ち、ちから・・・」
ミアンは歯を食いしばって崩れそうな足をしっかりと地面に踏みつける。それでも魔法力の流れは止まらない。
「みんなには頼らない。あたし一人でやってやるんだ」
心の中でもう一度カードに願う。
・・・お願い・・・叶えてよ。ミアン、あたしならできるんだ。
カード達が世界中に向かって放たれるように一層光が強くなる。
「はぁはぁ・・・やっと止まった・・・できたの?あ〜・・・つ、疲れた。限界・・・」
ミアンが両膝を地面につく頃には世界は静寂な夜に戻っていた。
ゆっくり立ち上がってミアンは手を何度か握っては確かめる。
カードを確認すると四十八枚のうちに三十五枚消費していた。
「こんなにたくさん使ったの初めて・・・ほんと疲れた・・・お風呂・・・」
それから鏡一郎のスマホを出して確認する。
「・・・うまくいった・・・よね。じゃないと駄目なんだから」
母親に電話を掛ける。
「もしもし。お母さん?」
「ミアン。どこにいるの?もう夕飯始まってるわよ」
「ごめん。今帰るからご飯取っといてよ」
「早くしないとなくなっちゃうわよ。今日はミアン大好きなハンバーグだから」
「え!帰る。すぐ帰るから」
「冗談だから。慌てないでね。事故とかにならないように気をつけて帰りなさい。心配しなくても大丈夫。ちゃんとミアンの分は取っといてあるから」
「ほっ・・・ありがとう。お母さん。気をつけて帰るね」
電話を終了したミアンは思わずガッツポーズ。
「やった。上手くいったね。これでしばらくはミアンのままで生活できる」
ミアンがかけた魔法。
それは鏡一郎の情報の書き換え。
家も学校も何もかも鏡一郎ではなくミアンになるようにみんなの記憶を上書きしたこと。
これでミアンは元々この世界に住人ということで世間に認識されている。
それに何かが起こったとしてもいちいち変身する必要はなくなる。
常にミアンでいることでドリーチェの警戒心を解くという目的も兼ねているというミアンなりに練りに練った方法だった。
だからといってこれが正解だなんて分からない。
なるべく魔法は使わないことが魔法少女という姿を誤魔化せるのではないだろうか。
それがドリーチェに近づくことの一歩なのかもしれないと思ってのことだった。
もう一つ。
それは紫苑が研究所から出られるようにしたこと。
お墓参りをするために日本に、というのを付け加えていた。
こっちも多分上手くいったと思っている。
結果は明日に分かる。なんたって明日はミアンも日本に戻ることになっている。
ちゃんと魔法が成功していれば飛行機で席が隣りになることも付け加えていた。
結構ハチャメチャな願いだったが魔法は応えてくれたと思っている。
この作戦が失敗だったら今度こそみんなの知恵を借りればいいと思っていた。
「魔法・・・カード達。叶えてくれてありがとう。帰ろう。疲れたしお腹も空いた」
期待と不安を胸にミアンはハンバーグを目指して家に帰った。
☆★☆★☆☆☆
一晩ゆっくり眠って朝を迎える。
ベッドから出て鏡の前に姿を映す。
「おはようミアン」
『おはようミアン』
アルガトネオルのミアンが映っている。
「上手くいったよね。まだ多分だけど」
『うん。始まったばかり。あとさ、一つだけ、忘れないで欲しいことある』
「ん?なにを?」
『ずっと魔法を発動してるんだよ。ってことは魔法力をずっと使ってる』
「そっか。そうだよね。だからか、なんかだるいんだよね」
『魔法力がなくなったら魔法は終わる』
「そっか。気をつけるね。あたしが気を抜かなきゃいい」
『ワクワクするね』
「うん。ワクワクする」
『楽しみにしてる。余計な魔法力使わないようにあたしとのやり取りは必要な時だけにしよう』
「だね。じゃあ・・・頑張るからミアンも応援してね」
『もち。あと寝癖直してね』
「分かった。じゃあまたね」
鏡には酷い寝癖の顔がある。
「うわ〜これってミアンの髪質?まあいっか。シャワー浴びるし」
部屋を出るとパンの焼ける匂いがする。
「いい匂い。・・・お腹減った」
キッチンのドアノブに手を掛けたところで一度深呼吸。
大丈夫。絶対に上手くいっている。
「おはよう。お母さん」
ドアを開けるとちょうどスクランブルエッグを作っていた。
「あ、おはようミアン」
「お腹減った」
「もうちょっと待ってね。飛行機まで時間あるけど支度は大丈夫なの?」
「うん。大丈夫」
「それにしてもあんたの寝癖お笑いだわ」
「う〜気にしてるのに。ご飯食べたらシャワー浴びる」
「そうしてよ」
シャワーを浴びながら魔法が上手くいっていることに安心する。
あとは紫苑の方か・・・まあ大丈夫。きっと上手くいっている。
「じゃ。いってきます」
「いいの?空港まで送らなくて大丈夫?不安じゃない?」
「平気だって。それに自分の家に行くんだよ。むしろ楽しみ。それに三日後には帰ってくるし。そうだお土産何がいい?」
「信玄餅。あと家の掃除も頼むわね。それと火の元には注意して」
「分かてるって。探しとくね信玄餅」
ミアンはスーツケースを引いてシドニー国際空港を目指した。
魔法を使いたいけれどここは我慢して一般の交通機関で行くことにする。
魔法力は極力節約しておかないとならないからだ。
「ん?あの後ろ姿」
空港に入って搭乗手続きをしている時に横を通り抜けてゆく姿に視線が止まる。
「・・・上手くいってた。紫苑。よかったね」
同じようにスーツケースを持つ姿に小さくエールを送った。
☆★☆☆☆★
魔法力を常に使っているせいかお腹が空く。
日本での二日目の朝。早速モーニングを求めて朝の駅前に出向いた。
昨夜はずいぶん派手にゲームしてた。でもそれだけ。誰にも迷惑をかけていないし誰もドリーチェだなんて思っていない。ただの女の子として周りには映っていたはず。
そんなことを考えながらモーニングセットのハンバーガーを食べていた。
「さてと。紫苑はどうしているのかな?」
スマホを取り出して位置を確認。
実は昨日の飛行機の中でこっそり位置が把握できるように紫苑のスマホの位置情報を魔法でいじっていた。おかげでミアンには紫苑がどこにいるか簡単に把握できていた。
「まだお家みたい。寝ているのかな?」
しばらく見ていたが動くことはなかった。モーニングを食べ終わると
「帰ってシャワー浴びよ。それから会いに行くからね紫苑」
シャワーの後、特訓も兼ねてゲームをしていると
「あ。やっと動いた」
ゲームをやめて支度を済ませるミアン。
紫苑のいる場所はミアンの家から電車で六つ離れた街だった。通勤時間が過ぎていたのと都心とは反対方向だから余裕で座ることができた。
しばらく車窓からの景色を見ていた。時折出てくるチェーン店の看板を見る度に
「う〜美味しそう」
空腹を感じるミアンだった。
駅に到着して確認すると紫苑の家の近くの喫茶店にいることが分かった。
そこまでのんびり歩いてゆく。
お店は個人経営なのか、こぢんまりとして可愛らしい外観をしていた。
絵本に出てきそう・・・そんな感想を持ったミアンだった。
外から窓を覗くと紫苑の姿が見えたので店内に入ると
「あ!」
と、紫苑の方が先に気が付いて手を振っている。
「あ、紫苑だ。偶然」
偶然を装ってテーブルまで歩いてゆく。
「ホント。また会えるって言ったミアンの予感は当たったね」
「ね。言った通りでしょ。一緒してもいい?」
「うん。いいよ」
向かいの席に座ってミックスサンドウィッチセットを注文。
「紫苑は何頼んだの?」
「私はパンケーキ。もう食べ終わっちゃったけど」
「パンケーキ。それもいいね。お腹に余裕があったら食べよっかな。よく来るの?ここは」
「ここってお婆ちゃんがやってるお店なんだ」
「へ〜・・・なんかいいね。そういうの」
「そうかな・・・そうかも。でもホント久し振りなんだ。一年振り」
「一年振りってことは去年まではこっちだったの?」
「ううん・・・・・・違うの」
紫苑はカップの中をじっと覗き込んでいる。ミアンは続きを待っていると
「お待ちどうさま。紫苑のお友達?」
「お婆ちゃん・・・彼女は・・・」
「初めまして、あたしはミアンって言います。紫苑とは飛行機の中で知り合ったんです。それでたまたま散歩してたらこのお店から良い匂いがして・・・そしたら、ね。ここで会ったのは完全に偶然なんです。美味しそう。いただきます」
ミアンは玉子サンドを頬張る。
「そうなんですね。紫苑のことよろしくお願いします」
「お婆ちゃん、恥ずかしいって。ちゃんと自分で言えるから」
「もぐもぐ・・・美味しいです」
飲み込んでカフェオレを飲む。
「紫苑とは友達になれたらって思ってました」
「そうなの?ミアン」
「なんて言うのかな。運命、みたいな」
「お互いのことまだ知らないのに?」
「それはこれから知ればいいよ。ということであたしこそよろしくお願いします」
「おもしろいお嬢さんじゃない。紫苑はどうなの?」
「どうって・・・別にいやじゃない」
「ならそれでいいんじゃないかな」
お婆さんは軽く一礼して他のお客さんの対応に戻ってゆく。その後ろ姿を見送って
「ホント美味しい。お店見つけただけでも日本に帰って来た甲斐があったよ」
ミアンはそのまま食事を続ける。紫苑はそんなミアンの姿をじっと見つめていた。
「ふぅ。美味しかった。お腹いっぱい」
「だったらパンケーキは今度かな」
「かな。紫苑と偶然会えたことだし、今日はいいことあるのかな。それで紫苑ってなんで日本に?」
「急に世間話?私は・・・・・・」
急に黙り込む紫苑。
「もしかして聞いちゃいけないことだった?」
「ううん。そんなこと。でもすごく個人的なことだし、明るい話でもないの」
「・・・だったらごめんね。言いたくないこと聞いちゃって」
紫苑はゆっくりと顔を左右に振って
「別に話せないってことじゃないの」
「いいよ。やめよう。そうだ。あたしはね」
ミアンはポシェットから一枚の葉書を取り出してテーブルの上に置く。
それは格ゲーの予選大会の招待状だ。
「これ?え?ミアンも持ってるの?」
「え?知ってるの紫苑」
紫苑もポケットから同じ葉書を取り出してミアンの葉書の隣りに置いた。
「もしかして紫苑が日本に来た理由ってこれのこと?」
この招待状はミアンが魔法で作り出したもの。こんなものは存在なんてしていない。けれど紫苑を、紫苑の中のドリーチェを日本に向かわせるためには必要なことだった。
どうやらこれも上手くいっていることに自分の魔法の凄さを心の中で実感していた。
「ううん。これは私にじゃないの。お兄ちゃんに届いたものなの」
「そうなんだ。それでお兄さんは?」
紫苑のカップには何も残っていない。代わりに水を一口だけ飲んで
「私が日本に来たのはこのことをお兄ちゃんに伝えるためなの」
「そっか。一緒に対戦できるの楽しみ」
「それは・・・・・・叶わない」
コップに添えられている手が微かに震えている。
「・・・お兄ちゃんは・・・去年・・・もういない」
「え?」
ミアンは彼のことを知っている。けれど紫苑の話に合わせて答えていた。
「それって・・・」
「うん。今回日本に来たのはこれの報告と・・・お墓参りなの」
「・・・お墓参り・・・あの紫苑」
「ごめんね。こんな話して」
「そんなことないよ。あたしこそごめん。一人で盛り上がって」
「いいよ。だってミアンは知らなかったんだし」
「でも・・・・・・そうだ。紫苑が嫌じゃなかったらあたしも行っていい?」
「お墓参りに?なんで?」
「えっと・・・なんだろう。同じ戦友みたいな。あたし楽しみにしてたんだ。対戦できること。でも、それが出来ないって分かったらなんかさ、お兄さんの分も頑張ろうって・・・なんか変だよね。他人なのに急にこんなこと言って」
紫苑はミアンの言葉に黙ったままじっとお互いの葉書を見つめている。
どれくらいの時間ピクリとも動かずにいたのだろう。
いつしかミアンのカップも空になっていた。
「・・・さっきミアンは私との出会いは運命って言ったよね」
「うん。言った」
「私も・・・運命だって信じたくなった」
真っ直ぐミアンのことを見つめて
「もしお兄ちゃんが私達を引き寄せてくれたのなら」
紫苑は立ち上がってミアンの前でお辞儀して
「一緒に行ってもらえますか」
「紫苑。お願いだから頭を上げて。あたしのわがままなんだよ。断られるのは当たり前なの。そんなの紫苑のすることじゃないよ」
ミアンも立ち上がると
「あたしも一緒させてください」
お互いが頭を下げている。けれどいつ頭を上げていいかどちらも分からないでいた。
「紫苑。それとミアンちゃん」
お婆さんが再び二人の元にやって来て
「二人共、顔を上げて。紫苑。ミアンちゃんをいきなり連れていっても礼苑は怒ったりなんてしないよ。ミアンちゃん。紫苑と友達なったってことは礼苑とも友達になったってことだから行くことに問題なんてなにもないよ」
お婆さんは優しく微笑んでいる。
その顔を見て紫苑もミアンもお互い笑顔になる。
「ホントにいいの?このあと時間あるの?」
「もちろん。明日の大会まで特訓するくらいしかやることないんだ」
「ここから近いんだ。今からどうかな」
「いいよ。会って挨拶したい」
「そこまで言うなら」
二人は店を出て礼苑の眠っている場所に向け歩いてゆく。
お兄さんの眠っている場所は駅の反対側にあった。
二人は並んで歩いて駅向こうに出て、商店街を抜けて大通りを越える。
「着いた」
「大きなお寺だね」
開かれている大きな門を通り抜けると
「結構人がいるね」
「お彼岸はとっくに過ぎてるけど今日は土曜日だから」
「そっか」
先を歩く紫苑の後をミアンは着いてゆく。紫苑は途中で桶に水を入れて持って歩く。
「ここ」
立派なお墓だ。この中に紫苑のお兄さんが眠っている。
「来たよ。一年振りだね・・・お兄ちゃん」
紫苑は墓石に水を柄杓で何回かかけてから途中で買った菊の花を差す。それからマッチで火を起こして線香の束に火を移してからゆっくり供えた。
「やっと解放されたね・・・」
手を合わせる紫苑の身体は震えている。
その意味をミアンは分かっている。
あの場所からの解放。見た時は酷いことをしているようには見えなかった。
でも実際には死んでしまっている。
こんなの完全に人体実験じゃないか。
特殊な能力を根掘り葉掘り調べるのは人間の未知へのエゴなのか恐怖心からなのか。
どっちにしても人道的じゃない。
紫苑。
今はあたしの魔法でここにいることができている。
本当なら日本来る許可なんて出なかっただろう。
ふと思う。
あたしは何を解決したいの?ドリーチェ?それとも研究所のこと?
あたしは魔法少女で目的はドリーチェ。立派な正義の味方だと思っている。
でも人間のことに対しては正義の味方になれないの?
「ミアン」
振り向く紫苑。目は赤かったけどもう泣いてはいなかった。
「紫苑のお兄さんがいるんだね」
「うん。安らかに眠っている」
「挨拶してもいい?」
「うん。お兄ちゃん。私の友達」
一歩前に出て
「初めまして。あたしはミアン。紫苑とは友達になったばかり」
「昨日飛行機で会ったばかりなのに友達って運命なのかな?お兄ちゃんはどう思う?お兄ちゃんもミアンと友達になってくれたら嬉しいけど」
「あたしはいいよ。友達。というかもう一つあるんだ」
さっきの葉書を見せる。
「これ。お兄さんにも届いていたって紫苑から聞いたよ。手合わせしたかったな。好きだったんでしょ格ゲー。あたしも大好き。日本に来たのもこの予選大会に参加するためなんだ」
ミアンが言ったところで墓石は沈黙したまま何も答えることなんてない。
それでも彼がドリーチェとして紫苑の中にいることは分かっている。
少しでも反応してくれたら、なんて思って挑発したけど何も反応はなかった。
そっか。夜じゃないから?
「あのさ。ミアン」
「?」
「この葉書があれば私も入れる?ミアンの応援に行きたいって思った」
「応援?いいね。来てよ。それに絶対に中に入れるから」
「ホントに?いいかなお兄ちゃん」
紫苑が言葉を掛ける。しばらく目を閉じる。きっと心の中で返事を聞いているのだろう。
ミアンは思い出す。
そうだ。彼の能力はテレパシー。もしかして本当に会話している?まさか・・・
「俺も行くって」
紫苑の口から出た言葉はどっち?紫苑の思ったこと?それとも本当に?
「だったら対戦できるね」
「相手になってやるって」
「面白くなってきた。じゃあ明日。待ってるから。逃げちゃ駄目だからね」
紫苑は微かに笑みを浮かべている。
「そんなこと無理なのに。でもお兄ちゃんなら言うね」
「・・・ホントはお兄さんの声を聞いたとか」
「どうしてそう思うの?」
「え?なんとなく?」
紫苑のことは詳しくは知らないことになっているから、うっかりしたことは言わないようにしないと・・・
さっきの言葉はお兄さんの言葉だろう。あたしの挑発に乗ってきた?
「あたしそろそろ行くね。明日楽しみにしてる。特訓しないと」
「うん。一緒に来てくれてありがとう」
「そんなこと・・・あたしの方だよ。ありがとう」
「じゃあ明日。会場で。大きな声で応援するから頑張ってね」
「気合い入れないと。カッコいいとこ見せてあげる」
「期待してる」
「うん。じゃあ明日」
お互い手を振って分かれる。
お寺を出るミアンは振り返ることなく駅を目指す。
「明日・・・大会は昼からだけどお兄さん出てくるかな?それとも紫苑かな?」
どっちにしても明日には決着をつける。
「あ〜もうお腹空いてる・・・」
常に魔法力を使うことがこんなに消費するなんて思っていなかった。
魔法を切らさないためにもコンビニに入っておにぎりを購入するミアンだった。
七月最後のアップ日です。
読んでいただきありがとうございます。
バタバタの毎日のせいでこんな時間になってしまう私。
毎日少しずつ書けばいいのにギリギリまで考えて書いてます。
まるで夏休み最後の日みたいに。
言い訳はこれくらいにして次回に向け前を見よう。
魔法は都合良く使うってことに今回は重点を置いてますがどうなの?
かなりめちゃめちゃ感があるなぁ・・・どう回収する?
そんなことも楽しみながら書いてます。
こんな話ですが挫けず次回もよろしくお願いします。




