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僕は魔法少女に変身する  作者: マナマナ


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鏡よ鏡

 ぬいぐるみ的にあと十歩ほど距離を詰められたら相手の間合いに入ってしまう。


「今日はもう帰るよ」


 言っても無駄なことは分かっている。

 僕に唯一できること。

 それはいち早く、この鏡の空間からの離脱しかない。

 外に出られたらスマホで応援を要請することだって可能になる。どれだけスマートに動くか・・・

 連絡してすぐに駆けつけてくれるのは誰だ?

 スピードなら瑠璃さん。イタリアからどれくらいで日本に到着できるか分からない。

 距離的なことならくまさん。しかしスピードは?

 有栖にしろ、鏡一郎にしろ、この二人は多分無理だろう。

 

 無意識に一歩、また一歩。後ずさりしている。この先に出口があるのかどうかも分からないのに。


『逃げるの?無駄なの』


 粛々と近づいてくる。

 実力行使に出たところで相手はドリーチェ。見た目がいくらこんなでも生身で敵うはずがない。下手に手を出したら本当に『下手こいた』ってことになってしまうかもしれない。

 もし。

 僕が今すぐ死んでしまったと仮定しよう。その時ジーアはどうなってしまう?

 依り代との契約は強制終了だというのはなんとなく分かる。依り代を失ったジーアはまた自分自身としてアルガトネオルで戦いに身を投じてゆくのだろうか?それとも別の依り代を探して再びこの世界で戦うことになるのだろうか?

 それはジーアが捕らえられていない場合。だとしたら今は異常事態。

 助けを求めている。それなのに他の魔法少女達は何をしている?気が付いていないのか、感心がないのか。どっちにしてもジーアは一人きりなんだ。

 辛うじて繋がっている僕との線はいつまで保つんだ?


 そんなことはさせない。女の子をたった一人でなんて。

 だから今は絶対に死ぬことはできない。なんとしても状況を打破するんだ。

 考えろ。今。目の前のことをちゃんと見るんだ。


 シェは言葉では言っているがまだ何も行動を起こしていない。

 何か理由があるんだ。

 例えば僕に近づかない限り『術』を行使することができないとか。

 それとも怯える僕を見て遊んでいるのか。

 どっちにしても考える時間があるなら僕には有利なことかもしれない。


 ヒーローモノだと余裕をかましている方が大逆転を喰らう。もうセオリーと言ってもいい。なら今は?まさにその状況。

 もっと頭を使え。もっと相手に余裕を保たせろ。そして答えを見つけろ。


 変身ができなくても何かあるはずなんだ。その何かを見つけるんだ。


「今日は遅いから帰るよ。帰りが遅くなると家族が心配するんだ」

『家族?』

「そうだ。家族だ。シェちゃんだっているんだろ。さっき『おとうちゃん』って」

『おとうちゃん』

「そうそう。帰ってくるの待っているよ。ちゃんと帰ったらいい子いい子してくれる」

『いい子いい子』

「帰らないなんて怒られる」

『お、怒る?おしりペンペン?』

「そう。おしりペンペン。痛い痛い。でもちゃんと帰ったらナデナデだよ」

『ペンペンよりナデナデがいい』

 

 ぬいぐるみの動きがゆっくりになってやがて止まった。

 何を見ているのだろう。何を考えているのだろう。


 僕にはぬいぐるみの表情なんて読むことはできない。けれど明らかに何かを考え、何か選択をしているように見える。

 そしてペタンとその場に座る。

 行動規範というか行動基準というものが崩壊しているようにしか見えない。次にどんな動きをするのか全く予想が立たない。

 確実に言えるのはまだ『術』を使うつもりはない。という事実だ。


「どうしたのかな?疲れちゃった?」


 返事はない。ぬいぐるみから抜け出してどこかに行ったということもない。はっきり言えるだけの根拠がある。微かに頭を揺らしている。僕には見えている。


 僕の観察眼は甘くないんだ。普段から仕事でどんなに細かいデータの変化や実験中の変化を見逃さないように穴が空くほど見ているんだ。もう特技と言ってもいい。

 分かる。僕には分かる。お前は目の前にいる。じっとしていても生きている、ドリーチェにも当てはまるかは謎だが、生きている以上身動き一つせずにずっと同じ姿勢でいることなんてできないんだ。ほら、今だって微かに手が動いた。

 何を考えている?何をしようとしている?

 そろそろこの状況に飽きて『術』を使う算段でも考えているのだろうか?

 もしそうなら僕のやることはただ一つ。時間を引き伸ばす方法を考えること。それには相手の集中を僕に向ければいい。


「ナゾナゾしよう」

 僕の声は届いていないのか、それとも無視しているのか。でも分かるんだ。今、顔が微かにピクっと動いたこと。

「ここは学校。第一問『学校のひろばにいるペンギンってな〜んだ』簡単だよ」

 まだ動く気配はない。でもこっちに意識を向けたのは分かる。止まるな。このまま止まるな。

「あと10秒。答えはな〜んだ。あと5秒・・・3・・2・1残念。答えは『コウテイペンギン』学校だけに良い問題だったね。当てたらナデナデしてあげたのに」

『・・・ナデナデ?』

 反応した。これで僕の方に余裕が生まれた。

『ペンギンってなに?』

「そっか。知らないか。それなら答えられなくて当然だね。おじちゃんシェちゃんのこと知らないから。そうだ。シェちゃんが住んでいる所ってどんな場所なの?」

『真っ黒』

「真っ黒?なんか怖いとか?」

『怖いなんてないよ。おとうちゃん、光たくさん』

 どういう光景なのだろう。父親自身が光っているってことなのだろうか。

 仏像じゃあるまいし・・・いや、こっちだって本当に光っているわけじゃない。イメージに過ぎない。言い直すなら『お釈迦様』?

 まさかな。

 魔法少女は実際に存在している。お釈迦様だって実在した。悟りを開いて・・・だからってわざわざ何もなさそうな真っ黒な世界に身を置くとは考えられない。


『こっちは光、たくさん』


 そう言えば。

 シャハトも同じようなことを言っていた。『光がキレイ』とかなんとか。

『シェちゃん。ヘーンのことは知ってる?』

『ヘーンおねいちゃんすき』

「好きってことは知っているってことでいいのかな」

『あたちはかわいいって。ナデナデしてくれる』

「そうなんだ」

 僕が認識しているヘーン・・・・・・彼女ならナデナデするだろう。

『もっとナデナデ、ジーアつれてきたらもっとナデナデ』

「それでアルガトネオルに行ったのか」

 きっとヘーンの命令だったに違いない。

 なぜだ?何故ジーアのことを執拗に・・・友の存在?

 友ってなんだ?ジーアと誰が?

 待っているってどこで?ドリーチェの世界。真っ黒な世界で待っているってこと?


 いろいろ参考になった。それでもまだ情報は欲しい。今なら会話で『術』のことに意識を向くことはなさそうだ。

 しかしこの状況がいつまで保つか分からないし、対策だって何も思いついていない。どうやったら外の世界に戻れるのか、それすら分からない。

 このままだといずれ『詰み』が現実味を帯びてくるだろう。


 ジーア・・・せめて君と繋がることができたなら一緒に考えることだって・・・駄目だ。そんなんじゃ駄目なんだ。自分で決めたんだろ。ジーアを助けるって。

 自分に甘くなる。だから成長できないんだ。


 覚悟だ。

 僕は覚悟する。これから起こりうること。潔く受け入れよう、と。


 僕は魔法を信じている。ジーアを信じる。そして仲間達のことを信じる。

 きっと気が付いてくれる。

 そして僕のことを信じてくれる。仲間だからな。


「最後に一つ。聞いてもいいかな?」

『さいご?』

「ああ。シェちゃんはアルガトネオルから来たんだよね?」

『???』

 なぜ首を傾げる?自分でやったことだろうに。

「えっと。難しいことは聞いていないよ。こっちの世界と魔法少女の世界は分かるよね」

『???』

 同じ姿勢のまま動く様子がない。

 本当は知らない。もしくはアルガトネオルには行っていない。だとしたら現実世界から『術』をかけたということなのか。相手の気が変わらない内に聞けるだけ聞くんだ。


「じゃあさ、どうやってジーアを閉じ込めたの?」

『かがみ』

 即答。鏡?この鏡の世界?まだだ。どんな原理なのか。

 フェルマーの最終定理より難問題だ。なんたって世界の法則を無視しているからな。

「鏡なんだ。おじちゃん頭悪いから詳しく教えてくれないかな?」

『おねいちゃんが言った。この子を閉じ込めたらおとうちゃんが褒めてくれるって』

 ヘーンの命令・・・一体いつから?シェはいつからこの世界にいた?

 考えろ。いや想像するんだ。

 知らない内に身近に敵が潜入していたなんてヒーローモノじゃよくあること。

 鏡・・・ジーア・・・・・・鏡に映ったジーア。

 そうか。考えられることとしたら。

「おじちゃんとジーアが喋ってるのを見たんだ」

『そうだよ』

 僕の部屋にいた?あの時か?いや、いくらなんでも近くにいたら気付くはず。

「なんでぬいぐるみを集めている?」

 疑問はたくさん残るが話題を変えてみよう。とにかく気を引くんだ。

『さっきから聞いてばっかり』

 いかん。機嫌が悪くなってきたか。

「みんなの大事なものなんだ」

『あたちはからだほしい』

 身体?実体がない?意識だけのドリーチェ。でもそれはないだろう。ドリーチェならマルヴがあるんだ。

『たくさんほしい』

「もうたくさんあるじゃないか」

『もっともっとたくさんほしい』

 この問題は棚上げしよう。シェのことは後でいい。


 会話から得られたもの。どんな方法かは分からない。けれどヒントはあった。

 鏡というキーワード。

 ヒントが見つかったなら解決する方法だってあるはず。

 数式の証明だっていろいろな仮説を立てて様々な角度から検証する。複雑な計算をしてそのうちヒントが見つかる。そうなったらもうこっちのもの。ヒントに沿って時間はかかるが絡まった糸をほぐしていける。そして最後には証明される。

 数式だけじゃない。パズルだって知恵の輪だってヒントが大事なんだ。


 鏡・・・かがみ・・・よく見るんだ。無数に映っている僕の顔の中に答えがあるのかもしれない。


『もういいよね』


 シェの言葉が聞こえた。僕の目の前には真っ黒な空間。

 どうやら『術』を掛けられたようだ。

 いよいよ詰み・・・なんて考えない自分が怖い。


 時間の感覚がない。

 ヘーンの時と同じなのか?だとしたら閉じ込められている間、僕は永遠を与えられた。

 なんて好都合。

 いくらでも考えることが出来る。不安も大きいが命があるだけ良しとしよう。

 気持ちで負けるな。気持ちが折れたその時こそ本当に詰みになる。


 鏡・・・かがみ・・・鏡


 あの言い方から推測するなら鏡を通して術をかけた。なぜそんなことが可能なのか、それは考えても無駄だろう。

 ステッキで原子を集めることだって考えるだけ無駄なのだから。

 なら方向を変えよう。


 鏡よ・・・鏡・・・鏡さん・・・


 この世で一番美しいのは誰という質問に鏡は白雪姫の姿を映し出した。

 これだって不可解な現象だ。答えを映し出す鏡。

 自分で自分の顔を見ることができない。

 だから人は鏡を作って自分の顔という答えを求めた。鏡はちゃんと答えてくれた。

 願えば答えてくれる鏡とは古代からある魔法道具なのではないのだろうか。


 鏡よ、鏡。


 ここは真っ暗な空間。鏡なんて存在していない。


 僕は魔法少女。

 ジーアと会話するため何時何時必要になるか分からないから常にポケットに入れてある。

 さらにステッキ。スマホだって持っているんだ。詰めが甘い。

「ステッキよ。光を」

 変身はできない。けれど光は出せる。じゃないと変身する時のエフェクトの説明がつかない。

 願いは通じた。ステッキは松明のように先端に光を集中させる。

「ありがとう。お前もジーアのこと心配しているんだな」

 ただの道具、今まではそんな風に思っていた。だけど今は相棒のように頼もしい。意志があるのか分からないのに同じ気持ちでいると手を通して伝わってくる。

 お前はただの道具なんかじゃない。魔法少女と依り代の絆なんだ。

 ポケットから鏡を出してジーアに話し掛ける。想定通り返事はない。今は会話ができなくてもいい。


 鏡よ、鏡・・・  

 ジーアの姿を見せてくれ。僕がこの世界で一番信用している魔法少女の姿を。


 強く願う、強く、もっと強く。


「僕が一番信用している魔法少女はだぁれだ!」


 鏡は答えを映す魔法道具。ずっとジーアの姿を映していた鏡だ。答えてくれ!


「ジーア!!!」


 ぼんやりと浮かび上がるジーア。

 やっと会えた。ずっと会いたかった。

 ちゃんとジーアがいることに目頭が熱くなる。最近涙腺が緩いのは年のせいかもしれないが今の涙は僕の心が喜びと安心を感じているからだ。

 

「ジーア・・・僕の声は届かないかもしれない。約束する。僕が絶対に助ける」


 やはり声は届かない、というか声を聞こうとしていない。耳を覆って周りの音を遮断するように、踞るように、黒の中に浮かんでいる。


「ジーアを見せてくれてありがとう」


 ジーアの無事が確認が出来た。

 さて。

 これから僕は何をするべきなのか?

 もし奇蹟的にこの空間から抜け出したとしてもそれからの策がない。

 むしろそんなことはしない方がいい。火に油を注ぐようなもの。一度破ったらさらに強固な術を掛けられる可能性もある。今はレベル1だと思いたい。まあ、希望的観測だけど。


 周りを照らしても僕以外の光を反射する物体はない。自分が立っているのか浮いているのすら分からないが身体は自由に動くのが救いだ。


 あれからどれくらい時間が経過している?時間概念のない空間で考えるのも変な話だが仕方のない感覚だ。意識しないようにすればするほど苦痛が伴ってくる。

 駄目だ。このままだと自分自身の感覚に押し潰されそうだ。

「よし。他にも何か出来ないか検証だ。付き合ってくれるかな」

 ステッキに話し掛ける。返事はないが僕自身でも他に出来ることがあるなら知ることができる。

 先ずは原子を集められるのだろうか。

 試したが思った通り。変身していないと何も答えてくれない。やはり光らせるのが関の山。


 そうだ。特殊能力。


 口とか声とか。ぼんやり過ぎるヒントだ。でもヒントなんだ。ここから答えを導くんだ。

「波紋とか言ってたな。確かに声は空気の中に伝わる波長。音の周波数によってはモノを破壊することだって出来る。僕の声でそんなことできるのか?」

 ステッキを両手に持つと

「カラオケのマイクみたいだ」

 誰もいない空間はひとりカラオケボックスみたいだ。どうせ誰にも聞こえないなら試してみよう。音痴だから普段は歌わないがホントは歌うのが好きなんだ。

 その内なにか閃くかもしれない。

 僕は好きなアーティストの曲を思いつくままに歌い始めた。


 ☆★★☆☆☆


 ・・・・・・誰?耳に響く声。私じゃないジーアの記憶が私のことを混乱させる。

 いや・・・こんなの知らない。こんなの私の記憶じゃない。


 仁・・・どうして答えてくれないの?ずっと呼んでいるのに・・・


 こんなことになっちゃったのは自分自身のせい。


 仁に嫉妬した。


 私よりも魔法を上手く使ってドリーチェを倒している姿を見ていたら仁こそジーアに相応しいって・・・

 頑張ってくれてるのに。

 最初は嬉しかった。でも次第にその姿を見るのが苦しくなってきた。


 私ってなんなんだろうって・・・・・・


 だから素っ気なくなった。焼きもちだよね・・・心の狭い魔法少女。


 でも・・・


 今は仁の助けが必要なの。

 私をここから連れ出して欲しい。真っ黒でなにも見えない。記憶が暴走している。


 ヘーンを見た時から変だった。無理矢理記憶を掘り出される気分になった。

 友って誰?前のジーアのことなんて今の私には関係のないこと。

 それなのにもの凄く気になって・・・

 ドリーチェの友なんて知らない・・・なら誰のこと?

 まさか・・・・・・魔法少女?

 知らない、知らない、知らない。

 心が・・・壊れそう・・・


 謝るから・・・仁はよくやってるって褒めてあげるから・・・

 だからお願い。壊れる前に・・・向こう側に行かないために・・・


 ☆☆☆☆☆☆


「あ〜〜〜喉が痛くなった」

 勢いとは恐ろしい。それと自分がどれだけストレスを抱えていたのか。歌うことの素晴らしさを痛感。

「あ〜〜〜でもすっきりした」

 今度はぜひ『一人カラオケ』を堪能しよう。やっぱり伴奏はあった方が断然良い。


 さて。十分歌った。

 けれど何かが起こるわけではなかった。

「・・・わからん。なにが足りない?」

 ステッキに話し掛けてみても返事なんてない。特殊な選曲が必要なのかもしれないが変身していない段階で無理難題なのだが・・・

 それともただ歌うだけじゃ駄目なのか?

 ステッキはステッキでマイクではない。でもこれはアルガトネオルからやって来た非科学的存在。特別なやり方でもあるのか?

 もっと試せること・・・考えるんだ。


 音とは波長。波動、波紋。


 昔のロボットアニメで声を武器にしていたのがあったな。

「確か・・・『ゴッドブ○ス』だったか。歌よりも唸り声みたいなのがいいのか?」

 思い出す。懐かしい。自分の動きに合わせて動くロボットなんて最高じゃないか。

「お〜〜〜〜〜〜」

 低く唸る。確かこんなだったか・・・バイクに跨がるイメージをして

「フ○ード・・・フェ○ド・・・(ふんふんと手のアクション)おお・・フェー○・イン!!」

 主人公は頭部より浸透するようにロボットの体内に・・・

「え?これは・・・」 

 ステッキが反応する。

「正解?なのか?」

 今やったのは他から借りたモノ。ならジーアなら、ジーアとしてなら。

 声ってなんだ?言葉ってなんだ?

 自分の想いを大切な人に伝える手段。でもどんな言葉なら伝わる?

 時として言葉にならない言葉だってある。気持ちの音。願いの音。

「ジーア。合っているか分からない。今から僕の気持ちを言葉にする」

 深呼吸する。頭で考えるな。心の音を感じるんだ。

 

 今自分がどんな音を出しているのか分からない。ジーアに届くように。それだけを願った音。


 ステッキは僕の音を光に変換して鏡の向こうにいるジーアに向かって放つ。


 この音・・・素直な気持ちの音・・・気持ちいい

 心が丸裸にされているみたいだ。何も隠すことができない。でも気持ちいい。


「・・・聞こえてる」

「ジーア!」

 真っ黒な世界はいつの間にか鏡の部屋に変わっている。たくさんの鏡。映っているのはジーアの顔。一斉に僕のことを見ている。

 相変わらずの可愛い笑顔。いつもの笑顔。

「聞こえた?良かった・・・まだきっかけだろうけど見つけたよ」

「仁なら見つけてくれるって思ってた」

「気分はどう?」

「まだいろいろ。けど軽く感じる。それにここは?仁の顔がたくさんある」

「ドリーチェの仕業だ。いたずらが過ぎている」

「ならお仕置きしないとね」

「ああ。しかしまだ相手の術中。変身できるかな」

「仁の気持ちが私を助けてくれた。だから私も気持ちを伝える。お互いの気持ちが一つになったら変身できる」

「その気持ち。僕も信じる」

 たくさんのジーア。静かに目を閉じる。そして僕と同じように音を歌う。

 僕も同じように音を紡ぐ。


 聞こえる。感じる。ジーアの体温。肌の感触。


 二人の音が十分に重なり合った瞬間。僕達は同時に両手を広げる。


 ジーアが僕に抱きついてくる。僕はジーアに抱きつく。

 この世界でジーアと、アルガトネオルで僕と、お互いが絆のように抱き合う。

 

 イメージだが僕達は確かにお互いの世界で抱き合うことができた。


 ビシ・・・ビシ・・・


 鏡が音を出して崩れてゆく。


 僕は・・・・・・私はジーアに。

 この変身は簡単に解除なんてできない。

 私達はしっかりと結びついているから。


「いたずらした悪い子。お仕置きの始まりだよ」


 体中に力が溢れている。

 自分自身が困難を乗り越えて一段高くなった。そんな高揚感がある。


『な、なんで?おしおき?』


 ジーアの気迫に押されたのかシェは慌ててぬいぐるみの山の中に逃げてゆく。


「今度は私の番なの。おしりペンペンじゃ終わらないから」


 ジーアは一歩、一歩と相手との間合いを詰めていった。

都内は曇天が続いております。

読んでいただきありがとうございます。

そうそう。久し振りに正当なレストランでの食事。

価格とサービスと味が比例しているって気持ちがいいですね。

お値段もそれなりに。

たまにはいいですよね。←だからといって毎回は無理

いつもと違う環境に身を置くこともリフレッシュの一つかなっと。

リフレッシュ効果で物語も進めています。

また来週。お会いしましょう。よろしくお願いします。

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