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僕は魔法少女に変身する  作者: マナマナ


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ジーア・・・撮られる

 現実ってなんだろう。そんな疑問が常に頭の中でグルグル廻っていた。

 ヘーンの言ったことは確かに現実だ。それも暗いこと。陽の光が届き難いこと。だからそういうところだけにスポットライトを当てると際立つのは当たり前だ。

 だからと言ってみんな見ているだけじゃないんだ。

 なんとかしよう。なんとかしないとならない。みんな思っているんだ。

 解決という道のりは遠いかもしれない。でもそういう場所にも光を届けようと僕達は頑張っている。

 もっと良くなるように日々暮らしを良くしようとしている。

 滅ぼす・・・ずいぶんな物言いじゃないか。

 僕達は雑草じゃないんだ。雑草は強いんだ。そんな簡単に絶滅なんてできない。


 今日は欠伸をしているか昨夜のことを思い返していることがほとんどで仕事に全然集中できていない。まったくこんなんじゃ何のために仕事にいるのか分からない。

 時計を見るとやっとお昼になろうとしている。

 他もそろそろ昼食といった感じで支度を始めている。僕も類に違わずカバンから弁当を出そうとした。

「・・・ん?」

 ない。

 その事実が受け入れられず結論が覆ることのないカバンをもう一度確かめてみる。


 どうやら忘れてきたらしい。スマホを覗いてみると

『お弁当忘れています』

 なんてメッセージを発見。はあ・・・溜息しか出ない。

 こんな時に魔法を使えたらどんなに便利なのだろう。実際に魔法はある。けれど忘れた弁当を目の前に出現させることができるかどうか分からない。多分できないだろう。僕の知っている魔法はドリーチェに対してしか有効には作用しないということ。

 けど。海のときはいろいろ出来たような・・・あれも普段の延長ってことだと思う。

「久々に社食か」

 こんなことを考えたところで忘れた弁当が現れるわけでもなく、魔法が使えるわけでもない。

 今の僕が使えるのは時間とお金という現実の答えしかない。

「混んでいるだろうな・・・」

 仕方ない。社員食堂を目指そうと立ち上がる。僕以外もう誰の姿もなかった。


 到着した時はやはりと言ったところだ。

 食券の列に並んで順番が廻ってくるまでの間にメニューを決める。

 社食のメニューは実に豊富である。

 定食がAからCまでの三種類に加え麺類、カレー、サラダ、などなど若い人には嬉しいラインナップが揃っている。みんなその時食べたいモノを食べる。なんたってウチは製薬会社。他人の健康もだが自分の健康がやはり大事なのだ。

 おまけに社食コーナーには血糖値や血圧を計れるシステムがあって自身の健康管理も出来る。

 食材の安全と味とカロリーは専属の管理栄養士によって完璧に管理されているのだ。


 自分の番がやってきた。年齢を考えると定食Cが望ましいのだろうが、ここは一つスタミナをつける必要がある。完徹の疲れを吹き飛ばすには定食Aが効果的だろう。

 ボタンを押して社員証で決済する。久し振りの社食のシステムにあらためてスマートさを感じてしまう。 

 これから先の時代はもっと技術が進歩しているだろう。どんなシステムが構築された社会なのだろう。

 AIの進化によって深層心理で食べたいものを割り出してメニューを選んでくれるかもしれない。自分で悩んで考える時代はなくなって、目の前に出されたモノを食べる。自分に必要な栄養素として。

 僕としてはあれこれ悩むことだって食事の楽しみの一つ。そんな風に思ってしまうのはやはりおじさんだからなのかもしれない。


 流れるように進んでトレーを渡される。席を探しているとちょうど隅の方の席が空いているのを発見。一方が壁になっているから静かに食事が出来そうだ。

 トレーをテーブルに置いてから定食Aについてじっくり考察する。

 メインは唐揚げ。大きいのが四個も。添えられている千切りキャベツもこじんまりした山のような盛りつけ。横にあるポテトサラダ。他には漬け物と味噌汁。ご飯の量は調整が利くので小をチョイスしたが明らかにオカズとのバランスが悪い。この量の白米でオカズに太刀打ちなんて無理かもしれない。完全に選択ミス。それでも選んだのは自分。責任もっていただこう。


「いただきます」

 ようやく箸を構えた。

「ここ、いいですか?」

 声を掛けられ見ると

「立花さんか。僕は一人だから空いているよ」

「珍しいですね。いつもお弁当を自席で食べている姿しか見たことなかったので」

「迂闊にも弁当を忘れたんだ」

「そんなことあるんですね」

「そんなこともある」

 僕の前に座った彼女の名前は『立花香織』今年の新入社員だ。入社してすでに半年経過しているおかげで職場にはだいぶ慣れてきたところだろう。

 僕の持った印象は初めて顔を合わせた時はありがちな感じの初々しさがあった。しかし今は研修期間も終わって少しずつ仕事を任せるようになってから責任感が出てきたのか、社会人らしくなってきた。

 それと最初はかなり長い髪で顔の表情が見え難かったが夏の終わり頃にばっさり髪を切った。おかげで初めて彼女の顔をちゃんと見た。

 今の時代。オールバックでサングラスの人のように気軽に『髪切った』なんて言うと簡単に地に落とされる可能性もある。だから本人に対して言ったことはない。


「ずいぶんガッツリですね」

 おまけによく喋るようになっていた。ボソボソと喋っていた頃に比べると別人のように思ってしまう。けどこのことも僕の胸の中だけの言葉に留めておく。

「午後に気合い入れようかなって。でも僕には多かったみたいだ」

「そうなんですか?だったら唐揚げ一つ引き受けましょうか」

 彼女の選んだメニューは定食C。魚がメインだ。今日は銀ダラの西京焼。若いのに渋いと思っているだけで言葉にはしない。だがこの提案は素晴らしい。

「そうしてもらえると助かるよ」

「ありがとうございます。こっちもいいなって思ってたんです。私、唐揚げ大好物なんです」

「だったら頼めば良かったのに」

「分かってませんね」

 僕のお皿から一番大きな唐揚げを自分の皿に移動させた。おかげでオカズの皿がスマートになった。

「好きなモノばかり食べるなんて子供することです。お魚はそこまで好きじゃないけど好きになりたいんです。これも挑戦なんです」

 なるほど。そういう持論があるなら否定はしない。

 社会に入ると『長いものに巻かれろ』みたいな風潮が強いがそれも昔の話。今は個人のアイデンティティを尊重すべき世の中なのだ。

 自分を変えよう、進化させようという気概の表れ。

「いいんじゃないかな。食べられるモノが増えると楽しさだって増える。特に旅行先だとそう思うことがあるんじゃないかな」

 僕の言葉が耳に入っているか分からない。もう食べ始めていたからだ。


 唐揚げが一つ減っただけで僕はこの勝負に勝利した。そんな満腹感を抱えて食後のお茶を嗜んでいた。

「主任、まだ時間大丈夫ですか?」

 食べ終わったらさっさといなくなると思っていたが意外にも同じようにお茶を向かい合って飲んでいる時に声を掛けられた。まさか話し掛けてくるなんて思っていなかった。

「なにか相談?」

「ずばり聞きます。主任は現実主義者ですか?」

「現実・・・ずいぶん変わった質問みたいだ。それは仕事と関係ある話題なのかな」

 現実主義者ってどういう意味で?その確認の意味とはいかに?

「すみません。いきなり変なこと聞いてるって分かっています。それと仕事は関係ないです」

 スマホを出して僕の目の前に置いた。

「これは?見ても良いのかい?」

「見てもらうために置いたんですよ」


 映っているのは夜の街。特に変わったところのない夜景だ。この画像がなんだというのだろう。


「何か気が付きましたか?」

 なんだろう?眼鏡の位置を直してじっくりと見てみると、馴染みのある色の光が確認できた。

 一際目立つ光る色。ピンクの光。

 まさか・・・これって・・・ジーアの?・・・。

 秘密じゃないけど、なんとなく秘密がバレた・・・みたいな感覚になる。

 その張本人が目の前にいるなんて露とも思わないだろう。

 ここは迂闊なことを口走らないように言葉を選ぶ必要がある。


「最近。夜になるとこの光が目撃されることがあるんですよ。ネットで密かに話題になっているんですよ」

「そ、そうなんだ。僕は知らないな。ドローンでも使っているのかな」

 適当に答えてみる・・・・・・ネット・・・ミアンがいない今、その可能性はあるだろう。

 そこまで・・・あまり気にしていなかった。

 人の関心なんて向くことなんてない。

 そんな風に思っていたのに、実際に目の前に突きつけられると面倒なことにならなきゃいい。そんな風に思ってしまうのは僕が張本人だから。


 今は彼女を通して実状を知る必要がある。

 どこまで広がっていてどれだけの人が感心を持っているかということを。


「その線はとっくにクリアしてます。該当する業者なり個人ではないことは確認されています」

「そうなんだ。それで・・・立花さんはこれに興味があると」

「そうですね。興味あります。というか最初は適当に流して退屈しのぎに見ていたんです。どうせ誰かのいたずらだろうって。でも実際にこの目で見て真実だと分かった途端、無関心が好奇心に変わったんです」

 顔に出さないように驚く。まさか身近な人に見られていて、おまけにその身近な人は感心を持っている。

 それってどんな意味での感心なのだろう。

「へ〜・・・実際に・・・ね。それで・・・なんで僕に?」

「他にも見せたんですけど特に興味を持ってもらえなくて。私だって同じ立場だったら同じような感想と態度を取ると思います。主任が最後だったんで。どうです?興味あります?」

「なかなか面白い自然現象が起こっているのかもしれない。例えばプラズマ放電みたいな」

 僕は知っている知識の中から可能性のある、または僕達のような理系の人間なら考えられることで答えてみた。

「・・・みんな同じこと言うんですね。プラズマ放電・・・」

「な、なんでそんなにがっかりした顔をするんだ?」

「・・・だってそれって興味がないから適当に答えているってことですよね」

「いや・・・そういうつもりじゃなかったんだが・・・」

「いいんです。ご意見ありがとうございました。それじゃお先に失礼します」

 立花さんの後ろ姿を見ていると、なんだか申し訳ない気持ちになっていた。

 仕事以外でほとんど話すことがなかった。

 もしかしたらさっきの話題で彼女なりにコミュニケーションを計ろうとしていたとしたら・・・溜息が出るのは仕方のないことだろう。

 

 もし。ここに瑠璃さんがいたら

『仁さんってさ、ジーアの時みたいにもっと向き合っても良かったんじゃない?若い子から話し掛けられる貴重な時間だったのに』

 こんなことを言ってくるだろうな。

『仁さん。もう少し興味を持っても良かったんじゃないのかの興味がなくても真摯に聞く。これが大人だ』

 くまさんにはこんな感じで言われるだろう。


 だからって何をどう答えたらいいのか僕には分からない。真実を伝えるのは違うと思う。

 ただ一つ言えるのは僕の孤独が際立っただけ。

 僕は上長だから部下とのコミュニケーションは積極的にしないとならない立場なのは分かっている。けれど仕事以外でのプライベートにはあまり踏み込めないのは今のご時世のせいなのか、僕が孤独なだけなのか。どっちも当てはまるから余計に動けないだけなんだ。


 ふと人の動きを感じて周りを見回すと食事を終えた人達が引き上げてゆく姿が目に入ってくる。僕はまだ座ったまま冷めたお茶を見つめて回想を続けていた。


 これだけ生きているにも関わらず僕は自我を持った時から僕自身は何も変わっていないのだろうか。大人になってずいぶん変わったと思ったのは勘違いで本当は知識と経験が増えただけで僕という本質は変わってないのかもしれない。

 ジーアに変身すれば彼女の影響もあって性格は周りからも指摘されるほど変わるし、その自覚もある。

 でも元に戻れば何もかも元通り。僕は冴えない中年サラリーマンでしかない。

 今になって無性に立花さんの対して申し訳ない気持ちが強くなる。と同時に今まで撮られているネット上の写真を魔法で消去することは可能なのか確かめる必要もある。


 あと一年でこの世界の運命が左右される。だからもっと魔法を・・・なんて思っていたのに小さな課題が次第に積み重なってゆく。身体もだが精神的にも疲れが積み重なってゆくようだ。


 よくよく考えてみればミアンのカードでそれくらいのことは朝飯前だろう。

 有栖からの電話のせいで僕は仲間達、ちょっと他じゃ成立しない魔法少女というコミュニティが懐かしくて仕方なかった。

 みんなと直に相談できれば解決なんて簡単に出来るだろうな。それにみんなの顔を思い出したら気持ちが明るくなってゆくのを感じていた。

 

「こっち、もういいですか?」

 声に気がついて顔を上げると配膳係の方だった。

「あ、すみません。今出ます」

 周りにはもう誰の姿もなく僕はたった一人で食堂に座っていた。

 返事をするまでもなく空になった昼食のトレーは片付けられてゆく。

「ありがとうございます」

 後ろ姿にお礼を言って僕はラボに戻った。

 通路にある窓。立ち止まって外の景色を見る。

 空は晴れ渡っていて雲一つない青色が広がっている。秋晴れという言葉は目の前の空のためにある言葉みたいだ。

「みんな元気だろうな・・・」

 ふと漏れた言葉にみんなも同じことを思っているのだろうか。それともそんなことを思っているのは僕だけなのだろうか。この空を辿って行けばみんなに会うことなんていつだって出来るんだ。

 そう思うとちょっとだけ元気が出たような気がする。

 けれど。

 スタミナをつけたつもりでいたのに必要以上のカロリー摂取は必要以上の眠気をもたらしている。

 そのことを実感するとやはり疲れていることを自覚させられる。

 頭がうまく廻っていない。こんなんじゃ仕事も生活にだって支障が出る。

 とりあえず仕事の前に顔でも洗って気合いを入れよう。

 

 トイレに他の人の姿はなかった。

 目の前には洗面台的な鏡があって当然映っているのは疲れた中年の顔。

 あらためて周りを見回す。同時に聞き耳を立てて誰も入って来る気配がないことを確認してから時計を見る。昼休憩が終わるにはまだ時間がある。十分な時間。少しでいい。伝えられなかったこと。昨夜のことを報告した方がいい。それに顔も見たかったし声だって聞きたかった。


「ジーア。僕だ」

 すぐに鏡が揺らめいて

「こんにちは仁。なにかしら」

「今朝、僕はまだ君に話していないことがあったんだ。それを話しておいた方がいいと思って」

「そうなの?じゃあ話して」

「・・・・・・その前にさ、一つ聞いてもいいかな」

「別にいいけど」

「この間からなんとなく・・・」

「なんとなく?」

「えっと・・・僕の勘違いかもしれないけど」

「勘違いなこと聞くの?」

「だからさ・・・」

「あのさ。言いたいことあったらはっきり言ってもらいたいんだけど」

 やっぱり最近のジーアは苛立っているような、無関心というか、明らかに前とは違う態度だと僕には見えて仕方ない。

 果たしてこんなこと言ってもいいのだろうか。

 言ってしまったことで僕達の関係が悪化するなんてことはないだろうか。

 僕はジーアが選んだこの世界の依り代。最初は戸惑ったり疑ったりしたいけれど今は全てを信じて全てを受け入れている。簡単に関係が崩れるなんて思えない。でも聞くには躊躇する。

「いや・・・やっぱり勘違いなんだ」

 やはりなんて言ったらいいのか分からない。今の僕だと上手く言葉にすることができない。変身でもしていればちゃんと言葉に出来るかもしれない・・・と思った。

「・・・仁、遠慮しないで。言いたいことあったら言ってよ。気になる」

「ごめん。今はうまく言葉に出来そうにない。もう少し纏まったら話すよ」

「・・・そう」

 少し前までの会話はこんなぎこちなくなんてなかったのに。今は顔を合わせてもどこかお互い視線がズレているように感じている。


「昨夜・・・ヘーンが現れた」

「・・・そう・・・ヘーンが」

「朝が来るまで僕達は話をしたんだ」

 ジーアの顔には驚きはない。少し伏し目がちの顔が僕の胸を苦しくさせる。

「ヘーンから言伝がある」

「言伝?」

「友が待ってる・・・」

「・・・もう・・・終わりましょう」

 ジーアは僕が返事をする前に消えてゆく。黙って受け入れるしかない。

「友・・・友達・・・ドリーチェ・・・」

 あの感じだと本当のことを聞くことなんてできないかもしれない。なんだか僕とジーアの間には見えない溝が生まれつつあるような気がしてならなかった。


 それでもまだ僕は依り代として機能している。まだ魔法少女をクビになったわけではない。

 

 やはり完徹は心も身体もずっとフワフワしている。今日は早いところ帰って寝よう。少しでも寝ておかないと、いつドリーチェが表れるか分からない。

 僕は自分の使命のために体力と気力を回復させておく必要がある。

「あの。何か?」

「え?」

 知らない内に僕は立花さんのことを目で追っていたようだ。その視線についての質問だった。

 咄嗟になんて言ったらいいのか分からない。仕事に対してのことは何もないのだから。

「仕事中に不謹慎だと分かっているがあの後僕も気になって。気がついたら立花さんのことを見ていた。もっと話を聞きたいって思ってた。迷惑だったら謝るが」

 嘘なのか本心なのか分からない言葉が出てくる。こんなこと言うなんて正直自分で自分に驚いている。

 立花さんは少しだけ不審そうな視線を投げかけたような気がしたので慌てて

「だからさ、新しい情報入手したら教えてくれないか?実際に見たというならどんな現象が起こっているのか興味が出てきたんだ。もちろん僕以外にも原因の追求をしている輩ななんていくらでもいるだろうけど、まだ誰も正解に辿り着けていないとしたら面白いって思ったんだ。もちろんこれから僕だって自分で調べはするん・・・だけど」

 ちょっと喋り過ぎたりしてはいないだろうか。その場を繕っているようみたいなのがミエミエだ。

「そうですか。考えておきます」

 意外な返事だった。完全に拒否をされているわけじゃないことにホッとした。


 陽も傾きそろそろ就業時間が終わる。今日も残業は必要なさそうだ。

 いつものように僕はみんなが退社するのを待っていると

「あの、連絡先の交換しませんか」

 差し出されるスマホ。

「仕事ではないので」

「いいのかい?」

「はい」

 連絡先の交換が終わると立花さんは帰ってゆく。どうやら受け入れられたでいいのだろうか。とにかく今は少しでもジーアがどれだけ世間に認知されつつあるか把握する必要がある。

 収拾がつかないレベルになったらミアンに人肌脱いでもらえばいい。

「・・・日が暮れてゆく・・・ジーアとヘーン・・・どんな関係があるんだろう・・・」


☆☆☆☆☆★


  家に帰ってやっと休める。そんなことを思いながらスーツを脱いで一息入れようとした時。

「・・・今夜も・・・いい加減にしてくれ」

 ドリーチェの気配を感じた。

「せめて夕飯を食べさせてくれ・・・って文句を言っても始まらない」

 さっさと片付けよう。そう決意して変身をする。

 ベランダに出ようと窓ガラスに映った自分の顔を見てみると

「ジーア・・・疲れた顔してる」

 無理に笑顔になってみてもやはり本心は隠せない。こんな顔ジーアにさせている自分が情けなくなってくる。

「頑張ろう。ね」

 無理矢理自分自身を奮い立たせて空に飛び出す。私のことを監視している人達がいることを胸に慎重な行動を心掛ける。

「え〜と・・・あっちか」

 気配を察知してジーアは飛んでゆく。今感じている気配は小さい。ということは距離がある。

「はぁ〜・・・出るならもっと近くでお願いしたいよ」

 溜息混じりの言葉が出る。最近こんな言葉しか口にしていない。そう思うとますます気持ちが重くなった。


 ジーアが到着した頃にはすっかり夜になっていた。

「ここってどこ?もうドリーチェはいるはずなんだけど」

 暗くてよく見えない。どこかの山の中。人がいる様子がないことで安心する。

「こう暗いと・・・ったく早く私を見つけて声を上げなさいよ」

 ジーアは適当に周辺を飛んで自分の姿が目立つようにしていた。


 やがて聞こえる『ギ、ギ』という声。

「いる」

 高度を少し下げると声の数が増してゆく。

「まずいなぁ・・・これって数が多い系じゃん」

 イッキに片付けるため『オリハルコン』を展開。今はこれしかない。

 声の集合体が一つに纏まってゆくといつもの金切り声に変わってジーアに向かって来た。

 相手は小さくおまけに速い。それが縦横無尽に襲いかかってくる。

「な、なに?なんなの?」

 大きなダメージは今のところない。それでも触れたところは切り傷になる。

「これってミアンの・・・」

 赤短鮮血に似ている。威力は弱いから今は大丈夫だけどいずれ切り刻まれてしまう。

「うそ!」

 完徹の影響か。

 オリハルコンは簡単に折れてしまった。もう一度。そう思っても魔法力が極端に減っている。

「なんで?・・・まずい。まずいって。このままだと・・・」

 ジーアは一旦上空に逃げた。見下ろすドリーチェは月明かりのおかげでやっと姿と確認することができた。ムササビの大群。そんな感じに見えていた。

「どうしよう・・・どうしたら」


 何にも思いつかない。思いついても私だけじゃどうしようもない。

 考えるんだ。目の前の敵を倒す方法を。


「駄目・・・私・・・」


 同じ場所をマグロみたい回遊していたドリーチェはジーアの姿を捉えると一斉にジーアを目指して上空に向かってきた。

「き、来た・・・こ、こうなったら・・・」

 魔法力も少ない今・・・簡単に集められるのは・・・ジーアはステッキを構えて

「お願い。水素達。私の周りに集まって!」

 その後どうする?ホントにライターで火を着けるの?そんな熱源でいいの?他に方法ないの?誰か教えてよ。


 ドリーチェ達はもう少しでジーアに届く。キバが出すカチカチという音がジーアの耳に不気味に響く。

「あれは」

 何の策もない状態でジーアに一瞬見えた。

 それはドリーチェ達がキバを鳴らす時に音と一緒に火花が散っていること。一つ一つはとても小さい。けれどこれだけの数が集まってイッキに火花を散らすことができれば・・・

 出来るだけ一ヶ所に集めること。同時にキバを鳴らさせること。

 ・・・そんなこと上手くいくのだろうか。そうするための私自身の行動を考える。

 ジーアはさらに上空に。相手と距離を取る。不思議とすぐにドリーチェは追ってこない。一ヶ所に集まってしばらく旋回したのちに再び向かってくる。

「そっか。もしかして目が見えないんだ。だから見失ったらこっちを感知するための時間ができる。これならいけるかも」


 もう一度確かめるためにジーアはまた上を目指して、じっと相手のことを見る。

 同じ動きをしてジーアの気配を察知。そして向かってくる。

 すかさずさらに上空に。また同じ行動をする。

「やっぱり。よし。あとはタイミングだけか」


 気がつくと眼下に日本列島が地図の形そっくりに見える。

 どれだけ高い位置にいるか、それにどこまで上に上がることができるのか。

 自分の飛行能力のすごさにビックリ。まさか宇宙空間までの飛行能力はないだろう。


「あと一回。これ以上だとホント宇宙だよ。これが最後のチャンス」

 ジーアはもう一度。自分の周りに水素を集め始める。『H』がステッキの周りだけじゃなくジーアを中心に大きな玉となって日本上空に集まっていた。


「さあ、ここよ。来なさい。私のアイデアが勝つかあんた達の執念が勝つか。勝負よ」


 集中するジーアの身体はいつも以上にピンク色の光を放っていた。しかしここは遥か上空。簡単に地上から見えやしない。


 ドリーチェはジーアを見つけると一斉に、しかし速度はさっきとは違いかなり落ちているように見えた。それでもなんとかジーアを取り囲むように歯を食いしばりながら向かってきた。


「あんた達ってこれ以上上空は無理みたいね。私はね。まだまだ行けるのよ。どう?口惜しいでしょ」


 ジーアの言葉が通じたか分からない、が、ドリーチェ達は一斉に大きくキバを弾いた。

 その瞬間。ジーアはさらに上空に。

 大きな火花は大きな爆発となって夜空を照らす。

 個々のマルヴが花火のように散ってゆく。まるで勝利のご褒美みたいに。

「私の勝ち」

  ガッツポーズして

「こんなに上手くいくなんて思わなかった・・・どう?見てたジーア」

 原子をちゃんと使えたような高揚感すらある。自分の魔法だってまだまだ可能性があることを実感できた。

 疲れているのに気分が良いのはいつのより星が近いせいなのかもしれない。それにこの場所なら締めの魔法はいらないような気がする。

「今日はおしまい。帰ろ」

 日本地図みたいな日本に向かって真っ直ぐ降下してゆくジーアだった。


★★★


 気分よくぐっすり眠ったおかげで今朝は気分がいい目醒めだった。同時にスマホが振るえていることに気がつく。見ると

「え?・・・うそ・・・だろ」

 送られてきた画像。それは国際宇宙ステーションによって撮影されたジーアの姿だった。


もう夏なのか?っていうくらいの毎日。熱中症にはお気をつけて。

読んでいただきありがとうございます。

なんとなく月曜日になりそう。←アップする日

展開はのんびりです。今のところ。

もっと緩急を。まあそのうちそうなるかな。

今はまだ探っていることが多い私です。

こんな物語ですが読んでもらえることに感謝してます。

次回もよろしくお願いします。

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