明日も朝日を見るために
誰かが僕のことを揺り動かす。まだ眠りの中にこの身を浸していたいのに、その誰かは僕をそれ以上眠らせないという確固たる決意のもと起こしている。
「・・・っと、ねえ、そろそろ起きてよ」
僕は少しだけ瞼を開ける。ただそれだけなのに太陽の光は眩しくて意識は急に覚醒へと向かい始めた。そして僕は起きた。目の前には妻、響子の顔が入ってくる。
「やっと起きた。ねえ、いくら今日が休みだからっていい加減起きないと睫毛が絡まって目が開かなくなっちゃうわよ」
僕は枕元の眼鏡をかけてあらためて妻のことを見る。すでにどこかに出掛けるのだろうか、化粧も着替えも終わっている。
「・・・おはよう・・今何時?」
「もうすぐお昼。私これから出掛けるからご飯は適当に食べて頂戴」
「・・ああ、で、どこに行くんだ?」
「あのね、今日は綾の学校で集まりがあるの。で、綾も一緒だから気にしないで」
「学校?なんで?きょうは日曜日だろ」
「あなたは仕事に夢中で知らないかもしれないけど、最近綾の学校の周りで奇妙なことが起こってるんだって。だから父兄も一緒に学校と安全対策取るんだって。今日はその集まり」
「奇妙なこと?何だ何だ、変質者でもいるのか?」
「変質者とはちょっと違うみたい。綾も見たって言ってた」
「見たって?何を?」
「お、ば、け」
「お化け?まさか」
「まあそんなことあるはずないと思うけど、学校としてはやっぱり何か対策取らないとね。実際何かあってからじゃ遅いし、今のご時世、建前でもいいから何かしてないといろいろうるさい世の中だからね。帰ったら話すわ」
響子はそう言って部屋を出て行こうとする。ドアに手を掛けたところで
「ねえ、あなた最近忙しい?昨夜も何時帰ってきたか知らないし」
僕だって昨夜何時帰ってきたか知らないのだ。でも無駄な心配をかけるわけにはいかない。
「ああ、でも今日はゆっくりする。だから夕飯は一緒に食べよう。なんだったらどこかで待ち合わせて外で食べてもいい」
「綾がね、最近元気無くて・・・いじめにでも遭ってるのかしら」
「そうなのか・・・何かごめん。僕が仕事ばかり優先させるから」
「別にあなたのせいなんて言ってないわ。ただここのところ私達どんどん距離が離れていってしまっているみたいで」
「そんなことはない」
と、言ってはみたものの、何だかしっくりとこない。仕事が忙しいのもあるがやはり魔法少女としての活動も多いからだ。果たして響子に話して理解してもらえるかどうかそれがイマイチ確信が持てない。有栖のように理解してくれる存在がいるというだけで随分違うのだろうと思ってしまう。
「僕の方で聞けたら聞いてみる。なんだか悪いな君にばかり押し付けて。だからさ、夕飯は一緒に食べよう。どうかな」
「たまには悪くないわね。終わったら連絡する」
響子は行ってしまう。
僕はここ最近僕自身のことについて考えてみる。確かに考えれば考える程、娘の綾と何時話したか思い出せない。ジーアや他の魔法少女達と話していた方が多いくらいだ。完全に生活というか、自分自身が入れ替わっているように感じる。しかし一年後、そのことを考えると・・・。
今日はきっと大丈夫。久し振りに家族で外食だ。それで少しでも溝が埋まればとも思う。
しかしその淡い希望は一本の電話で儚く散ってしまうこととなる。
「もしもし」
「もしもし。水無月です。起こしてしまったら申し訳ないんですけど」
「いや、あと五分早かったらそうなってた。今は起きてる。どうした?」
「実はみなさんに話さなきゃならないことがありまして。だからみんなと連絡を取ってます。神谷さんが最後です。今から『くま屋』に集合してもらうことは可能でしょうか?」
「電話じゃ駄目なのか?」
「すみません。直接話したいもので」
僕は時間を確認する。まだ十二時十五分。話だけなら妻との約束は大丈夫だ、と判断。
「分かった。すぐ出るよ」
「ありがとうございます。ではのちほど」
有栖との電話を切ってステッキを出す。そして変身。私はジーアになる。
「へえ、汚れていた服がきれいになってる。あんなに真っ黒だったのに。あっ、そうだ、起きたばっかりで喉乾いたからお茶の一杯くらい飲んでもいいよね。あと歯も磨いて顔も洗おっと。どうせ誰もいないし、このままでいっか」
ジーアは部屋を出てキッチンに向かう。
そう言えばこの姿で家の中を歩いたことがなかったので何だかウキウキした気分になってくる。
コーヒーを飲もうと豆をミルに入れてハンドルを回し始める。もの凄くよく寝たせいか気分がいい。鼻歌なんかも唱ってしまう。だが、それがいけなかった。ドアの開く音に全く気がつかなかった。
「あ、あなた誰?ここで何してるの?」
ビックリして振り返るとそこには妻の響子が立っていた。な、何故ここにとジーアの方が聞きたいくらいだった。
「ちょっと誰?何処の子?勝手に家に入って、勝手なことして。あなた名前は?」
「あ、あの・・・響子、これは・・・」
「響子ですって!何で私の名前知ってるの?何で呼び捨てなの?」
「い、いえ・・・あ、あの・・私・・その」
「ねえ、あなた、ちょっと、ねえったら」
響子はそう言って仁の部屋に向かって声をあげる。当然だが返事などない。
「ついさっきまでいたのに。まったく何処行ったのかしら?」
ここで変身を解くわけにもいかないのでジーアは必死に頭を回転させる。
「ねえ、あなた、ここにいたヒョロッとしたおじさん見かけてない?」
妻の紹介の仕方にジーアは、仁はかなり傷つく。もっと他に言いようがあると思いながら。
「あ、私、名前はジーアって言います。私、仁さんに頼まれてお茶の準備を・・・・」
「はあ?何言ってんの?あの人があなたにお茶をですって!あんた達一体どういう関係よ!」
「ど、どういうといいますと・・・」
「何であんたみたいな子供がウチの主人と知り合いなの?もしかして最近ウチの人、仕事だって嘘ついてホントはあんたと遊んでいたんじゃないの?だったらとんだ変態だわ」
あらぬ誤解をさせていることに申し訳なく思いながら、とんだ誤解をしたものだとも思う。
「ち、違うんです」
「どう違うの?主人がいない今、あなたに説明してもらうわよ」
「あの、私さっき、えっと、じ、仁さんに助けてもらったんです」
「はあ?私はさっき家を出たばっかりなの。そして主人は起きたばっかり。それなのにどうしてそんな嘘つけるの!」
「あ、う、そ・・・・じゃ、なくて」
妻はジーアのことを頭の天辺からつま先まで舐めるように見て
「もしかしてあなた夏に主人と海に行ったりしてないわよね」
「え?海?」
あの時見られた水着のことだ。妻は完全に疑いかかっている。ここで一連の誤解を解いておかないと後で面倒なことになる。だって今日は久し振りの家族外食なのだから。なんとしてもこの場を上手く切り抜けなければならない。
「そう。あの水着はあなたのだったんでしょ。ヒモのような派手派手なの」
そこまでしっかりと記憶していることが女の恐ろしさを垣間見たような気がする。
「ち、違う。私、さっきから違うって言ってる」
「違うなら何で答えられないの?」
「だって、私が答えようとする前にいろいろ言ってくるじゃない」
ジーアのやっとちゃんと喋った言葉に響子はじっとジーアの瞳を覗き込んで
「分かったわ。聞いてあげる。だからホントのこと話しなさい」
ジーアはその一言で深呼吸をする。少しだけ頭の中が落ち着き通常運転をしているのが分かる。これならきっと大丈夫。
「私、実は仁さんに夏休みの宿題を教えてもらったことがあって。だから今日はその時のお礼をいいに来たの。さっきって言ったのはさっき来たばっかりってことで、そしたら仁さん買い物に行ってくるから留守頼むって。できたらコーヒー豆を挽いておいてくれって頼まれて」
「で、あの人はいないわけ」
ジーアは何も喋らず頷くだけで返事を返す。
「でも私忘れ物して戻って来た時すれ違いもしなかった。どこに買い物に行くっていうのよ」
「そ、それは分かりません。ただ玄関じゃなくて勝手口から・・・・」
響子は勝手口を覗き込む。それを見て
「嘘ばっかり。やっぱり嘘ね。だってサンダルがあるもの。一体何を履いていったっていうの?まさか裸足で行ったなんて言わないでしょうね」
「そんなの知らない。だったら仁さんは何処にいるの?この家になんていないのよ。私は嘘なんて言ってない」
今度は携帯を出して電話をする。ほどなく仁の部屋の中から呼び出し音が鳴る。
響子はジーアをそこに置いたまま二階の部屋に向かうため階段を上り始める。そのチャンスをジーアが逃すわけなかった。急いでコーヒー豆の入っているステンレス製の茶筒に姿を映し、すぐに変身を解く。大急ぎで靴箱から自分のサンダルを出して勝手口の扉を開けてそして閉める。そんなことで十分息切れをしているから問題ない。
すぐに響子が戻ってくる。そして僕の姿を見つけると今度は周りをキョロキョロして
「ど、どうした?学校行ったんじゃないのか?」
「ねえ、女の子がいたんだけど。知らない?ジーアって言う髪がピンク色した子」
「ジーア?知らないな」
「嘘!あなたにお礼を言いに来たって」
「知らないって。何で僕がそんな女の子知らないとならないんだ?」
「ところであなたどこに行ってたのよ」
「ああ。見ての通り裏庭だよ。ほらちゃんと自分のサンダル出したんだ」
僕はそう言って履いているサンダルを意気揚々と見せた。妻は言葉には出さないが何か言いたそうな目をして
「で、裏庭で何やってたのよ」
ここで少々フリーズ。何も考えてない。しかし何か答えを、いやこれでは問いつめられるだけだ。話の方向を変えなくては。この間僅か二秒。
「豆を挽いてる時に物音が聞こえて。さっき君から綾の学校のこと聞いたばかりだったろ。お化けの話。だから何だか怖くなって。それで確かめてたんだ。そして戻って来たら君がいて女の子を見たっていうし。もしかして君の方がお化けを見たんじゃないか?」
言いながら心の中でジーアに謝る。君はお化けなんかじゃない。魔法少女だ。
「へ、変なこと言わないでよ!気持ち悪い。大体お化けは夜でしょ、出るの」
「そんなことはない。だって綾だって学校で見たんだろ。時間は分からないが学校なら間違いなく夜ではない。だから本当はそんなこと関係なく出るのかもしれない」
そう聞いた響子の顔は見る見る青くなっていく。見ていて気の毒だとは思うが、どうやらこの場は回避できそうな予感がしてくる。もう一息だ。
「だから学校でのこと後で詳しく聞かせてくれないか。もしホントにお化けなら一体どんな対策をするのか、興味ある」
「あ、あなたが変なこと言い出すから行くの怖くなってきたじゃない。ほんとどうしてくれんのよ。それともあなた、私の代わりに行って来てくれない?」
「いや、それが・・・・」
「それが何?何か都合悪いわけ?やっぱり知ってんじゃないの、ジーアって子のこと」
ここで話を戻してなるものか!
「いいのかい?家に一人でいてまたその女の子のお化けに出くわしてもさ」
顔はさらに引きつって
「・・・やっぱり私が行く」
振り返って玄関に向かう。そして靴を履いていそいそと出て行ってしまった。その後ろ姿に僕は謝罪する。
僕は玄関でしばらく様子を見る。どうやら今度こそちゃんと行ったみたいだ。それから急いでそのまま洗面台に向かい歯を磨き、顔を洗った。そして鏡を見る。そこには昨夜と同じ顔が映る。自分でも歳取ったな、と正直に思う。そして若かりし時はもう遥か昔のことだとあらためて実感する。
「ちょっと!」
ジーアの声が聞こえる。
「おはよう。何だか慌ただしくて済まなかった」
少し沈黙。何だか怒っているように感じる。
「もしかして・・・・」
「怒ってるわ」
「やっぱり・・・でも仕方なかったんだ。ああでもしないと収拾がつかないと思って」
「でもお化けはあんまりじゃない?私は・・・」
「分かってる、魔法少女だよ。だからほんとごめん。これからはジーアの姿で家の中をうろつかない。約束する」
「だったら、あのこわ〜いおばさんに私が魔法少女だってちゃんと言ってよね」
「いや〜、余計話が混乱するだけだと思うからなぁ。困ったな・・・・」
「困ってる場合じゃないでしょ。事実はちゃんと伝えるべきよ」
「それが正論だって分かってる。少し考えさせてくれ」
ジーアは納得したようなしないような感じで溜息をつき、それから思い出したかの様に
「ねえ仁。忘れてるでしょ」
「あ!」
僕は急いで部屋に戻りステッキを出して振る。ジーアごめんと思いながら。
光に包まれ再び私はジーアになる。それからご近所を確認してから空へと飛び出す。
「眩しい」
今日も良い天気だ。ジーアはくま屋に向かって全速前進した。
ジーアがくま屋に着くと日曜日だというのにシャッターが下ろされ、『臨時休業』と毛筆で書かれた紙が貼ってあった。ジーアは心でグローに到着したことを伝えると、シャッターが少し開いてそこからミアンが顔を出した。
「おそ〜い。待ちくたびれた」
「ごめん。出掛けにごたついちゃって」
「早く入ってよ」
ミアンに促されてジーアはシャッターをくぐる。すると中は蛍光灯が点いて明るくて、でもそこに並べてある駄菓子達は眠っているように見えるほど静かだった。
「やっと揃いましたね。ではみなさん変身を解いてください」
グローの言葉にティーナが反応して
「何で?何のために?」
「これはわたくしが、わたくし自身として話したいからです。だから皆さんにも元に戻ってちゃんと聞いてもらいたいからです」
「何だかよく分からねえ。けどどうしたんだよ、あらたまってよ」
ティーナの質問には答えずグローは変身を解いて水無月有栖に戻る。それを見て他もそれ以上聞かず黙って変身を解いた。
「有栖、これでいいのか?」
「はい。みなさん、ありがとうございます。そしてごめんなさい」
「ちょっと、それってどういうこと?」
「ねえ、何があったのさ有栖ネエ、もしかしてほんとはやめちゃうの?」
「まあまあ、みんな黙って聞くんじゃ」
くまの言葉にみんなそれ以上何も言わずにただ黙って次の言葉を待つ。
有栖は深呼吸してから
「実はわたくしの学校は毎年この時期から一年間交換留学を姉妹提携の学校とすることになっていまして・・それでわたくしがその大役を仰せつかってしまったんです。分かってるんです、昨夜のことを考えるとそんなこと言ってもいられない。けど水無月を継ぐ者として辞退することも難しく、それでどうしようかとみなさんに相談したかったんです」
有栖はそこまで一息に喋る。深く息をして、それからみんなの顔をじっと見つめ答えを待っている。その心配と不安が入り乱れた視線とはウラハラに
「え〜!留学って凄いじゃん。どこ、どこ?」
「・・・鏡一郎君」
「何だそんなことか。魔法少女やめるって言い出すと思った」
「九さん・・・・」
「やっぱ本物のお嬢様は違うのう。有栖、頑張れ」
「くまおばあさま」
「そうだぞ。凄いことだぞ。それに有栖自身はどうなんだ?こういう風に言ってくるってことは行きたいんだろ」
「神谷さん・・・はい、わたくし本当はそうやってみんなに背中を押してもらいたかったんです。あの、わたくしホントに行ってもいいんでしょうか?」
「いいも何も有栖が自分で出した結論なんだろ。だったら自信を持つんだ。有栖には僕とは違って大人になるという未来があるんだ。そのことに反対なんてするものか」
「だからって魔法少女やめるわけじゃないんだろ。私としてはちょっと寂しくなるけど一年後楽しみにしてるからな。学校もあるだろうけどグローの魔法、もっと使えるようになって戻ってこい。その時は私だってもっと強くなってティーナの力、全部引き出してやるんだからな」
「僕だってミアンの魔法もっと使えるようになってるから」
「おれも待っとる。そして世界もじゃがみんなの未来を守ろう」
有栖は涙を滲ませながら
「あ・・ありがとうございます。わたくしもみなさんに負けないよう、学校も魔法も頑張ります。そして一年後、再びここ東京に帰ってきます」
僕たちは誰が合図をしたわけでもなく拍手した。
「で、どの国なの?教えてよ」
「鏡一郎君、わたくしが行くのはアメリカのペンシルベニア州です」
「ペンシルベニア州?ってどこらへん?」
有栖は今度は笑って
「アメリカはとても広くて分かりづらいかもしれませんが、ニューヨークの真下と思って頂けたらすぐに見つかると思います」
「へえ、ニューヨークが隣ならすっごい大都会なんじゃないの?」
「そうかもしれません。しかし自然豊かな所だとも聞いています」
「ほえぇ・・・僕には全然想像つかないくらい凄い所なんだ」
「正直楽しみです。だから必ず一回りも二周りも大きくなって帰ってきます」
ここで瑠璃さんが『ごほん』と意味ありげな咳払いをする。
「確かに凄い。そこでだ。実は私からも報告がある。ほんとは行ってから事後報告で言おうと思ってたんだけど、ついでって言い方はあれかもしれないけど、私も外国行くんだよね」
その唐突な報告に僕たちはみんな呆気に取られ、それから非常に驚いた。
「わ、悪い悪い、黙って行こうとしてたの悪かった。なんか言いにくくてさ。私だって魔法少女やめるつもりはないんだけど・・・・」
「こりゃ、瑠璃。お前またおれ等に黙っとったな。何で大事なことを一番に言わんのじゃ」
「だからごめんって」
「で、お前はどこに何しにいくんじゃ?」
「私さ、店出さないかって兄貴に言われて、今は派遣やって将来だってよく分からないだろ。支店出すから任せたいって、それに海でみんなが私の料理美味いって褒めてくれたし、だからさ、私もいいかなって思えるようになって・・・」
「だから何処だと聞いとんじゃ」
「私はイタリアだ。兄貴が以前修行していた店を紹介してもらったんだ。有栖と違って一年ってわけにはいかないけど、それでも一年後ここには戻ってくる」
「イ、イタリア・・・一緒に酒飲むには遠いのう・・・・」
「く、くまちゃん、美味しいワイン送ってやるから。だから頼む、行かせてくれないか」
くまさんは泣くどころか瑠璃さんの頭を軽くチョップして
「誰が駄目なんていうか。お前が決めた将来じゃないか。そんなことより帰って来たらおれに美味いもんたくさん食わせろ」
むしろ瑠璃さんの方が急に涙が溢れてきて
「・・・う・・ああ、任せろって・・・腹がハチキレルほど・・・いいよなみんな」
涙を拭って僕たち一人一人の顔を見る。
「もちろんだ。でも一年後には必ず駆けつけて欲しい。その日を越えて行かなきゃ僕たちに未来はないんだから。瑠璃さん頑張ってください」
「仁さん・・・ほんとはいい人?」
「はあ?どういう風に見えてたのかな?まったく瑠璃さんも有栖も誤解してる。はっきりと言う。僕は何処にでもいる普通のおじさんだ。何もやましいことなんてない。だからいい加減普通に見てもらいたい」
僕の言葉に瑠璃さんも有栖も笑う。果たして分かってくれたかどうか疑問だが、やっと今までのことに白黒付けたつもりだ。
「でもさ、やっぱ普通のおじさんが魔法少女やってるっていうのが変だよな、な、有栖。やっぱ少女と言うからには女じゃないと」
有栖もにっこりと頷いて
「だったら瑠璃さん、鏡一郎はどうなんだ?」
「ああ、それね。だって小学生だよ鏡ちゃんは。小学生四年生なんて男も女もそんなに変わらないって。まだまだ小さな子供。だから違和感がない」
またまた有栖も頷く。普段は喧嘩が絶えないのに、どうしてこういうときはあっと言う間に結束してしまうのだろうか。そこに女性の恐怖を感じた。
しかし僕は迂闊にもそれもそうだと思ってしまう。やっぱりこの溝は埋まらない。そう確信して溜息をする。
「分かったよ。でももう一回だけ言う。僕は普通だ」
言葉は何の説得力もなく虚無の空間に消えていってしまった。また溜息。
「さて報告は終わりでいいかな。僕はこの後予定が・・・」
と言おうとしたところでくまさんが僕の言葉をかき消すように
「よ〜し!今日は日曜日。今から送迎会するぞ!宴席はおれに任せろ!」
と言った。それから電話でいろいろと話が進んで行く。
「みんな無論大丈夫じゃろ?」
何故こういう時に限ってみんな大丈夫なのだろう。帰るなんてとても言い出せる雰囲気ではない。もう一回深く溜息。
「どうした仁さん、暗い顔して」
「瑠璃さん、ちょっと予定が・・・」
「はあ?みんな盛り上がってるのに?ここは会社じゃないんだよ。仁さんにとってはどっちが大事なの?」
それはどっちも大事だ。とも言えず・・・仕方なく僕はメールをする。と同時に電話が鳴る。当然だ。僕は一人シャッターをくぐって外に出る。
「も、もしもし・・・」
溜息まじりの鼻息が聞こえてくる。この沈黙は重い。
「あ、あのさ・・・」
また鼻息。脂汗が滲む。さらにワキにも汗が・・・そこでやっと受話口からとても乾いていてそして冷めていて何処までいっても抑揚のない平坦な声が聞こえてくる。
「お仕事ご苦労さま」
「ご、ごめん・・・」
それ以外どんな言葉があるのか誰か教えて欲しい。響子は一言喋ってからやっと人間味を帯びた口調に戻る。
「私はね、仕事を反対しているわけじゃない。あなたの体のこと心配してるの」
「ああ、うん」
「今日だってあなたが言い出したんだからね。結構楽しみにしていたのよ、私も綾も」
「すまないと思ってる・・・」
「あなただって今日のこと聞きたいって言ってたし・・・ねえ、ホントのこと言って。怒らない。だからほんとのこと知りたいの。ほんとはいるんでしょ、そこに。ジーアって子が」
そう来るか!いつか魔法でジーアのこと忘れさせることは出来るのだろうか?
「いないよそんな子。言ったじゃないか、君が見たのはお化けじゃないかって。だから知らないし、僕は今一人だ」
しばらく沈黙が流れる。その間、僕は掌で額の汗を拭う。
「今日は遅いの?」
「なるべく早く帰るつもりだ」
「そう・・・分かったわ」
響子は僕よりも先に電話を切る。何となくいたたまれない気持ちが込み上げてくる。
「一体僕は何をやっているんだ・・・響子、綾、すまない許してくれ。ホントのこと言いたいけど、でも知らない方がいい。一年後、そうすれば僕はきっと元の生活に戻るはずだ。だから今はごめん。みんなの未来がかかっているんだ、この世界を終わらせるわけにはいかないんだ。僕はそのために魔法少女になったんだ」
電話をポケット納めた。それを見ていたかのようにミアンが声をかける。
「みんな待ってるよ」
「鏡一郎・・・何で変身してんだ?」
「みんなも変身してる。やっぱりこの姿がいいって。だから。仁さんも早くジーアになって」
「わかったよ。もうこっちは済んだ。今日はトコトン付き合うか」
僕はステッキを出し祈りを込める。いつもの様に光が弾ける。
「オッケ、変身終わったよ」
くま屋の中に戻るとミアンから手渡されたもの。それは
「こ、これって・・・」
「そう。あの時の集合写真。みんなの分、プリントして持ってきた。これはジーアの分。どう?よく撮れてるでしょ?」
ジーアは写真を見る。
そこにはあの時、海に行った写真。魔法少女としての思い出作り。こうやって見ると何だか眩しくて、それでいて初々しい魔法少女達の笑顔が映っていた。思わず笑顔になる。
「懐かしい・・・あれからそんなに経っていないのにこんなに懐かしいなんて。私達の大切な思い出」
そう言ってみんなの顔を見る。その誰もが嬉しそうに写真を見ていた。
ほどなく『くま屋』にいろいろ運び込まれてきた。料理の入った重箱達にお酒にジュースの類い。それがテーブルにどんどん並べられていく。
「うわ〜これってなになに?」
ミアンはブーアに聞く。
「かかか。あたいのっていうかくまの知り合いの料亭に頼んだんだ。なかなか立派だろ」
「ほんと凄いな、いいのかブーア、私、今金欠なんだけど」
「何言ってる、これはグローとティーナの送別会だ。ここはくまの奢りだ。みんな遠慮せずどんどんやってくて」
ブーアはドヤ顔で笑う。グローは笑顔のままブーアにお辞儀する。ミアンは当然のことのように枝豆を一つつまみ、ジーアはブーアに向かって
「ほ、ほんとにいいの、これ?私半分出そうか?」
「いいっていいって。知り合いだからかなり安くしてもらえる。それにここはあたいの顔立ててくれ、な、頼むよジーア」
「そこまで言うなら、分かった。ありがとうブーア、ごちそうになるね」
「そうそう、そうこなくっちゃ。さて、みんなコップは持ったか?」
ブーアに言われてミアンがブーアとティーナにはビール。グローとジーアにはペリエ。そして自分はオレンジジュースを注ぐ。
「それじゃジーア頼んだよ」
「え?ブーア、私でいいの?」
それにはみんなが黙って頷く。ジーアも笑顔で返し
「分かったわ。それじゃ、グローとティーナの新しい門出を祝って、それと一年後またこうやって集まって世界を守る。その使命も忘れないように、乾杯!」
「乾杯!」とみんな口々に言って宴が始まる。加熱する送迎会。
いつしか世界は夜に変わっていた。
☆☆★☆☆
何事もなく一週間が過ぎた。
僕は有栖と瑠璃さんを見送るため、打ち合わせでもしたかのように出発日が一緒なんて、昼休みに抜けて羽田空港までやって来た。どうやらまた僕が一番最後らしい。
「お〜い、仁さんこっちこっち」
鏡一郎が見つけて手を振っている。
羽田空港国際線ターミナルは平日にもかかわらず沢山の人で賑わっていた。当然僕たちもその中の一団なのだけれど。
「遅くなった。そろそろ搭乗手続きか?」
「遅いよっていうか仕方ないよな、仕事じゃ」
「そうだよ瑠璃さん、仕方ない。しかしこの言葉には結構救われてる」
「そうなんですか神谷さん?」
「そうだ。その内分かるさ有栖。それとお久し振りです春日さん」
僕たちのことを唯一知っている執事の春日さんも一緒だ。
「お久し振りです、神谷様。お仕事の方は順調ですか」
「まあ、ぼちぼちってとこですね」
「ほれほれ、仕事のことなんて忘れろ。二人はギリギリまで仁さんが来るの待っとったでな」
「そうだったんですかくまさん。すまなかったな。ほんとはもっとゆっくり出来たのに」
それには有栖も瑠璃さんも黙って笑顔で返してくれた。
「しかし何で同じ日に出発なんですか?」
「えへへ、知りたい?」
瑠璃さんはそういうと自慢気にチケットを見せて
「こ、これ・・・・」
「そうなの、ファーストクラスよ、ファーストクラス!有栖がねニューヨークまで一緒に来てくれるなら出してくれるって。悪い話じゃないでしょ、そこから乗り継いで私はイタリアに行けばいいことだから。なんたって初めてよ。一生ファーストなんて乗れないと思ってた」
すでにテンションはマックスに近い。何だか海のことを思い出す。
「さすが・・・・」
その先を言おうとしたら有栖が上品に微笑んだ口元に指を添えたので、それ以上言うのを止める。しかし一体いくらするんだ?想像もつかない。
「じゃあ有栖、瑠璃、頑張って行ってこい。そしてまた会おうな」
くまさんの言葉に有栖が一歩前に出て
「みなさん行ってきます。そして来年までそれぞれが成長した姿でお会いしましょう。それと神谷さん言っておくことがあります」
「ぼ、僕にかい?」
有栖は僕以外に顔で合図すると軽く呼吸を整えて
「実は神谷さんにお話ししなければならないことがあります。だからわたくしが魔法少女のリーダーとしてお伝えいたします」
「な、何を?急にあらたまって何を言うんだ?」
「この日本は魔法少女ジーアに守ってもらいます」
「この日本ってどういう意味?だって僕の他には鏡一郎やくまさんだっている」
僕はそう言いながら二人の顔を見ると、何でか二人とも目を逸らした。
「時間があまりないので手短に説明します」
「どういうこと?」
「わたくしもここで聞いたばかりですから詳しくは後でお願いします。実は鏡一郎君もくまおばあさまもここを離れます」
その言葉を理解するのに少々時間を有した。そして完全に理解した時僕は腰が抜ける程驚く。
「え!えええ?ほ、ほ、ほんと?なんですか?」
「ごめん仁さん。僕は家の都合でオーストラリアに行くんだ。いわゆる転勤ってヤツ」
「鏡一郎・・・オーストラリア?」
くまさんを見る。
「かかか。おれは海外じゃない。沖縄だ」
「くまさん・・・沖縄?」
「ああ。沖縄ちゅうても本島じゃない。与那国島じゃ」
「与那国?何でまたそんなとこに?」
「知り合いに農業助けてくれって頼まれての。おれと同じ『ひめゆり』出身じゃ、断るわけにはいかんでな」
「ひめゆり?ってあの?」
困惑している。正直パニックだ。
「なので、ここ本州にいる神谷さんが日本の担当になりました。仕方ないといえばいいのでしょうか?」
「合ってるよ。確かに使い方は合っている。しかし何でまたこんなことに。僕たち魔法少女がみんなバラバラじゃないか」
「それも仕方ないって。しょうがないじゃないか、それぞれ事情がある。ということで頼んだよ。イタリアっていうかヨーロッパは私が担当だから」
「瑠璃さんまで・・・って海外にもいるのかドリーチェって」
それには有栖が答える。
「グローから聞いています。ドリーチェに国境は関係ないそうです。だから良い機会だと思います。本来どの時代でも魔法少女は唯の一人きり。国は違えど本来の姿に戻ったと思っていただいた方が良いかもしれません。それぞれ自分の魔法に磨きをかけるには適していると。ちなみにわたくしはアメリカ全土の担当です」
「だとしたら鏡一郎はオーストラリア担当か。ならくまさんは?同じ日本だ、遠いけど」
「くまおばあさまは台湾とかベトナムなど東南アジア、インド辺りでしょうか。神谷さんだって日本だけとは限りません。隣国にだって行ってもらうことになると思います。朝鮮半島に中国、ロシアとかです」
「ちょ、ちょっと待て急に範囲が広くなったぞ。そうだ、アフリカは?誰が担当するんだ?」
「そう興奮しないで落ち着いてください。そっちは鏡一郎君にお願いしてあります」
さらにパニック。だが落ち着け。大人の僕が何を狼狽えている。
「まあ、今のは一応という意味も込められています。もし一人で無理なら当然誰かに手伝ってもらっても構いません。反対に助けに行くことだってあるかもしれないですから」
「わ、分かった。すまん、急な話で汗が出た」
僕はその言葉がだんだん浸透してくる。呼吸を深くするとやっと冷静に頭が回転し始める。
「それではわたくし達はそろそろ行きます。みなさんお元気で」
「じゃあな、みんな。帰ったら美味いもん沢山食わしてやっからな」
有栖と瑠璃さんは搭乗ゲート、ファースト専用、を行ってしまう。
後には春日さんを含めた四人がその場に残る。何だか不思議な感覚だ。これから一年もみんなと会えなくなるなんて、そんなこと考えたこともなかった。
そんなこんなで僕は暫しボーッとしていると、春日さんが話始めた。そしてどこにあったのか、その手には真っ黒な刑事ドラマにでも出てきそうなアタッシュケースがある。
「これをお嬢様からです」
ケースの蓋を開けると三台のスマホが入っている。どうやら僕たちへの何かだということが分かる。
「皆さま、どうぞ。手に取ってください」
言われるがままスマホを取り出す。春日さんは説明しはじめる。
「これは全世界に通じているスマートフォンです」
フォンと言う響きに特徴がある。きっと英語なんかペラペラなんだろうと思う。
「この中には皆さまのアドレスと番号がメモリーされています。もし魔法少女の時に緊急事態が発生したら使用してください」
「ど、どういうこと?有栖から聞いて知っているかもしれませんが、僕たちはその、魔法少女になっている時はスマホなんか使わなくても心の中で話することが出来るんですよ」
春日さんは上品に微笑んで
「ええ。窺っております。しかしこれからはこれが必要になります」
「だから何でですか?」
「お嬢様はいろいろ聞いたそうですグロー様から。神谷様がおっしゃっている特殊能力にも距離的限界があるそうです。だから例えば神谷様の場合だと一番近い権田原様とならその能力も可能ですがお嬢様とは出来ないそうです。逆もまたしかりで。そこでお嬢様はこのような手法を導入することにしたのです。この全部で五台のスマートフォンは専用回線で繋がっていますので他からの邪魔は一切入りません」
「だからってここまでするのか?」
普段はいつも優しい笑みを浮かべている春日さんの目がカッと開いて
「聞きました。一年後大変な危険が迫るそうですね。それを越えて行かなければ未来は無い」
「た、確かにその通りです」
「だからです。お嬢様はなんとしても世界を守りたい。そう思われています。ですからこれはお嬢様の決意の表れと思ってください」
僕たちはスマホをやっと納得して受け入れる。それぞれの魔法少女の時の髪の色が本体のカラーになっている。だから僕のは当然ピンクだ。正直くまさんの緑と交換したい。
「それでは皆さま。この世界を託します」
「ええ。分かりました。そのために僕たちは頑張らないといけないんです」
そう言ってスマホを見ると一年後の重さが伝わってくるように感じる。
「そろそろ飛ぶんじゃないかな。ねえ春日さん有栖ネエ達の乗っている飛行機ってどれ?」
「ではデッキに出ましょう」
僕たちは春日さんの後についてデッキに出る。空は晴れ渡り、ウロコ雲が一筋流れている。風は少し冷たく感じるがそれでも気持ちがいい。それから沢山の飛行機が飛び立つのもあれば長旅を終えて着陸するのでごった返していた。
「あれです。あの白い機体です」
春日さんが指差す方を見てみるとピカピカに磨かれた日本の航空会社の飛行機が滑走路に向けて動き出している。時折反射する太陽の光が眩し過ぎた。
「あの機体の前の方にお二人は乗っておられます」
僕たちは言葉無く見ている。
飛行機は滑走路のスタンバイ位置にやって来るといよいよ飛び立ちの時と言わんばかりの気合いが見て取れる。徐々に加速していき、どんどんスピードがあがり滑走路の終わりが近づいたのを見計らったように機首をあげるとそのまま大空に向かって文字通り飛び立つ。それから方向を見定めるように旋回をしてからさらに空の高みに向かって上空へと、そして目的地に向かって飛んでいく。
その時一瞬だけ窓から有栖と瑠璃さんが手を振っているように見えた。そう僕が言うとみんな口を揃えて「ないない」と言う。
微かにエンジン音が残り機体の影は雲の隙間に消えていってしまうと僕たちの周りは必要以上に静かになる。
「行っちゃったね」
「だな。じゃが鏡、おれらも来週にはここを出るんじゃ。そん時は仁さん、見送り頼んじゃぞ」
鏡一郎とくまさんを見る。この二人もいなくなって僕一人しか残らないと思うと少しだけセンチメンタルな気分になってくる。
「分かりました。その時はまたこうやって見送りますよ」
僕はもう一度有栖達の乗った飛行機が飛んでいった方向を見る。
少しだけ高くなった空。ウロコ雲。日差しはまだまだ強いが確実に秋の足音を感じることが出来た。
それからまた僕はここにいる。
くまさんが乗った飛行機を見送るとそこには完全に僕一人だけ、一人きりになる。
先週よりさらに秋は色濃くしてカーディガンなんかを引っぱり出すほどだ。何となくジーアと話したくなって手鏡を取り出して開く。
「みんな行っちゃったね」
「ああ。僕は一人になった。というかみんな一人になった」
「私がいるわ」
僕の不安とは違いジーアは優しく僕に微笑みかける。その笑顔に元気を貰う。
「ジーア・・・そうだな。とりあえず有栖の言う通り僕一人で日本を守らないと。僕は一人じゃなかった。ジーア、君がいつも僕の傍にいる」
ジーアはさらに笑顔になって
「その通り。大丈夫、仁なら出来る。自分を信じて。私と魔法を信じて」
「分かってる。信じてるよジーアのこと。魔法だって」
僕は少し肩の力が抜けジーアと一緒に笑う。
と、何だか廻りに不穏な空気と視線を感じ、そっちに目をやると三人の女子高生の集団が僕のことを見てクスクス笑っている。
直ぐにその理由が理解で来た。なんたっていい歳した中年男が手鏡を見ながら笑っているんだ。端からみたらそりゃオカシイことに違いない。
僕は何てことない風を装って慌てず騒がずジーアに『また』とだけ言って鏡をしまい、そのまま高校生達の前を通り過ぎて行く。何だか姿が見えなくなるまで見られているような視線を浴びながら、これからのことをジッと考えようとした時だった。
「まさか・・・・これって。まだ夕方じゃないか」
僕は大急ぎで人影を避けた空港の端っこに向かい、一応周りを確かめてからステッキを出す。
「このところ静かだと思ったら・・・随分久し振りだな変身するの。それに一人になって初めてのドリーチェだ。明日もまた無事に朝日を見るために僕は変身しないとならない。そして世界と未来を守るんだ」
今までで一番の祈りを込めて僕はジーアに変身する。いつものようにピンク色の淡い光が体を包む。
その姿は日本を守る日本代表となった魔法少女ジーアへと。
私は躊躇なく空に向かって飛び立つ。そして意識を集中する。
「いた!そこから動いちゃ駄目なんだから」
あらためて眼鏡の位置を直してからドリーチェに向かって飛んでいく。
目の前には大きな夕陽が青い瞳に反射する。
それは決意を新たにしたジーアへの餞のような気がしてならなかった。
一年後。それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
みんな。また笑顔で会おうね。
何時しかジーアの姿は夕陽の中に溶け込んでいってしまう。
明日も明後日も私は朝日を見る。
ジーアの未来は始まったばかりだ。きっとそこに光りがあることを信じて。
『僕は魔法少女に変身する』〜終わり〜
ここで一旦区切りをつけます。
今まで読んでいただき感謝しかありません。
拙い文章でしたが最後までお付き合い。本当にありがとうございます。
さて。これからですがしばらく展開を組み立てたあと再開する予定です。
なぜか本当の最終話だけは書いてあるから。
それまでは酒でも飲みながら空想しています。
また会う日まで。バイバイ。




