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僕は魔法少女に変身する  作者: マナマナ


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魔法少女の夏休み 14

 ジーアが目を開けると藤で出来たゆったりとしている長椅子に横になっていた。慌てて起き上がって自分自身の体を確認する。

 ジーアのままだ。

 よかったと一安心。それから水着ではなくバスローブに包まれている。感じとしてどうやら下は何も纏っていないらしい。


 壁に鏡が掛かっていたので傍まで行き眼鏡を外し顔を覗き込む。薄らと両頬が赤みがかっているのが分る。


「二人とも力一杯叩いてくれたわね・・・痛かったんだから、もう」

 隣から美味しそうな匂いと共に笑い声が聞こえてくる。眼鏡をかけ直して扉を開けようとノブに手を掛けたところで話し声が鮮明に耳に入ってくる。聞くつもりじゃなかったけど、ついそのまま動けなくなってしまった。


「全く、何で急に変身解いたんだ?」

 ティーナね。さっきのことよね。

「きっとジーアのことだからグローと二人っきりってのが嬉しかったんじゃないかな」

 ミアン。変なこと言ってるような。

「まあ。中身は男だからな、ああ見えても」

 ブーアも何の話してるの?

「・・・あんなおぞましい物を見たの初めてでした。トラウマになりそうです」

 グロー?あれは不可抗力なのに・・・・

「やっぱ仁さんってこのくらいの女の子のこと絶対好きだよ」

「ティーナもそう思うのですか。わたくしもそんな気がしてきました。じゃなかったらやはり変ですもの。こういう言い方は失礼かもしれませんが、はっきり言ってオジさんです。なのに魔法少女になることに何の抵抗も無いどころか、むしろ喜んでいるようにさえ思えます。同じ男性でもミアンの場合は小学生ということもあって好奇心で魔法少女やってるって言っても納得出来るんです。でも神谷さんは一体どういうつもりなんでしょう」

「あたしはこの姿、全然嫌じゃないよ。可愛いし、それに楽しいし。ジーアって正直あたしより魔法少女楽しんでるって絶対」

「・・・まあ性癖は人それぞれいろいろあるからな。あたいは別にいいと思うけどな。仁さんだって今までちゃんと魔法少女としての役割をしてきたんだからな。ん〜ちょっと待て、こうは考えられないか?ジーアに変身さえしていれば自分自身がそういう存在になれるわけだからそれによって自分の欲求が緩和されているみたいな」

「でもブーア、またあんなことになったら・・・わたくし、ドリーチェよりも怖いと思います」


 ジーアは会話の一部始終を聞いてから要約してみた。そして至った結論。


「なになに、つまりこう言うこと?私がグローと二人っきりになったとたん、神谷仁の性癖が覚醒して暴走したってこと?何考えてんのあの人達。仁はそんな性癖一つも持ち合わせていないのに。何でそんな誤解をするの?」

 さらに聞き耳を立てていると

「まあ、グローが無事でなにより。ジーアの奴まだ寝てんのか?様子見てくる」


 ま、まずい、ティーナがこっち来る。

 ジーアは慌てて静かにまた藤の椅子に横になると同時にドアが開きティーナの足音がゆっくりと近づいてくる。


 そしてジーアの顔を覗き込んで

「ジーア、気分どう?」

 さっきまでとは違うやさしい声に答えるようにジーアは今起きたと言わんばかりの速度で瞼を開ける。

 それから寝起きっぽい声で(私、なに気を使ってるんだろう)


「・・・ティーナ・・」

「お!目覚めた。起きれるか?みんな待ってるぞ」

「・・うん、平気。私、迷惑かけたみたいね」

「全くだぜ。一体何があったんだ?急にぶっ倒れて」


 ・・・大体は知ってるくせに


「グ、グローから聞いてない?何かさ、よく分かんないことになって」

「大体はな。けどさジーアっていうか仁さんさ、ロリコン傾向があるのは分かったけどグローはまずいって、っていうか大変だな、そういうのって」

「・・・な、なんのことかな?絶対誤解だからそれ。私そんなことないし。へ、変身が解けたのだってジーアの勘違いだし。だから私は悪くない」

「まあ、グローには謝っといた方がいいと思うな。あれくらいの年頃の女の子にとって性ってのは微妙だからさ」

「わ、分かってる・・・私、違うって言ってるのに・・・ねえ、ティ・・」

「それより腹減ったろ。ジーアが起きるまで待ってたんだ。準備すっから」


 ティーナはそう言うと行ってしまう。後ろ姿をジーアは見送ってから

「やれやれ・・・私が魔法少女になるのってそんなに変なことなのかな」

 ジーアはあらためて起き上がるとみんなの待つ部屋に向かった。


 料理が出てくる間にジーアはさっきの説明をジーアなりにしてそれからグローに謝る。

 グローは最初はブーアの影に隠れていたが誤解と分かると出てきて和解の握手をした。みんなもそれでやっと納得して解決したと思われる。


 それからみんな席に着く。

 目の前には眩いばかりのシーフード料理が並べられている。これをティーナ一人で作ったと思うとそれはそれで驚かされる。


「いやいや、私、料理好きだし。それに後半はみんなも手伝ってくれたからな」

 なんて言っている。でもとにかく素晴らしい。内容を説明しよう。


 まずホタテのカクテルがあり、マグロのカルパッチョ、イカとタコをふんだんにあしらったサラダ、それからキンキで作ったアクアパッツァにシーフードピッツァ。さらにミアンご希望のエビフリャア(この時知ったのだが瑠璃さんの出身地は名古屋だそうだ)もとい海老フライ。これにはティーナ特製のタルタルが添えられている。なかなか圧巻である。


「うわ〜美味しそう。早く食べようよ」

「焦るなミアン。よっし、じゃあそれぞれ飲み物を持って」

 ティーナの声にみんな飲み物を手に取る。ジーアとグローとミアンはペリエを取り、ティーナとブーアは白ワインを片手に

「みんな持ったな。よっし、乾杯はリーダー頼むよ」

「分かりましたティーナ。それではわたくしが代表して。本日、魔法少女による魔法少女達の夏休みがとても有意義になったこと、それから海の生き物に感謝して乾杯します」


 みんな一斉に『乾杯』と言ってグラスを合わせる。


「か〜美味い。このワインなかなかの上物だ」

「ウンウン、確かに美味い。鼻から抜ける香りがいい。さすが金持ちは違うな」

「ずっと我慢してたんだ。ブーア今日はとことんいくか」

「いいねえ、今夜のあたいはひと味違うぞ」

「ふふふ、それに料理はみんな酒に合うようにアレンジされているからな」

「なるほど、それで自分から作るって言い出したわけだ。意外と悪どいな」

 と、まあティーナとブーアはこんな会話を展開している。


 ジーア達はというと

「お、美味しい、これ凄く美味しい」

 ジーアはホタテを一口頬張っていた。

「信じられません、ティーナの料理、家の料理人達に匹敵する程です。認めます、美味しいです」

 グローはアクアパッツァを一口味見程度に口に流し込んで感想を言ってから普通に食べ始めた。

 他の料理も納得しては口の中に入れていった。


「そうでしょ、そうでしょ、美味いだろ。実家が店やってからかな、私も割と手伝うの好きだし、でもまあ気に入ってもらえてよかったぜ、特にグローにはな、何たってお嬢様だから」

「だからそう言ってます。いっそのことミュージシャン目指すの止めて、こっちの道に入った方がよろしいと思いますが」

 グローの言葉にジーアも乗っかって

「うん、うん、それっていいと思う。こんな美味しい料理食べたらなんだか幸せな気分になるっていうか、ティーナの料理ってお腹もだけど心も温まってくるみたいなの」

「そうか、ありがとなジーア、グロー。けどな、それも考えたこともあったけど、今は店は弟が継ぐことになってるからな」

「だったら瑠璃さんは瑠璃さんで出せばいいじゃない」

「そう簡単にいうなってジーア。私だって店やるんだったらちゃんと修行もしたいし、それにな、結構かかるんだ、お金も」

 ティーナは持っていたグラスを空けると今度はビールを空けて飲み始める。

「まあ、そのことはおいおい考えるとして、今は魔法少女の食事を楽しもうぜ。こんな話、湿っぽくなるだけだし。つうことで、もう一回乾杯!」

 ティーナはビールをぐいっと仰いだ。


「ティーナも色々考えてるみたい。そだね、今は魔法少女だからその話はやめて、ね。さあ、今度はティーナ自慢のタルタルで海老フライいこうかな」

「そうですね。わたくし無神経でした。だったらジーア、わたくしもそのご自慢の品、いただきたいです」


 ジーアとグローは海老フライの前まで行くと、案の定そこには一番の指名者ミアンが三本目を手にウスターソースをかけた上に、さらにタルタルをかけていた。


「ちょっと、食べ過ぎじゃありませんかミアン。みんなの分はあるんでしょうね」

 既に半分口に頬張ったまま

「らにいってんの。ははいもほかち」

「え?なに?だから頬張り過ぎだから」

 ジーアに言われ残りをまるでシュレッダーに通す紙のように残りの半身を全て口の中に滑り込ませて両頬を膨らませモグモグさせてからゴックンすると


「はあ〜美味しい!もう一本」

 ミアンの手がさらに伸びたところで横からグローがフォークで押さえ

「な、なにするのよグロー」

「他の物も美味しいわよ。そっちも食べたらいかが?」

 ミアンはフォークで応戦し始め

「あたしはこれがあればいいの。グローこそ他に行ってよ」

 グローはさらに力を込め

「わたくしの言葉聞こえませんでしたか?そんな欲張りだと後悔しますけど、いいのかしら?」

 ミアンも負けじと

「あたしは今これを食べないと後悔するの。あたしのリクエストなんだからあたしがいっぱい食べても問題ない」

 そうして何時しか二人の目には火花が散り始める。

 やり取りをずっと見ていたジーアは溜息をつくと同時にキトの言葉を思い出す。


「これも生きてるから、だからこうやって喧嘩も出来るし、嬉しさも楽しさも共有できる。けど私が今しなきゃならないこと、それは」


 ジーアは二人の横から海老フライを取る。二人は呆気に取られて見ているとタルタルをたっぷりとかけて自分の顔くらいある大きな海老フライを頬張った。


「お、美味しい・・美味し過ぎる。今まで食べた海老フライの中で一番美味しいかも」


 ミアンとグロー、二人が揃って

「急に入ってこないでよ」

「急に入らないでいただけます」

 と同時に言った。


 その姿がジーアには可笑しくて


「あのさ、今を楽しむならやっぱこの海老フライは絶対食べないといけないの。けどね他の料理だって食べて初めて全部が楽しくなるの。ミアンだけこれしか食べなくて、他は海老フライだけ食べれなかったら私達の旅行はみんなの楽しい思い出にはならなくなると思うの。だからさ仲良く食べよ。海の世界の命を私達は今いただいているの。全部の料理を食べないといけない気がするの。それが私達とキト達の友情の証だとも思うから」

 ジーアの言葉を聞いて二人はお互いの顔を見つめ合う。

 そしてどちらともなくフォークを下ろすと

「その通りですわ。わたくしとしたことがつい子供みたいにムキになってしまって」

「あたしもムキになってた。独り占めするつもりはなかったんだよ。ほんとだよ。美味しかったから、つい・・・・」

「分かってくれたらそれでいいの。さ、仲良く食べよ」


 二人ともコクンと頭を振る。

 と、その横から少し顔が赤くなったブーアが残っていた二本の海老フライを手づかみで取り、一つにはタルタルを塗り、もう一つにはソースをたっぷりと付け、豪快に一口で頬張った。

 

 その光景をグローとミアンはキョトンとした顔で見ている。


「うん、美味い美味い。うまいなあこのエビフリャ。ティーナ最高!」

 そう言って平らげた後、今度はサラダの方に歩き出す。その片手にはテキーラの入ったショットグラスが握られている。何時しかティーナとテキーラを飲み始めていた。しかも勝手に。


「・・あ・・あ・・あたしの・・海老フライ・・・・」

「ミアンは食べたからいいでしょ・・わたくしなんて一口だって・・・・」

「酔っぱらいだ・・・ブーアはただの酔っぱらいだ・・・嫌いだ酔っぱらいなんて・・・」

「勝手にお父様のお酒に手を出して・・・許せません。こんなことあってはならないのです」

 グローが半分泣きそうな表情になって魔法を使いそうな素振りを見せたのでジーアは慌てて自分の海老フライの残りをグローの口に突っ込んだ。


「・・・ジ・・ジーファ?」


「これ、食べて。私はもう一口食べたから。だから半分こしよ」

 ジーアはそう言ってニッコリを笑った。

 グローはなんとか食べ終わる。

「・・・ふぅ・・・美味しいです」

「でしょ。さ、他も美味しくいただこうよ。ティーナ、最高だね」


 ティーナの料理は見る見るなくなっていった。


 そして


 ついに本日の最後において最大のイベントが始まる。


 みんな仲良く・・・のはずもなく当然ジーアとミアンは男性用の露天風呂に案内されることになった。

「やっぱりみんな冷たいよ」

「まあまあ。でもさ・・・ん〜最高」


 ジーアの目の前にはすっかり夜になった海が広がっている。波が穏やかなのか海面には月が映り込んでかすかにその姿をユラユラとさせていた。

 この頃にはジーアもやっと自分自身の裸に慣れつつあった、が、まだ凝視することはできない。それでも今を満喫していることに変わりなかった。


 ジーア・・・最高でしょ・・・これが温泉だよ・・・一緒に気持ち良くなろうね・・


 あと少しで楽しいこのヒトトキも終わる。今夜はドリーチェだって休息しているんだ。

 

 こんな静かな夜・・・ずっと世界は平和ならいいのにね・・・・


 ジーアの視界は湯気で翳んでゆく。


 それは長い長い夢の終わりを告げているみたいだ。


「ゆっくりした・・・さあ・・・目を醒まさなきゃね」


 いつかは終わってしまう。でもまだ終わらない。夢と現実。そして未来。

 そう。私達は未来を守らないとならない。


 アラームの音が響く・・・さあ目醒めの時間。

いや〜長かったような・・・海の話。

読んでいただきありがとうございます。

今日は春分の日。いろいろ動き出す季節ですね。

新学期に新年度などなど。

そして・・・この物語も次回で一旦幕を降ろさせてもらいます。

中入りってことですかね。

投稿して大体半年くらい。あと一話です。

次回は絶対読んでくださいませ。よろしくお願いします。

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