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僕は魔法少女に変身する  作者: マナマナ


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魔法少女の夏休み 12

「みんな楽しそう」

「ジーア、わたくし達も楽しみましょう」

「そうだね。何かさ、体まで軽くなったみたい」


 みんな一斉に踊りだす。絵本で見た竜宮城のみたい。華やかで賑やかで自分達がまるで絵本そのものに入り込んでしまったような感覚になる。

 ジーアは今を楽しんだ、精一杯。

 ふと隣を見るとティーナには鮫がいて何か言っているようだったが、そんなことはジーアの耳には入らなかった。


 ねえジーア。私ね、何だか分からないけどとても楽しいの。それって一つは体も心も軽くなったから。それにもう一つ、私の心はとても温められたから。ジーアの代わりに私がジーアの心を温めてあげる。

 願い事、きっと見つかると思う。

 だから私を通してジーアも楽しんで。今だけでもいいから。それに私、あなたのことだんだん・・・・


「のう」


 私ね、あなたのこと・・・・


「のう、ジーア」

「・・・・・・」

 ジーアは一旦思考を止め

「・・・・何かしら・・・キト?私、今・・・・」

「そろそろお開きになるだろうからの、ちょっとよいか?」

「・・・・はい・・何でしょう」


 ジーアはキトに連れられ人気のない岩場に連れて行かれた。

 ジーアはドキドキしていた。

 だって海の長だよ。さっきのキスでいきなり王子様に変身して、け、け、結婚とか申し込まれたらどうしよう、なんて・・・ね。


「ほれ、この奥を見てみ」

 ジーアは妄想にボーッとしている。

「ジーア、聞いとるのか?」

 ジーアはじっとキトのことを見つめている。


 キトは元の青い色に戻っている。いつになったら王子様になるのかしら?


「しっかりせんか、この奥にあるものを出すんじゃ」

 ジーアは言われるがままに手を伸ばす。ちょうど握りこぶしが一つ入るくらいの小さな岩の窪みに手を入れた。すると奥の方でつるりとした物を指先で感じた。

「・・・何かある」

「出してみろ」

 慎重に手を抜き取る。それは枝豆一粒くらいの大きさのガラス玉のようだ。

 

 まさか結婚指輪的な何かなの?


「どれ、無事取れたかの。それはワスからのプレゼントじゃ」

 やっぱり。でも、ん?ちょっと待って、それって、それって、駄目、駄目よ、駄目駄目。

 ジーアは急に冷静になって深呼吸して申し訳なさそうに

「・・・キト」

「何じゃ?」

「ご、ごめんなさい!」

「・・・何を言っとる?」

「ごめんなさい!私、その、い、いろいろで、キトとは、け、結婚出来ないの!」

 ジーアはそう言って頭を下げた。その姿を見てキトは大笑いをした。

「ふぉふぉふぉふぉふぉふぉ!ジーアとワスが?結婚?一体何のことじゃ。それよりそいつを光に翳してよく見てみぃ」

「え?」

 ジーアは手の中の物を今度は指先で持って海水に透かしてみる。すると不思議なことにそのガラス玉は海の中の光に反射して薄らと緑色に光り始める。

「うっわ〜、キレイ・・・これって何なんですか?」

「これはワスが先代から貰ったもんじゃ。先代も人間から貰ったと言っておった。何でもこうやって光に翳すとそれに反応して光を放つと。これは人間が作った物じゃ。ワスが引き継いで今度はワスからジーア達魔法少女に友情の証として受け取ってもらいたいんじゃ」

「・・・いいんですか?そんな大事なもの私達が貰って」

「よいよい。ワスが貰ってもらいたいと思ったからいいんじゃよ。ワスもこの先魔法少女に会えるかどうか分からん貴重な体験を貰ったからの」

「私達だって、この先海の長に会えるなんてことあるかどうか分からないです」

「だから約束じゃ。もしこの先、ワスでない新しい長に会ったら今度はジーア達からそれを渡して欲しい。人間と海の生き物を繋ぐ証として。お互い捕るか捕られるか、という間柄じゃが同じ地球で生きとることに変わりないからの。生き物としての友情の証として。どうじゃ、出来るかの?」


 ジーアはその淡い光を見つめる。証・・・友情・・・夢のようなことみたい。


「生き物としての友情の証・・・そんな大事なこと私に出来るかしら?」

「なに。そんな難しく考えんでもええ。その時が来たらでよい。それまでは思い出の品としてジーアが持っていればよい」


 ジーアは大事に手で包み込んでからキトの顔を真正面から見る。


「キトが望むなら、私が預かります。私達は確かに会ったという証として。だから、うん、私、任されました。またこの世界に来ることが出来たなら、きっと今度は私から次の長に渡します」

 その言葉にキトは満足そうに笑った。

「ふぉふぉふぉ。ジーアよ」

「はい?」

「そなたに言っておくことがある」

 ジーアは無言のまま頷く。

「これからこの先、魔法少女達がいかなる運命を辿ることになったとしても光が必ずあることを信じて進んで行きなさい。辛いこと、悲しいこと、嬉しいこと。これはみな、生きているからこそ味わえる最高の贅沢だということを覚えておいて欲しい。ワスには少しだけ分かるのだ、この世界の未来が。間違ったことには目を背けず立ち向かっていきなさい。この世界すべてを愛せること。ジーアには出来ると思えるのじゃ」


 ジーアは何だか気恥ずかしくなる。顔が熱くなってゆく。


「そんなこと・・私は神様じゃなくて、魔法少女なの。でもキトの言葉は信じる。生きていくこと、それこそ最高の贅沢なんだって。私達そろそろ帰ります。酸素も随分残り少なくなってきたから」

「そうか。気いつけてな」

「はい。私、今日という日絶対忘れない。忘れたくたって忘れることなんてできない。素敵な思い出、ほんとありがとう」

 キトは笑っていたが、何か言いたそうにしている。

「どうしたの、キト?」

「あ〜なんじゃ、その。こんなワスがいうのは非常に、何と言うか・・・・」

「まだ何かあるなら言ってよ。気になるじゃない」

 キトはオホンと咳払い(エビもするんだと思いながら)をして

「その・・・ジーア、別れのキスをして欲しい」

 思わず笑ってしまうジーア。

「え?そんなこと?」

「そんなことなもんか。ジーアのキスは心が温かくなって幸せな気分にしてくれるんじゃ。こんな老いぼれでも、じゃ!」

「もう・・・いいよ、分かった。キトのお願い聞いてあげる」

 ジーアはそっと、やさしくキトにキスをする。キトはまた体を真っ赤に変え

「うむ。確かに受け取った。ジーアよ、そなたの未来に幸あれ」

「うん。じゃあ、今度こそ行くね。さようならキト、ありがとう」

 ジーアは仲間の元に向かった。


 ジーアの後ろ姿をキトは見ている。そして

「そなたの、いや、そなた達の未来、ワスには闇しか見えん。けどきっと、ジーア、そなたなら乗り越えられるであろう。頑張れ、魔法少女達よ」


☆★☆★☆

 

 ジーアはグロー達の元に戻った。相変わらず皆は楽しんでた。


「あ、ジーア、今までどこに行っていたのですか?探しましたよ。呼び掛けても返事もしないから心配したじゃありませんか」

「ごめんグロー、ちょっと、ね」

「おいおい何やってたの。ちょっと何?」

「だからそのことは後で、ね、ティーナ」

「ねえねえ酸素玉が小さくなってきたんだけど」

「うん。だからもう帰ろう、ミアン」

「だったら、あたいはみんなに挨拶したいな。特にここに連れてきてくれたイルカ達に」

「そうだね。そうしよう。私もブーアと同じ。ラグに会ってさよならしたい」


 それから魔法少女達はみんなに別れの挨拶をする。

 ラグもガイアーンも他のみんなも気持ちよくさよならをしてくれた。

 最後にグローが魔法少女の代表としてキトに挨拶する。

「ありがとうございました。わたくし達を受け入れて頂いたこと感謝します。海の中の世界を知ることができて、あらためて世界の成り立ちを教えられました」

「ふぉふぉふぉ。ワス達も珍しい客人に会えて楽しかったでな。また会えることができたらと思っておる。みなすゎん、達者でな」

「はい。長も。そしてみんなも」


 思い思いに手を振り、海上に向け泳ぎだす。


 その光景はだんだん小さくなり、どんどん見えなくなって、遂には完全に見えなくなってしまう。目の入るのはいつもの海の中。見上げると光は強さを増していく。

 ジーアはあのガラス玉を出して透かしてみる。するとさっきよりもずっと強く光っている。この海の色のように淡く透き通っている。


「あら、ジーアそれってもしかしてウラングラスじゃありませんか?」

「ウラングラス?グローは知ってるの?」

「ええ、家に同じものがあります。紫外線に反応してそうやって光るんです」

「紫外線・・・・そうなんだ。私知らなかった」

「どうしたのこれ?」

「うん、実はキトから貰ったの。キトも先代から貰ったって言ってたから古いものだと思う」

「確かウラングラスの発祥は古代ローマからと聞いたことがあります」

「こ、古代ローマ?そんな古いの?」

「ええ。偶然の産物だったそうです。ガラスには名前の通り極少量のウランが含まれています。しかし体には全然害がない程度のものです。今の時代はこう言うと少し過剰に反応してしまいがちですが、ウランだってこのように平和利用していれば世界は平和だと祖父が言っていました」

「そうなんだ・・・ウランが」

「ところで、どうしてジーアだけそれを貰ったのかしら?」

「どうしてって、ん〜そう言えばどうしてだろ。分かんない。ただキトは言っての。私達魔法少女とキト達海の世界との友情の証だって」

「友情の、何だかそう言われると海のものが食べにくくなりますね」

「そっか。そうかも」

 ジーアとグローは顔を見合わせて笑った。


 海面が近づいている。海を通して薄らと空が見える。赤い色の反射している。


 ジーアはウラングラスを無くさないように胸の間に入れた。


「これって私が持っててもいいかな」

「だってジーアが貰ったんですから当然管理はジーアに決まっています」

「うん。分かった。グロー、ありがとう」


 後ろから声がする。


「ねえねえ、さっきから二人っきりで何話してるの?もしかしてご飯の相談?」

「ミアン、お腹空いたのね」

「うん。だって海老フライが食べたいってずっと思ってたの。だからさ、思いきってご飯はシーフードづくしがいいなぁ」

 ジーアとグローは思わず顔を見合わせて苦笑いする。

「へ〜ミアンはシーフードを希望ですか」

「さっきまで海の世界にいたのに?ミアンの目にはみんな食べ物として映ってたの?」

 

 今度はティーナが会話に入ってきた。

「だったら私に任せとけ。こう見えて料理は出来る方なんだ」

「ほんとティーナ。あたし絶対海老フライは譲れないから」

「ならティーナ様特製タルタルも作ってやる」

「やったー!!!期待してる。あたし先行くね」

「お、私も。なあグロー、食材ってあるかな」

「多分、ある程度はあると思います」

「そっか。だったら先に行ってキッチン使わせてもらうけどいいか?あと、食材足りなかったら買いに行ってくる」

 グローは少し考えてから

「もし買い物が必要なら別荘を出たすぐのところにスーパーマーケットがあったと思います」

「オッケ。じゃあ私とミアンで準備しとく。ミアン手伝え、行くぞ」


 ティーナとミアンは先に行ってしまった。またまたジーアとグローは顔を見合わす。

「ところでブーアは?」

「あら・・・そう言えばいませんね。どこに行ったのかしら。呼んでみましょう」

 グローはブーアに呼び掛ける。するとすぐにやって来て

「悪い悪い」

「一体どこにいらしたのかしら?」

「実は、これ捕ってた」

 ブーアの手にはウニとサザエとアワビがあった。しかも上半身を金属に変えているからウニの刺なんか全然平気みたいだ。

「いや〜この辺りは海の幸が豊富だな」

「ブーアったら、そんなことしてたんだ」

「なあジーア、このまま焼いて食ったら美味いぞ」

 ウキウキのブーアにグローが『コホン』と言ってから

「ブーア勝手に捕っちゃ駄目なんです。許可を取らないといけないんです。この場合密猟になります」

「グロー・・・少しならって思ったんだけど、やっぱ駄目?」

「これはみんなが決めたルールです。規則は守らないといけないんです」

 ブーアは急にしょんぼりして

「そうだよな・・・・すまん、知らなかったとは言え・・・つい浮かれて・・・戻してくる」

「しかし」

「?」

「この辺は我が水無月家の所有するビーチです。所有者として今回だけ特別に許可します」

 この言葉にブーアは見る見る笑顔になって

「さすが本物のお嬢様は懐が深い」


 ジーア達が海から飛び出すとすっかり空は赤く染まっていた。


「随分長いこといたんだな」

「ええ。日が暮れていきます」

「キレイ・・・素敵・・・こんな夕陽、魔法少女じゃなかったら絶対味わえないね」

 夕陽は三人の姿を真っ赤に染めている。それだけじゃない。見るもの全てが赤く染まっている。


 ジーア。見えてるかな。

 言ったよね。海に沈む夕陽。絶対気に入るって。

 私もね、初めてなんだ。こんなきれいな夕陽見るの。

 世界ってこんなに美しい瞬間があるって、気付かないときっと一生気付かない。

 けど、ジーアのおかげで知ることが出来たの。

 海の世界のことも知れた。魔法少女って凄いね。ほんと凄い。


「おいおいジーア、聞こえてる?」

「え?な、なに、ブーア?」

「さっきから呼んでんのに全然反応しないから」

「あのね、夕陽がきれいだなって。私知れてよかったって。ごめんね、聞こえてなかった」

「ロマンチストだなジーアって、っていうより仁さんってロマンチストなんだ」

「ちょっとブーア、今はジーアなの。私は魔法少女ジーアなの。だから・・・その・・・」

「かかか。ジーアでいることがほんと自然なんだな。まるで本当の自分自身のように」

「・・・べ、別に否定はしない。今はジーアだからジーアとして人生を楽しんでいるの。そうじゃなかったらさ、ん〜なんて言ったらいいかな・・・えっと・・・」

「いいっていいって。それはジーアと仁さんの問題だし。それよりあたいも腹減った。だからもう行こう、な」

「・・・うん。ねえ、グロー」

「何かしら?」

「今日はほんとありがとう。こんな素敵な体験できたのも全部グローのおかげ」

「何をそんな分かりきったこと。でも一つ言わせてもらうなら、これはわたくしがお嬢様だからとか、仁さん達が一般人だからとかは関係ありません。だって今のわたくしたちは魔法少女なのですから。感謝するなら彼女達にです。そうは思いませんか?」

「確かに。それもそうだね。魔法が使えるからこそ私達素敵なことできたんだもんね。でも言いたいのグローにもブーアにもミアンもティーナもみんながいてくれたから、だから・・・」

「分かりました。そういうことなら素直に受け止めます。そしてわたくしもお腹が空いてきました。ティーナは一体何作ってくれるのかしら。さあ、帰りましょう、ジーア、ブーア」

 

 別荘に向かって三人は飛んでいく。

 背中には大きな太陽の大きな夕陽を浴びながら。

 世界はどこまで行っても赤く染まっている。そんな気がしてならなかった。

またまた13日の金曜日です。

読んでいただありがとうございます。

三月にしては雪が降ったりと春が遠く感じます。

それでもいつかは風は南風になる。

早くコートを脱いでお散歩したいです。

それは解放の瞬間。

冬も好きですが季節の変わり目って良いものですね。

気分の昂りを感じます。この勢いで書こう。

また火曜日にお会いしましょう。

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