屋敷にて
第四十四話 ノートの影響
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しんしんと降る雪を見てため息をつく。いつもならこの窓から見える雪景色の場所でヘラと一緒に遊んでいたのに。
オレは目に浮かぶ涙をゴシゴシと拭った。
「ムジナくん……そんな窓の側にいらっしゃいますと、風邪を引いてしまいますよ」
バルディが心配してくれている。だが、この胸の悲しみが癒えることはない。
「ムジナ、どうしちゃったのよ?あの子が窓から入ってくるなんて、よっぽど動揺してたのね」
「その事ですが……実はヘラくんと喧嘩してしまったようなのです」
「はあ!?ヘラが!?あの子がムジナを悲しませるなんてありえないわ!」
リメルアが驚きのあまり声を上げる。しかし事実なのだからしょうがない。
「ちょっと懲らしめてこようかしら……」
「どさくさに紛れてやめてください。殺そうとの間違いじゃないですか?」
「バルディ、アンタ……言うようになったじゃない……」
リメルアが湿っぽい視線をバルディに向ける。その様子を窓の反射で見ていたオレはもう一度ため息をついた。
「これは……最終手段の出番かもしれませんね」
「最終手段?」
「はい」
なにが最終手段だ。誰もヘラがやること知らないんだ。もうオレを巻き込まないで。前線に立たせないで。
「____」
「……ムジナ」
「!」
振り向く。そこにはお兄ちゃんがいた。予想はできていたが、やはり嬉しいものは嬉しい。オレは目を輝かせて駆け寄った。
「お兄ちゃんっ!仕事は?」
「よしよし。ごめんな、ムジナ。一段落ついたからな」
疲れが混ざった声だ。お兄ちゃんだけが大変な目に遭っている……。あの女の人が……あの人が「この魔界」を見捨てなければお兄ちゃんがこんな目に遭わずに済んだのに。
「どうして?死者は絶えず来るんでしょ?」
「あ……それは……」
お兄ちゃんは顔を曇らせた。
何かあったのだろうか?
「何かあったの?」
「……ご説明いたします」
バルディが前に出る。リメルアは顔をそむけ、お兄ちゃんとバルディは困った顔をしていた。
「今……何かの力が働き、魔界に人間の魂が来ないようになってしまっているのです」
「何かってぼかす必要ないでしょ。ノートよノートっ!」
バルディの言葉にリメルアが面倒だわと吐き捨てた。
「ムジナ……ノートが直接手を下してきた。俺たち大人はこれからノート討伐のために動く。動く前に帰ってきてよかった」
「動くって……それに、お兄ちゃんたちが戦うの?ノートはすっごく強いんだよ!?」
「子どもたちに無茶はさせられない。ごめんな、今まで動いてやれなくて……。ノートの危険さはよく伝わってきている。だからこそだ」
「っ」
「私はヤーマイロのお礼参りだけどね。私の可愛い部下をイジメてくれたお礼はキッチリ……いえ、何倍にでもして返さないと」
サメラのお礼参りのためにヤーマイロは塔に乗り込んだ。そして圧倒的な力の前に敗北してしまったのだ。
「……そういうことだ。ムジナ、ヘラたちの手伝いをしたい気持ちはわかる。だけど……やっぱりムジナを戦わせるわけにはいかない。それに、魂の行き来を妨害したとなれば、それは死神王の俺に対しての立派な宣戦布告だ。許すわけにはいかない」
……なぜノートは魂に目をつけたんだろうか?
そういう考えが頭をよぎった。敵は少ない方がいいのに、なぜわざわざ増やすような真似をしたんだろう?
「お兄ちゃん……」
「あと……何か嫌な予感がする。ムジナには人間界で黒池に保護してもらったほうがいいと思ったんだが……どうやら人間界に行くことができないみたいなんだ」
ノートが死神の能力を徹底的に封じてきた……!やっぱり狙いはオレなんだ……サメラの件からおかしいと思っていた!ノートはオレをどうしたいの?氷の魔法はありがたいけど……そのせいでヘラと喧嘩して……。
「じゃあ……黒池とも話せないの?」
「ああ……残念ながらな」
「本当に残念よね。黒池、今度こそ血を吸ってやろうと思ったのに」
「そんなことしたら黒池も吸血鬼になってしまうよ、リメルア」
「あら、良いじゃない。吸血刑事。本格的に裏でしか動けないようになるわよ。多分」
多分って……。……吸血鬼になればみんな死ななくて済むのだろうか。シフも……可能性はあったのだろうか。もうシフやハレティのような犠牲者は出したくない。だからそれも良いんじゃないだろうか……。
とりあえずキリルさんのことは内緒にしておこう。黒池の血を吸う気満々なリメルアに、同じ境遇のキリルさんのことを言ったら大変なことになる。
「とにかく。変なことはしないこと。いいね?」
「…………うん」
「いいね?」
「うん……」
それ以上は何も言われなかった。きっと行くだろうな、と思っているからだ。
微笑んだ三人は部屋を出ていく。背中を見送ったあと、オレはもう一度窓に向かった。
「……っ……えぐっ……ひぐっ」
涙が止まらない。なんで?なんでなの……?
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「ただいま」
「お邪魔しまーす」
巫女から逃げたあと。俺たちはイリスの俺の家に来ていた。まずは落ち着いて対抗策を考えるべきだということで、だ。
「……ん?」
やけに静かだ。いつもなら姉ちゃんが「おかえりなさい、ヘラ!今日は何があったの?お姉ちゃんに教えてよ」と笑顔で飛び出してくるのに。
「……ヘ……ラ……」
苦しそうな声が聞こえ、玄関から先へと急ぐ。そこでは……。
「姉ちゃん!!?」
姉ちゃんが倒れていた。何者かの攻撃を受けたのか、お腹から血が出ている。
……血の気が引いた。俺は混乱し、バタバタと救急箱を探しに行った。
「お、おい、ヘラ!」
「姉ちゃんがっ……姉ちゃんがっ」
「落ち着け!治療は魔法が使えるだろ!」
「!」
そうだった。焦りすぎて忘れていた。俺は姉ちゃんの側に座り、手をかざして詠唱を始めた。
「うん……よし、よし。傷口も治まってきたな……」
「みなさん、家が荒らされていることに違和感を覚えないのですか……?」
レインの横でスグリさんが呆れる。姉ちゃんから目を離し、周りを見渡す。本棚は倒れ、壁には何かが焦げたような跡があった。どう見ても誰かが争った形跡だ。
「あ、つい……。……でも、何を目的にこんな事を?」
「……起動キーよ……ヘラ」
手元で姉ちゃんが呟いた。
起動キーってことは……まさか!!
「っ!」
「あっ、おい!?」
急いで階段を駆け上がった。寝室のベッドの頭の方にチェストがある。そこに隠していたんだ。最近は魔法系が使えなくなったりと不安な状態になっているのでアナログな方法に切り替えたのだ。このことは姉ちゃんにしか伝えていないのに……。
「無い!!」
無いというかチェストが真っ二つにへしゃげていた。剣で斬ったというよりかは殴ってブッ壊したといった方が正解だろう。確実に無くなっていてもおかしくなかった。
「クソッ……!」
悔しい気持ちを抑え、姉ちゃんの元に戻る。姉ちゃんはレインとスグリさんによって脚が一本折れた椅子に座らされていた。
「……誰にやられたんだ?」
部屋を見て、姉ちゃんに向き合う。怒りからなのか、とても静かな声が出た。レインやスグリさんも見守るなか、姉ちゃんは答えた。
「それは……ハレティよ」
……と。
最終回に続く!!
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




