新たな敵
第四十二話 いざ塔へ
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「あった」
天井に大きな穴が開いている。ここはヘラの家だ。魔王城の倉庫から拝借してきたテレポート用のマジックアイテムでここまで来た。オレはポッキリと折れたヨジャメーヌを手に取り、早速修理作業に取り掛かった。
「どうやったらこんな折れ方するんだ……」
複雑骨折のような折れ方をしている。隕石でも落ちてきたのかというレベルだ。まぁおおかたこの穴の犯人がやらかしたのだろう。
幸い、ここには物が揃っている。ヘラが自分でも鍛冶をしてみたいと言ったときは驚いたが、その時に揃えた一式があるのでわざわざ工房に戻る必要がないのだ。
「せっかくだ、強化もしてやる。とにかく早く終わらせよう。ノートをブチのめしてやらないとな」
カーンカーンと快い音がする。
この音、久しぶりだ。こうしている間は心が落ち着く。この世界の大変なことさえ忘れられてしまいそうだ。
ガチャと音がし、振り向いた。そこにはメノイがいた。ヘラのお姉さんだ。相変わらずのパジャマ姿だった。
「あら、カリビアじゃない!いつの間に外に出られたの?」
「ついさっきさ。ヘラの剣を直そうと思ってね」
「第一に考えてくれてたのね。ありがとう」
ニコ、と笑う。普通の男ならこのサキュバスの笑顔に惑わされてしまうだろう。だが、オレはただの友達。そんな手には引っかからない。
「ヘラたちはどこにいるの?」
「あ……それは……」
「……。また戦いに行くのね」
悲しそうに呟く。そりゃそうだ。魔界は広い。だが、なぜピンポイントで自分の弟が狙われなければならないのか。怒りの矛先は神に向けるしかない。
「止めても止まらないだろうけどな」
「わかってるわよ。何度も見てきたんだから……」
スススと隣に来て両手をオレの肩に乗せる。柔らかいものが当たり、オレは彼女を退けた。
「仕事中だ」
「つれないわねぇ」
「ヘラの大事なヨジャメーヌを直してんだよ」
「わかってるわ」
夢を自由に行き来する夢魔。それがサキュバスとインキュバス。積極的にオレにアタックしてくるのは、もしかするとオレの真実を垣間見てしまったからかもしれない。いつから知っていたのだろうか。……彼女はオレを慰めるつもりでやってくれているのだろうな……。
「ところで食事はしたの?お風呂は?捕まっていたのでしょう?」
「問題ない。オレはマジックアイテムですべて済ませた」
「はぁ……。あなたってば、いつもこうなんだから。それが終わったら、お風呂入りなさい。料理は……うん、私が作るわ」
「ありがたいが、無理すんなよ」
「私だってちゃんとできるんだから。今までヘラにやってきてもらったんだもの。今回からは私がやるわ」
「ふ……楽しみにしているよ」
再びカーンカーンと音が鳴り響く。
鍛冶仕事こそは魔法を使わないが、作り上げたものは想いという魔力を帯び、手にする者を必ず強化するだろう。誰が作ったのかは関係ない。
だけどこれだけは覚えていてほしい。
……これを贈った相手はあなたのことと勝利を考えて作ったのだと。生きていてほしいから作り、届けるのだということを。
「……ふぅ……。…………大きな穴だ」
天井を見上げる。そこにある穴は、信用していた人たちに裏切られてしまったオレの心と同じように思えた。
感じているか、ノートよ。この虚無感を。無力感を。後悔を。怒りを。悲しみを。辛さを。これは全てお前に与えられたものだ。オレをこの時代に生き返らせてくれたことは感謝する。だが、目的と行動は許せない。
もしお前を倒したとして、同時にオレも死ぬとすれば本望だ。鍛冶屋は戦わない。戦う者の背中を押し、精一杯の援助をしてそして共に勝利を喜び合うものだ。もう過ぎ去った人間はこの世界にはいらない。ノート。お前もそう思うならさっさと手を引くべきだ。オレは怒っている。お前のせいで人間界も魔界も混乱してしまったのだから。
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エメスに到着した。ノートがいる塔がある街だ。集中して魔力を探査するが、他のメンバーの魔力は感じられない。一番乗り!というやつだ。
「エメスは少し変わったのですね」
隣を歩くスグリさんが感嘆の声を上げた。
「遠征とかはしてなかったのか?」
「はい。ずっと戦いに向けて準備していましたので、そこまで手が回りませんでした。なので巡回が不十分というのもあり、現在対策を練っております」
「塔の存在は?」
「それは存じております。さまざまな報告を受けていますので。……吸血鬼リメルアの部下、ヤーマイロの報告も受けています」
「じゃあ強さのことは?」
「それも存じております。ノートは一筋縄ではいきません。塔の力も得て、強化されているものかと考えております」
「塔の力?」
初耳だ。塔には何か秘密があるのだろうか。妖怪を抑えておく力がある、つまり神が妖怪や幽霊に勝った証として存在させ、力を増幅しているのだろうか?
「はい。そのせいで塔の最上階まで飛んでいくことが不可能となっていることが判明いたしました」
「あー、あれノートの力じゃなくて、塔の力だったのかよ……。御札みたいな役割してるのかな?」
レインは自分が塔の最上階まで飛んでいこうとして結界に阻まれた話を半笑いでする。
「魔除け、ですか。元霊界の入口である塔としては違和感ないですね」
スグリさんは腕を組んで唸る。
と、そこにくぐもった声が聞こえた。
「……あなたたち、何しに来たんですか?」
剣を構えて声の主を探す。
……見つけた。塔の入口だ。
「ああ?なんだよ、お前」
ズカズカと近寄るレイン。声の主は白い髪に白いワンピースの真っ白コーデだ。髪は左右に分けられ、等間隔にゴムで止めてあるのでパールのネックレスのようにも見える。……短いが。
「私はこの塔……いえ、神殿の巫女です。悪魔たちよ、ここはあなた方が来るような場所ではない。立ち去れ」
「フン、そんな脅しが効くもんか。オレたちはな、この上にいる災厄を倒しに来たんだ。邪魔しないでくれよ」
そう言ってレインは彼より低い身長の巫女の頭をポフポフと叩く。一瞬、巫女とは思えない怖い目つきをしたが、何も言わないでおいた。
「それに、神殿だなんて大層な名前しやがって。ここは幽霊のための塔なんたぜ」
「……幽霊のためといつ決まったのです?神は幽霊より前にいらっしゃった。そうではないのですか。いや、そうでないといけない」
「はぁ?何言ってるんだよ……」
「レイン。こういうのは相手にしない方がいい。話が通じるとは思えない」
「もう遅い。私は神にこの身を捧げると誓った。私は悪魔を通さない。この身が尽きるまで戦い抜くと誓います……!!」
この顔を何と例えるか。「恍惚」「狂気」「恐怖」……くそ、どれも当てはまる。面倒なタイプの相手だ。
「神槍『エクリプス』」
……こいつの武器は槍か。槍といえばアイザーだな……。ここにいるメンバーは剣、剣、拳。全員接近戦タイプだ。
エクリプスということは月食か。この名前を冠しているんだ、それ相応の面倒くさい能力を持っているのだろう……!
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




