僕も怒りますよ!?
ワクチン二度目でキツいです……
第四十話 黒池の叱責
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『____はい、黒池です』
電話の向こうから若い男の声がした。
本当は電話をかけたくない相手。最終手段としてとっておいた人。
でも、とても温かくて。安心できて。今にも泣きそうになったので、奥歯を噛み締めた。
「……皇希……」
『その声は……ヘラ!?ヘラなの?』
「あぁ……」
『何かあったのかい?』
「…………ムジナと喧嘩した」
『なんだって!?それで、お互い今どこに?』
「ムジナたちとはカリビアさんを助けに行くために魔王城に行って、そのまま別れた。今俺は謁見の間の前にいる」
『両方魔王城にいるんだね。仲直りは……できなさそうだね。前から言っていた違和感のことかい?』
「そうだ。下手にムジナを前線に出して戦闘意欲を刺激したくなかったんだが……もう手に負えないんだ。だから思う存分力を振るわせようと思う」
『……わかった。でも、無理だけはさせないで。僕の大事なムジナくんなんだから♪』
「…………………………」
『……訂正はしないんだね。「俺のだ!」って』
しない。俺はレインと協力して陰からムジナを監視することにしたから。後悔はしていない。俺の自分勝手な行動だということはわかってる。それを貫くことの執念深いところも俺の性格だということは知られている。だから考えを曲げることはない。
「あぁ」
『____え?はい、わかりました。ヘラ、師匠が電話したいそうだよ』
「好きにしろ」
『……ヘラっ!ムジナと喧嘩したんだって!?』
聞き覚えのある声が響く。リストだ。人間界暮らしは慣れたのだろうか?元々人間界にいたのだろうが、魔界のが長かったようだからな……。
「だから何だよ……」
『あぁ!?』
「だから何だよ!仲良く遊ぶんだったら喧嘩するのも当たり前じゃねぇか!俺は……ムジナを監視していたけどもう疲れたんだ……。どうせ次はノートと戦うんだ。ムジナの異変も激化してくると思うし、ちょうどいいだろ?」
『……』
「この作戦にはレインも手を貸している。もう後戻りはできないんだ……」
『レインまでムジナの敵に回ったのか?』
「敵じゃない」
『危害を加えるなら敵も同然だ。ヘラ……本気なんだな?』
「本気だ」
本気じゃないとこうやって連絡をしたりはしない。
『……あ、ちょっと代わるみたいだ』
「ん?」
『ヘラ』
皇希の声だ。ひどく落ち着いている。そして静かな怒りを感じた。
体が強張る。……俺が恐怖している?人間に?ましてや『あの』皇希に?ふ、ふん……馬鹿な。俺がこんなやつにビビるわけがない……。落ち着け。落ち着くんだ……冷静になれ、俺……。
「なんだよ……」
『ヘラは何の為に鍛えたのですか』
皇希が敬語になっている。これは嫌な予感がする。
「何の為って……俺のた____」
『ムジナくんのためでしょう?』
「……っ」
『ずっと一つのために戦ってきたあなたを見て、幼い僕はこんな人みたいになりたいと憧れました。ですが、今はどうですか!くだらない疑問に縛り付けられて、せっかく築き上げた絆を壊そうとしているじゃないですか!そんなのヘラらしくありません。もしもノート神のことで心配になっているのなら、ノート神を倒せばいいじゃないですか。いつだってそうしてきたでしょう?その力を使うときなんです』
「……でも」
『でもじゃありません!人はやらねばならないことが必ずあるんです。ずっと遠回しにしていても、必ずその時が来るものなんです。時間というものは残酷です。なら、まだ僕が生きているうちにその想いを証明してください!』
「皇希……。……これが夢なら良かったよ」
『……僕もそう思います』
夢ならば。夢ならば、ムジナに言ったあの言葉も嘘になるのだろうか。
皇希の『必ずその時が来る』という言葉を反芻する……。
これは運命なのだろうか?なら、その運命を作った人はどれほど残忍な性格をしているのだろうか。こうなることを計画して運命を定めたのだとすれば、俺は永遠に許さないだろう。
そう、永遠に。
「……ヘラ?」
ガチャリと扉が開いた。レインだ。ずっと扉の前で電話していたので、まだなのかと顔を覗かせたのだ。ここでライル、スグリさん、レインと待ち合わせしていた。もちろんムジナのことを相談するためである。
「あ、レイン……」
『レイン?そこにいるのか?!』
いつの間にか皇希とリストが入れ替わっていた。こっちもレインに携帯をひったくられた。
「ん、その声はリストか?ちょうどいい、リストにも手伝ってもらおうかな」
『内容によるがな』
『ちょ、ちょっと師匠!なに安請け合いしようとしてるんですか!?』
いつもの慌ただしいやりとりが聞こえる。もし、二人がムジナにつくとすれば、このやりとりをもう聞くことができなくなるのだろうか?皇希自身は俺の命を狙って接点はできていたが、ムジナに一目惚れしてかわいいかわいいと言い続けている。孫か。ムジナはお前の孫か。……そんなこんなだから、こいつらはどっちにつくのかわからない。味方は一人でも多いほうがいいが、どうなるだろうか……。
「二人には、海について調べてもらおうと思う」
『う、海?』
「そうだ。サニーとスノーに聞いた……ノートの弱点は海にあるらしい。なんでも、命の源がどうとか……。運が良ければノートを海に連れて行くと力を失うかもしれない。だから、裏付けをしてほしい」
『海か……。黒池、わかるか?』
『海……命……。命の母とは聞きますが、確かにどうしてそうなのかは考えたことありませんでしたね。……推測ですが、もしかすると失われた信仰……宗教に関係があるのかもしれません。それに弱いということは、ノートさんは神様に何か後ろめたいこと、もしくは嫌なことがあったのかもしれませんね』
「その線もあるかもしれないな……。わかった、ありがとう!神についてはアメルで調べようかな」
レインは満足そうな顔をして俺に携帯を返した。皇希はたまに核心をついたことを言い出す。だから皇希の発言は無下にはできない。
「……ありがとう、皇希」
『え!』
「皇希たちがいなかったら行き詰まってたと思う」
ぽつりぽつりと口に出す。
『……ヘラの口からそんな言葉が出るなんて』
「意外か?」
『ふふ……孤高のヘラがしおらしくなるのは面白いよ』
「癪に障る奴だ」
とは言いつつも、このまま行くと皇希はこちらに手を貸してもらえそうだ。皇希には申し訳ないが、ムジナを……。
『僕たちはこれから海について調べてくるよ。ヘラ、他の用件は?』
「ない」
『わかった。……いつでも連絡していいですからね。ムジナくんと仲直りできたら……よろしく伝えておいてください』
「皇希……」
『では。……ふふ、そんな寂しそうな声は仕舞っておいてくださいよ。また情報がわかったときに連絡しますから』
そう言って電話は切られた。
そうだ、また電話すればいい。その時までお互いに頑張らないといけないな。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




