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怪奇討伐部Ⅵ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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強敵ヌタス

第三十七話 vs.ヌタス




「うわっ、なんだこれ!」


 初めて見る人たちは一斉に声を上げる。生き物が生んではいけない風量だからだ。


「少し動いただけであんなかよ!」

「これも魔法なのか?」

「フン、人間……これ以上関わると本当に死ぬぞ?」


 ヌタスは攻撃しながら鼻で笑う。

 だが、ここで歩みを止めるわけにはいかない。ヘラを筆頭に、他のみんなもそれぞれの武器を握った。


「死んだらオレが……ううん。死なせない!」

「その意気だ、ムジナくん!」


 ヌタスの拳が風を切り、唸りを上げて迫る。


「お前の相手は俺だッ!!」


 オレを守るため、ヘラが割って入る。ヌタスの拳を、レインから受け取った剣がガタガタと音を立てながら受け止めた。


「そんな剣じゃ次にでも折れるんじゃないか?」

「折れる前に、倒す!」


 ヘラが剣に炎の魔力を込めると、呪いの剣の瞳が紅く輝いた。


「そんな魔法は効かん……!」


 ヌタスも拳に風の魔法を纏わせて体をひねり、突き出す拳の勢いを高めようと片足を前に出した。


 幸い、牢屋が三階で謁見の間が二階だったので人数、勢い共にこちらが有利だ。有利な……はずなのだが。


「ぐぅ!」


 まるで竜巻でも起こったかのような風圧のせいで、階段の最上段から剣を構えて飛び降りたヘラは煽られ、階段で尻もちをついた。


「ヘラ!」


 駆け寄ろうと体をピクリと動かしたその時、もうすでにヌタスはヘラを飛び越えてオレの目と鼻の先にまで迫っていた。


「っ!!」


 咄嗟に呼び出した鎌を体の前で斜めに構え、ガードする。拳は防げたものの、風を防ぐことはできずにかまいたちのような風で服や肌が切れ、血が滲んだ。


 ダメージを受けたのはマリフの光線銃ぶりだろうか。

 あれは狙った場所だけを焼いて痛みを感じるものなのだが、ヌタスの風の魔法はランダムかつ広範囲なので防ぎようがない。一つ一つの傷はそこまで痛くないのだが、塵も積もれば何とやら。取り返しのつかないことになってしまう可能性がある。なので早く決着をつけなければならない。


「やるぞ、メリアさん」

「銃と光線銃のコンビネーションね!」


 後ろの方でキリルとメリアが狙いを定めていた。


「あぁ。ヤバいと思ったら即、逃げろ。一般人は警察が守る」

「あら、地球人より体は丈夫だと思ってるわよ?それより桜花を守ったほうがいいと思うけど」

「元から頭数に入れてる。確認を取っただけだ」

「最初から『女性二人はオレが守る!』みたいなこと言ってくれたらかっこよかったのに」

「かっこよさを重視していたら警察なんてなれない。男が女を守るのは当たり前のことだ。もしそんな奴がいたら、そいつは男……いや人間失格だな」

「はいはい、守ることを捨てて突っ込もうとしていたおじさんは人間失格ですよっと」

「いっそそのほうが清々しいですよ、月光さん」

「扱い違くない!?」


 そう言いつつも後ろで援護してくれている。援護の甲斐あって、銃弾を弾き飛ばしたり光線を避けたりすることによりヌタスに僅かながらの隙が生まれた。


「っ!そこだ!」


 ヘラが踏み込む。まだお互い階段の上のままで危ないが、こんな小さな隙でも活用しないと勝ち目はほぼ無いに等しい。


「やるな!だがお前じゃ無理だ」

「ぐ……たかが一人に苦戦するなんて……!」


 確かにいつものヘラだと一撃もしくは絶対に勝てるだろうという自信に満ち溢れていた。だからこそオレも頼ることができた。だが、最近のヘラはどこかおかしい。何かに迷っているようだ。


「…………」


 カリビアさんはヘラの戦いぶりを怖い顔して見ている。


「カリビアさん?」

「……あ、あぁ……ごめん。何か用かい?」

「ううん。怖い顔してたから……」

「大丈夫。少し考え事をしていただけだから」

「うん……」


 ヘラについて何か考えているのであれば、聞いておきたいけど怖い気もする。


 __________


「お前もわかってるんじゃないのか?自分の力だけでは無理だ。ムジナくんの力がないと勝てないって」

「ムジナを危険な目に合わせるわけにはいかない!俺は……どこまでも強くなる!」

「それがお前を縛り付けてるんだよっ!!いい加減気付け!」


 ガチガチガチッと剣の悲鳴が聞こえる。


 わかってる。わかっているんだ。俺はもうこれ以上強くならない。ムジナの力を借りないといけないようになってしまった。


 今までたくさん努力してきた。最弱と呼ばれているインキュバスでも一人前に戦えるように努力してきた。

 ドラゴンソウルを制御できるようにまでなって、廻貌にも認めてもらったから奴は俺の手元で敵を斬った。


 誰よりも、誰よりも。


 血の滲むような……いや、実際血が出たが、それほど鍛えてきたんだ。


 ムジナを守ることは俺を守ること。人を襲って魔力を回復させることをしない俺は、永遠の循環を持つ死神と契約することで俺は生き延びた。つまり、俺は俺のためにムジナを守っている。俺がムジナを守ることをやめれば死ぬし、ムジナが契約に気付いて魔力を抑え込んだとしても死ぬ。八方塞がりな俺たちはギリギリになってもそれを続けていかなければならない。ムジナは無事だろうが、俺はどう考えても死ぬんだ。


 結局、誰かのために生きている悪魔なんていない。俺は俺のために生きていたんだ。


「だからこそ……!俺が、俺が……やってやる!!」


 ドラゴンソウルを解放する。体の中が、心臓が燃え上がる。髪は黒く染まり、燃えたコートがチリチリと舞う。袖は破れ、ネクタイまで黒く染まった。破れた袖の下に見える腕はまるでバルディの腕みたいにドラゴンのように見える。

 頬にエックスのような紋様が浮かび上がる。これがドラゴンソウルの証。全てを屠る殺戮者の証。


「お前はもっと自分を大切にしろ!」

「お前にとやかく言われる筋合いはない!俺はインキュバスとして不完全な時点で終わっている!元から死んでいるのなら、俺はムジナのために全てを捧げる!」

「それがダメだと言っているだろう!」


 ここで気圧されては全てが崩れる。俺がここで止めなければ。ここで一番強いのは俺ではなく月光やムジナかもしれない。だが、ムジナはともかく月光は魔界では「お客様」だ。傷つけるわけにはいかない。


「うるさいうるさいうるさい!俺は俺のために戦ってる!俺の好きなように戦わせろ!!」


 紋様が熱い。ヌタスは一瞬困った顔をして、すぐに俺を睨んだ。


「お前がどうなっても知らないぞ。自分自身のことを分かっていなかったらムジナくんのことも守れない。それがわかるまでお前は勝てない。誰にも、な」


 その瞬間、俺は腹に一撃喰らい、片膝をついた。

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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