エンカウント!ヌタス
第三十六話 囚われの隊長
魔王城はほとんど庭同然なので、サクサクと進めた。少し変わっていたところはあったが、ライルがオレたちのためにコソコソと残してくれたであろう魔力の印が案内してくれたのだ。
「ライル……」
「ムジナ。気持ちはわかるが、状況が状況だ。カリビアさんを優先しよう」
「うん……」
とは言いつつも、魔力の印を見ながら通り過ぎた。
「ムジナ……ライルちゃんのこと、よっぽど大事なんだね」
メリアが聞いてきた。このメンバーには魔王城のことは伝えた。だからこそだ。教えなければこんな質問もしてこないだろう。
「うん。お友達だから」
「友達を大切にすることはとても大事なことだ。ムジナだけじゃなくてヘラもレインも忘れないようにな」
「……あぁ」
「当然だろ」
……しばらくして、ヘラがスグリさんの方を見る。そして二人は頷く。そうか、ここがカリビアさんの……。
「開けるぞ」
「う、うん」
ヘラが鍵を穴に刺そうとする。緊張のためか、なんかゆっくりに見える……。ヘラは二回目だから大丈夫だろうけど、オレが心配だ。
「むむむ……」
「そんな気張らなくていいだろ」
「レインは緊張しないの?」
「しない。いつもの通りに強い奴と戦うって覚悟してたら緊張してる暇なんてないだろ?」
「うん……」
ヘラの動作をじっくり見ていたオレにレインが声をかける。レインの話を聞いてて……レインはレインでとてもよく考えていたんだってわかった。オレもレインに負けないように頑張らないと。
……その時だった。ガチャン。扉が開く音がした。
重苦しい鉄の扉。鉄格子の窓はない。
そんな扉をヘラは重そうにタックルの要領でゆっくりと開いた。
「…………また来たのかい?」
真っ暗な部屋で、少し寂しげで掠れた声がした。諦めと呆れ。小さなため息。もしこれが見たことない人物だったら確実に逃げ帰っただろう。だがこの人はカリビアさんだ。優しい優しい男の人。
「この人がカリビアさん……」
「ちょっと!ボロボロじゃないか!」
呟いたメリアの横を通り、キリルさんが走ってカリビアさんの拘束を解く。カリビアさんは聞いていた通りに抵抗するのではなく、微動だにしなかった。
「カリビアさん……」
「この声は……ムジナくん?……はは……恥ずかしいところを見せてしまったね……」
「ううん、大丈夫。それより、早く脱出しよう!」
カリビアさんのボロボロの手を握る。ボロボロどころじゃない。割れた指から血が滲み出していた。
「っ!」
「これかい?……この環境が生み出した結果さ。……もう痛くないほど麻痺しているがね」
「……。……っ」
「そんな顔をしないでおくれ。見えなくても声でわかる。悲しんでくれているんだね」
「ぅ……うぅ……」
ゆっくりと後頭部を撫でられる。カリビアさんの優しさで泣いてしまいそうだ。いや、もう泣いてしまっている。
「よしよし」
痛々しいのはそっちなのに。慰められるべきなのはそっちなのに。どうして?どうして強いの?オレなら絶対に耐えられない。怖かった、もう離さないでって言うと思うのに。
「……カリビアさん、その目隠しの呪いはまだ続いているんですよね?」
「そうだよ」
「ならオレの出番だな」
カリビアさんの返事にレインが前に出る。あらかじめ聞いておいた作戦によると、レインがこの目隠しの呪いを解いて、みんなが前を見られる状態で脱出する……だそうだ。
「レイン……か。久しぶりだね」
「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないだろ!やるぞ、パパッと終わらせる」
……確かに。確かにこの男はそう言った。パパッと終わらせる……終わらせる、と言ったのだ。そう、言ったのだ。
「ね〜まだぁ〜?」
レインの後ろでグルグル回りながらつまんなそうに急かす。レインはこいつ……!という顔で解呪を続けていた。
「五分くらいかな……?」
「しゃべるな動くな黙ってろ」
「あ……はい……」
久しぶりに話せて嬉しいだろうカリビアさんにも一喝……。レインはイライラしているのだ。
「うぐぐ……」
「頑張れ、レイン!フレーッ!フレーッ!」
「呪術はキミじゃないと解除できないんだ。頑張ってくれているだけでも感謝しているよ」
「ふぁいとっ、おー!」
「ねぇ、引き千切ったりはできないわけ?」
「爆弾解除と一緒だから、無理にやると大変なことになるぞ」
「うわ……」
各々が話している中、レインが震えだした。
「うるさーい!静かにしろ!」
「はーい」
「もうちょっと……もうちょっと!よしっ、いけた!」
ハラリ、と目隠しが落ちる。目隠しというか、いつもカリビアさんが頭につけているバンダナだ。これもマジックアイテムの一つなので、その力を流用して呪いにしていたのだ。呪いと一言で言えど、プラスの効果になるものもある。このバンダナがその例で、疲れを感じさせないのがこれの効果だ。
「やった!じゃあ見つからないうちに早く出よう!」
レインがカリビアさんの手を引いて牢屋を飛び出す。残されたオレたちは後を追いかけて走り出した。
「誰も来ないよねっ?!」
「恐らくは……」
桜花の声に反応するスグリさん。
「でもさ……こんな時って大体……」
「言うな」
「ヘラぁ……」
「言うんじゃない。やめろフラグやめろ」
「そうだな、侵入者共」
「ほらやっぱりぃー!!」
曲がり角を曲がって、さぁ階段だというところで前方にヌタスの姿を確認した。
なぜこんなところに姿を現したのかがみんなわからず、混乱していた。
「この声は……ムジナくん?本当にムジナくんなのか?」
「ヌタスお兄ちゃん……」
「「「ぬ、ヌタスお兄ちゃん!?」」」
ヘラ以外が叫ぶ。ヘラはわかっているため半分笑いながら頭を抱えるが、本当のことだ。ヌタス……ヌタスお兄ちゃんは、昔の呼び方だ。たまに帰ってきては遊んでくれた。だからお兄ちゃんと呼んでいる。……今はもう呼び捨てだが、隙を作ることはできるかもしれない。
「……ムジナくんもそっちなのか?」
「カリビアさんにはお世話になってるから」
「……そうか。そうか……!やはり、そうだったのか!は、はは……こりゃ傑作だ……!」
ヌタスは目を片手で覆って笑い狂う。
「何がそんなにおかしい!」
「キリルさんっ」
「何がって?いいだろう、答えてやる、若い人間。……そいつはノートの力で汚染された人間なのはわかるだろ?ならそれが惹きつけるのは何だ?」
「は?そんなの……強いやつとか、仲間とか……」
「そうだ。仲間だ。ここまで言ってわかるだろ?……なぁ、ヘラ」
「……」
ヘラのことを一斉に見る。
ヘラは下を向いていた。
お前ならわかるよな?と言われたように。
「ヘラ……?」
「知らねぇな。カリビアさんに散々酷いことをしたお前に言うことなんて無い」
ヘラはレインに借りた剣をヌタスに向ける。それを見たカリビアさんは声を上げた。
「あれっ!?ヨジャメーヌは!?」
「色々あって壊れたんです。ヨジャメーヌを直すためにも、この戦い、絶対に負けられません」
話を聞いたヌタスは首を縦に振った。
「フン、そうかそうか。……インキュバスのお前に勝てるか?」
「勝てるかどうかじゃなくて、勝つ」
「なら……やってみろ!」
ヌタスが拳を握り、一歩踏み出す。
その瞬間、階段の踊り場では立っているのもやっとなほどの強すぎる風が吹き荒れた……!!
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




