結界を消すには?
第三十一話 結界
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「……でさー、作戦とかはあるの?」
「もちろん。地下で移動しながら考えてたさ」
俺たちはイリスまでの道を歩きながら話をしていた。キリルは草笛を吹きながら、桜花は女の子らしく初めて来るこの場所に目を輝かせ、月光はユーリのところから拝借したゴシックな傘を指して月から身を隠している。悪いが月光……男物着物にゴシックはちょっと合わないぞ。
「だが、一ヶ月経ったんだ。戦況がどうなってるかまではわからん」
「私も手伝うから、安心して」
「桜花、体は大丈夫なのか?」
「えぇ。あの神様、すごいわね。今、体がとても軽いの」
「そうか……戦力は一人でも多い方がいい。頼りにしてるぞ、桜花」
「任せなさい!」
桜花は胸に拳を当て、自信満々に答えた。
「~♪~♪」
「ん?」
「ピピッ♪ピ~~♪ピピピピピピピ____」
「草笛やめてしゃべってくれる!?」
「すまない」
「で、何て言ったの?」
「いや……適当に言って何て言ってるかわかるかなーって」
「……」
「ごっ、ごめんって!冗談だってば!!『お腹すいたな』って!……なんだよ、その顔!!」
「まぁいい。もうすぐイリスの前の森だ。家に着いたら何か食べよう」
「あっ、ちょっ、ヘラ!?」
……許しを乞うキリルはさておき、森に突入した。遠くの方にリメルアの館が見える。相変わらずデカい塀がある。
「そういやリメルアはどっちの味方なんだ?」
「どっちって?」
「俺たちか、ヘッジとかヌタスの」
「んー……多分こっちだと思うよ。あの人だって、ノートを倒さないと気が済まないだろうし……ノートと戦うのはこっちなんだから、ここで倒れたら困るだろうし」
「ふぅん……ま、リメルアが敵じゃないことがわかればそれでいい」
「リメルアって、さっき神様が言ってた人よね?」
「あぁ。俺を殺そうとしてくる吸血鬼だ。何回戦っても同じ結果なのにな」
「……何かデリカシーのないことしちゃったんでしょ?」
「なんでそんな考えになるんだ!?俺はただ皇希とキリルを助けようと……なぁ!?キリル!」
後ろで草笛を再開したキリルの方を見る。
「ピー……ピーピピ、ピュー」
「ちゃんとしゃべれェ!!」
首を上下に振る。それを見た桜花は納得したのか、「そうなの?ごめんね」と謝った。
「……あの泉の向こうが俺の家だ。ん?まだ昼なんだが……今日はサメは泳いでないのか?」
「えっ、泉なのに鮫なんて泳いでるの?」
現在地はリメルアの館と泉の間だ。泉を越せば俺の家だ。
「鮫じゃなくてサメさんだよ」
「むしろ鮫じゃなくてジンベエザメでだな……」
「よくわからないわね……」
「百聞は一見にしかずだ。行くぞ」
さっさと泉を越えると、木造建築が……というか俺の家が見えてきた。この辺りは俺の家しかない。他のインキュバスやサキュバスの家はもっと西の方にある。辺境イリスと言えど広い。
「ただいm____」
「やっと帰ってきたのね!!ヘラ!大変よ!!」
「うわぁっ!?」
扉を開けると、メリアが飛び込んできた。下手すればお互い扉に激突するところだったんだが。
「……ってて……何が大変なんだ?」
「サメが……いなくなったの!!」
「は?」
「一ヶ月前に、ヌタスがサメクンを連れてったの!そいつ、怖くて怖くて……」
メソメソと泣き始めたメリアをとりあえず椅子に座らせようと肩に手を回す。キリルに椅子を引いてもらい、彼女に座ってもらった。
「……ヌタスに連れていかれたのはサメだけなのか?」
「えぇ……外で騒ぎ声が聞こえたから何だろうって窓から見てたら……ヌタスがサメクンを組み伏せてて……」
「……待て。どうしてそいつがヌタスってわかったんだ?」
「サニーくんが見回りに来たときに教えてくれたの。彼、真面目ないい子ね」
「だろ?!オレの自慢の弟だからな!!」
「お兄ちゃんは頼りないけどな」
「言ったな!?」
「あー、はいはい、落ち着いて落ち着いて」
「これが落ち着けるかァ!!」
レインは俺とメリアに向かって野犬のように突っかかる。
「……大人しくしろと言われているんだ。大人しくしろ、レイン」
「ひえ……」
そんなレインのこめかみに、キリルは銃口を突きつけた。さすがにレインの動きが止まる。やりすぎだ……。
「おいおい……ヒトの家で騒がないでくれよな」
「大丈夫だ。空だし」
「弾の数を言ってるんじゃねーよ!」
キリルまでムジナみたいな斜め上の返答の人になられるとキツい。
「わかった。わかったから!さっさと準備しようぜ。カリビアなんてもう一ヶ月以上待ってる」
「手を縛られ、目隠しされ、光のない部屋でただ一人……。想像するだけで気が狂うな」
「スグリが掛け合ってマシにしてくれるって聞いたんだけど……現状、どうなってるのかはわからないな」
スグリとは、現魔王ライルの側近だ。ライルの兄であるヌタスはとんでもない性悪兄貴で、それなのに強いから対抗できないという鬼畜仕様。そんなヌタスに取り引きを仕掛けるなんて命知らずもいいとこだ。だが、戦闘スタイルはライルよりスグリさんの方がヌタスに近い。いざとなれば戦闘に特化したその種族の力で何とか……なるのかな?
「肉弾戦で城が崩壊してないことを祈る」
「さっき外にいたときに見たけど、壊れてなかったわよ」
「当たり前だ。あれは普通の城じゃなくて、結界で強化してるからな」
「結界?ふぅん……ここって結界で固めてるところが多いのね」
「そうだ!結界は呪術師の力の結晶だからな!簡単に破れてたまるか!」
「陰陽師とはちょっと違うのね」
「陰陽師?あー……祈りを捧げてるんだっけ?ま、こっちは魔力を使ってるから自由自在なんだけどな」
「おかげで月の影響もないみたいだ。感謝しているよ、その呪術師たちには」
月光は手をヒラヒラとする。
……少し前。まだシフが俺たちと一緒にいたときの話だ。今は元に戻っているが、魔界は端の方から消滅していくという未曾有の危機に曝された。犯人はハレティだ。どうしてあんなことをしたのかはわからないが、あいつがやったことは許されたものではない。その時、避難場所になったのは魔王城だった。俺は避難してきた人たちに料理を振る舞い続けた。だが、ハレティの狙いは俺たちだったので、中心である魔王城を出て消滅していく地へと向かったんだ。
それから。
魔王城はそんなことが起こったときのために結界を張った。……ここにいる大半はその話を知らない。レインだっておそらくは逃げてきた人の一人だったのだろう。
どうして結界の技術があったのか。
……レインの親が死んだのはハレティの事件の前だ。つまり、魔王城に出向き、呪術師一族は魔王に結界のやり方を提供していたことになる。呪術師たちはこのことも予測していたのだろうか。
「……よく考えてみろ。今からそこに行くんだぞ」
「あっ」
「えっ?なに?」
「俺たちは!結界で!難攻不落となった!城に!忍び込むんだ!!下手したら結界で細切れ!お陀仏だ!!」
「なんですとー!?」
自慢気に話していたのが一転、とんでもない脅威となってしまった。しかも結界なので地面を掘っても無駄だ。
「ど、どうするんだよ?」
「そこで鍵となるのは死神……ムジナだ」
「オレ!?囮にでもするの?」
「よく考えてみなよ。呪術師にとって、結界は『護るための呪い』だ。魔法じゃなくて呪い。呪いと相性が悪いのは死神の存在だ。だってほら、ヘッジさんが中に入るとき、結界は無かったはず。ということは、ヘッジさんかムジナが結界に触れたら消えるということだ」
「じゃあ、触るだけで消えるってこと?」
「そういうこと。今はヘッジさんはクノリティアに帰ってるはずだ。だから城内には死神は誰もいない……誰も来させないために、城の周りには死神が大嫌いな呪術師が配備されてると思う」
「でも呪術師はオレたち三人で最後だぞ?」
「結界のノウハウさえあれば何とでもなるということは、呪いのやり方さえわかれば誰だって呪術師になれる」
「う……」
「俺たちで陽動して、そのうちにムジナを結界に触らせるぞ」
「つまり、思いっきり暴れろってことね?」
「そうだ。ムジナを近くまで連れていくのにテレポートが使える人がいる。そうなると俺かレインなんだが、生憎、廻貌はいないし、ヨジャメーヌも折れたままだ。だから俺が行く。ムジナを結界の前まで連れていったらすぐに陽動に向かう」
……と言ったのは建前だ。ムジナを監視するために俺がムジナの隣にいることにした。ムジナが裏切らないとは限らない。最近のムジナはおかしい。前はこんなに能天気じゃなかった。ハレティに魂を半分消耗させられたというのが理由だろうが、果たして、本当にそれだけで精神年齢も下がるのだろうか?
まず、レインもおかしい。昔はこんなに聡明ではなかった。時が経つにつれ、周りの人たちの変化が著しくなっている……。一体、何が起こっているんだ?
「ヘラ」
「レイン……お前が言いたいことはわかってる。それよりまずは食事だ。魔力ももうないし、気になることもあるからな」
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




