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怪奇討伐部Ⅵ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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些細で大きな昔話

第三十話 始まりの悪魔




「それって、どんな?」

「魔力についてよ。夜だけ赤く輝く新種の花が見つかったの。最初はたった一本しかなくて、これは貴重だ!って大喜びしてたわ。私も見たことがない花だったから、やったわね!と一緒に喜んで観察、研究していたの」

「へぇ、そんな花があったなんて……。図鑑でも見たことがなかったな」

「ヘラのは魔界のじゃなくて人間界の図鑑でしょ?」

「お腹は大丈夫なのか?」

「うんっ」


 どうやら他の人たちも大丈夫そうだ。


「……でも、その花は日に日に増えていったの。さすがにおかしいと思った私たちは、成分を調べたわ。すると、光る実に高密度の魔力が込められていることがわかったの」

「待て。どうして魔力ってわかったんだ?」

「プレパラートにこぼしちゃったのよ。それが光りながら浮いて……これはどう考えても『魔力』ってやつじゃないのか?って考えに至ったの。そして、異常に増えていくその魔力は、悪意の塊……『悪魔』を実体化させるかもしれないって答えが出たの」

「!」


 悪魔……!どうして急にユグドラシルが滅んだり、昔は人間界と同じような感じだったのに魔界になったのかってよく考えたりしてるってヘラが言ってたけど……。まさかこれが答えなのか?


「これはマズイことになるかもしれないと、アルメト姫のお父さん……つまりユグドラシル王に説明したわ。でも、『その悪魔がこの国を滅ぼすと?この国は永遠だ!そんなことを言うお前を反逆罪とする!猶予は三日間だ!その間に、その研究が間違っているという証拠を出せ!ならば許してやろう!』って言われてしまって、お城から追い出されたの。……今思えば、これを認めればアルメト姫の魔力を認め、魔女として公にすることになる……だから、研究家の一人や二人に魔力について否定してもらいたかったのかもしれないわね」


 スクーレが信仰しているアルメト姫の伝説には、『アルメト姫が魔女として城を追い出され、償いとして悪魔を浄化していった』とあった……。これがそれに繋がるのか……。


「ひどい……ユーリは教えてあげただけなのに……」

「そうね。ユーリもユーリで国と自分の命運がかかってるから王さまの言うとおりに証拠を探すことにしたの。私はこれは神として一大事だと雲の上に帰って、他の神に報告したわ。糠に釘って感じだったけど」

「でも、今オレたちがここにいるってことは……」

「その通り、証拠は見つからなかったわ。花は増える一方だし、魔力は段々強くなって、ユーリの家の周りの植物は急激に生長していったの。そして迎えた三日目の夜……。私も精一杯手伝ったけど、徹夜だったユーリの心と体はボロボロで……。夜明け前に、ユーリは実を三つも食べてしまったの。悪意の塊、高密度の魔力を……」

「!?」


 人間が魔力を体に宿すと、どうなるのか。一度聞いたことがある。それに、オレたちはその例を見ている。リストだ。あいつは半分人間をやめている。人間とは思えない動きをしているし、初対面のときは悪魔かと思うような性格をしていた。今は黒池やオレたちの存在があり、丸くなったが……あのまま一人にしておくと、収拾がつかないことになっていたのかもしれない。


「その朝、お城の兵士たちが来たわ……。三日以内に結果を知らせなかったから拘束しに来たのよ。でも……。急激に魔力を宿したユーリは凶暴になったの。私もできる限り神の力を出さずに人間ができる範囲の防御はしたわ。でも、兵士が来る十分くらい前に限界を悟って神の力を露わにしたの。しばらく対抗して、ようやく兵士が来たと思えばユーリの興味があっちに行って、その場にいた兵士たち二十人を皆殺しにしてどこかに行ってしまったの。……実は一つ食べれば十分だったのに」

「……どうやって殺したの?」

「……。噛み千切ったり、殴り倒したり、兵士を操って殺し合わせたり……。朝から見るものではなかったわね」

「うわ……」

「当然、追いかけたわ。領地ギリギリのところで見つけたの。木陰で休んでいたわ。身体中から焼け焦げた臭いを漂わせながらね。……口から血を流していたわ。もちろん自分のではなく……吸った他人の血を。朝ごはんだというように女の人の血を吸いながら、爽やかに私に『おはよう』と言ったの。それが後の『吸血鬼』よ」

「…………………………。」


 ……皆が言葉を失っていた。

 ユーリは正しいことをした。なのに、信じてもらえず、心が壊れて……人間として生きることをやめてしまった。そんなの、ひどすぎる。かわいそうだ。

 さっきオレたちにしようとしたことについては許せないけど……もし、王がユーリの言葉を信じていたなら、今もユグドラシル王国は続いていたのかもしれない。でも、花が日に日に増えていくのなら、国が続いていても悪魔が存在していることになる。そうなれば、国と悪魔は戦っていたのだろうか。互いを消耗し続け、不毛な戦いを強いられていたのだろうか。そう考えれば、今のこの状態の方が幸せだろう。ユーリには悪いが……。


「ユーリは、その時に倒したのよ。悪魔となったユーリを殺し、同じことが起きないようにしないとって。三つも食べたんだもの、ギリギリだったわ。……これで終わるかと思ったけど、現実は甘くなかった。実が弾けて、魔力が放出され始めたの。今は大気中にいっぱい魔力があるけど、元はなかったのよ。……アルメト姫のように、元から少しでも自分の魔力……ここからは抗体って言うけど、抗体を持ってる人は大丈夫だけど、抗体がない人は魔力に囚われ、ユーリと同じく悪魔化していった。その報告を受けた王さまは、どうにかしようと考えた。たまたまアルメト姫が魔力を使って、襲いかかってきたお城の悪魔化した兵士を浄化したのを見て、アルメト姫をこの騒動の黒幕として仕立て上げ、全て浄化するまで帰ってくるな!と追い出したの。……ここからは伝説の通りよ。お城でアルメト姫に仕えていたハレティとの二人旅が始まるの」

「それで……悪魔化した人の一人……リメルアにハレティが射殺された……ってこと?」

「えぇ。リメルアも本当はイリスの北にある館に住んでいた人間の貴族だったのよ。何人もメイドさんとかがいたけど……リメルアだけが抗体がなくて、悪魔化……吸血鬼になって、食い殺したそうよ」

「リメルアが……元人間……。ならリメルアの本が人間のもので、なおかつ古い文字というのも頷けるな……。ただの吸血鬼としての人間マニアじゃなくて、本当に人間だったんだな……」

「最近の吸血鬼の伝承では普段は人間っぽいけど本性を見せたら「あっ吸血鬼だ」ってなるって聞いているわ。……あなたたちが救おうとしてるカリビアだって同じでしょう?彼は抗体を持ってたそうだけど」

「なるほど……」


 カリビアは武器を何本も浮かして、自由自在に動かせる。でもあれはノートによる強化だ……。てか普通にちょっとだけ魔力があったのかよ。

 ハレティも、ナイフ投げが攻撃手段だと聞いた。ただ投げてそれでどうするんだとは思っていたが、魔力で命中率を上げれば済む話。……なら、その例の赤く光る花は魔力の後押しするものだったのか。


「聖ユグドラシル王朝は二人が死ぬ前に悪魔化した国民たちによって滅んだ。だから、本当は疲れたとかハレティの死を悲しんで耐えきれなかったとかそういうのじゃないの。アルメト姫が国が一番綺麗に見える丘で死んだのは……空気中に漂い、手に負えなくなった悪魔化の魔力への無力感と、燃え盛る国を見て、絶望しながら死んだのよ。……ここまでの話を聞いた通り、王さまはひどい人だった。国民の悪意の塊は魔力によって実体化して、本当に悪魔となって王朝を崩壊させた。ただの謀叛ではなく、今の魔界を形作るきっかけとなった方法で……ね」

「でもさ、それなら凶暴な悪魔しかいないんじゃないのか?」

「ほんと!……あ!もしかして、魔王が決まったから?ケンカはダメだよーって?」

「半分正解だけど、半分不正解よ」

「えー」

「悪魔は最初から仲が良かったの。悪魔化した人たちはみんな元々一つの国の人だったから。共通の敵は王さまだった。それがいなくなれば、暴れる必要はない。それに暴れ疲れたってのもあるし、魔力が命の源ってことは理解してるから無駄に使うなんてことはしないようにしてたの。彼らは悪魔になってしまった自分達が暮らしやすいように、悪魔の悪魔による悪魔のための国を……この世界から争いがなくなるようにと願いながら、世界の名前を『魔界』と統一して称し、投票で『魔王』を定めた。だから、今こうしてみんなが仲良く暮らせているのよ」


 微笑む大地の神。質問をしていたオレとヘラ、ムジナはわかるのだが、キリルや桜花、月光たちはどうなのだろうか。みんなどちらかというと人間界側だからよくわからないのではないのか?


「……この前ホテルでレインやスノーちゃんに会ったときの話を思い出した。アメルで石を投げたのは人間だけだったそうだな。人間界にいたときは結構つらかったが、こっちに来てからは自由に過ごせている……。どうしてこうも差がついたんだろうな」

「……実はね、封印されてからしばらくの間、レインの両親に地上のことを聞いてたのよ。人間界から追い出されて、魔界でものけ者扱いされて……。つらかったけど、地上の話を聞いててとても楽しかったの。私はこのままここに居たいわ」

「人間の時が一番悪いって……皮肉だな。どの時代でも人間は悪い。それは知識があるからだと思ってる。悪魔は『平和に暮らしたい』の一つの目的がある……。そういうところは昆虫や機械みたいなものだと思う。単純なんだろうな。だから大きな争いが少ないんだと思うよ。……まぁ外来種ってのが来ない限りはって感じだけど」


 三人とも、言ってることはバラバラだけど、みんな魔界がいいって言ってくれてる。オレもだ。ここが心地いい。


「てか神様がここまで言ってくれるなんてな。随分と贅沢な時間だぜ」

「そういえばユーリってなんで今頃になって復活したの?」

「魔力が切れないからよ。あと吸血鬼だから。ユーリの魔力は実から直接だったから……ユーリは植物由来の悪魔になったの。黒池さんが住む日本の春夏秋冬。あれと同じで、日本と合わせるならユーリの中の季節は今は春。彼の体の中では一回につき何百年もかけてループしてるの。前回の春から六百年くらいかしら?また次の春に復活するわよ」

「その時は……また倒すの?」

「えぇ。毎回強さは変わらないのよ。……さ、ここから出ましょう。授業はおしまい。次はカリビアを助けるんでしょ?治癒魔法はかけてあげるから、早く迎えに行ってあげなさい。私が行ったら魔力でバレちゃうから影ながら応援してるわ。地下に行ってから月跨いでるんだから、そろそろ彼も疲れちゃってるんじゃない?」

「そうだな!よぉーしっ、やるぞ!!」

「おー!!!」

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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