吸血鬼ユーリ
第二十九話 過去の遺物
「よくぞこの短時間にその答えに辿り着いた……!!」
バコン!と普通じゃ出ない音を出して開く扉。そして大音声が聞こえた。ユーリのものだ……!
彼の体はみるみるうちに筋骨隆々となり、まるでモンスターのようになっていった!
その顔はとても醜く、そして美しかった。
ニイ、と左右に歪められた口からは五センチほどの牙が見え、爛々と光る赤い目。オレたちと同じくらい短かった髪は、黒池なんか目じゃないほど長くなっていった。このままいくと引きずりそうだ。
「うわ、うわわ……!」
「せ、戦闘だ!おい!……あれ?」
ヘラが振り向く。そして驚いた顔をした直後、プルプルと震えだした。
「お、お腹痛くて……」
「お前らあああああ!」
ヘラが怒るのも無理はない……残った全員がこんな感じだ。しかも、よく見ると目が赤く光ったり戻ったり……まるで生きているかのようだ。
「ほう……腹痛だけにとどめて耐えるか。しかも全員。さすが悪魔……む?全員が全員悪魔ではないと?……はて……とんでもない人間もいたものだ」
「いやお前もお前で納得すんな!!」
「ノリノリですなぁ、ヘラ」
「真面目にやれよ!」
「お前だよ!!」
オレは虚空からレイピアを取り出し、ユーリに向けた。
「レイン」
「なんだ?」
「あの呪いの剣貸せ」
「なんで……あっ」
廻貌は地下に埋もれたし、あのギザギザのヨジャメーヌは廻貌のせいで折れてしまっている。さらに魔力が少ししか回復していない今では戦闘手段が剣の戦いしかないのだ。
「……お前にこの剣が扱えるのか?」
「俺にはもうでっかい呪いがかかってる。椅子取りゲームしたとしても剣の呪いは弾かれるだろうな」
「弱い剣で申し訳ないですねぇ!」
ヘラに呪いの剣を手渡す。
呪いの剣は柄の上に目が彫ってあり、そいつが黄色だの赤だのに光ると呪い付きのバフがかかる。その呪いはオレの魔力と反発しあって相殺されていたが、ヘラとなるとどうなるのだろうか……。
「なんか……ボコボコした魔力で気持ち悪いな」
「しばらく使ってなかったからな……」
それもそうだ。このレイピアとカリビアが作ってくれた剣、今渡した呪いの剣、そして今は地下にあるクリスタリオがある。コレクターでもあるまいし、二刀流するほどの器用さもない。
「……。作戦会議は終わったかい?」
「それよりよく待ってくれたな……」
「作戦を練ったとしても勝てないからね」
「大層な自信だな」
オレとヘラは切っ先を向ける。正直、目に見えないことを祈るが震えている。ろくろ首の言うとおり、とんでもない奴だ……!
ユーリはそんなオレの状態を知ったのか、ニヤ、と笑った。
「さぁ、来い!彼女がいなければ、私は無敵だ……!」
「……誰がいなければ、ですって?」
「え?」
この気の抜けた声はオレたち三人の声だ。
オレは「なんでこの声の持ち主がここにいるんだ?」で、ヘラは「いつの間にこんなところに入ってきたんだ?」で、ユーリは「そんな馬鹿な」の「え?」だった。
つまり……招かれざる者。
「大地の神!!」
「ふふふ……サニーくんの言うとおり。伝言ゲームみたいな感じだったみたいね?レインさん?」
「あれ?オレはろくろ首に行かせたはずだけど……」
「サニーくんがろくろ首に言われたらしいのよ。お兄ちゃんを助けてー!って」
「そうなのか?ふん……ちゃんとやってくれるじゃないか。見直したぞ、ろくろ首」
「そういうのは本人の前で言ってあげてね」
「……き、気が向いたら……な」
大地の神は閉じた瞳でニコッと笑った。
いつもはパジャマみたいな服だが、今回は違うようだ。スクーレに見せてもらった神に関する本に載ってたようなちょっとマシな服になっており、頼れるお姉さんって感じがしなくもない。
「なぜ……お前はアメルにいたはずでは……」
「ユーリ。すぐに決めつける……それがあなたの悪いところ。私にだってお友達くらいできるわ。あなたみたいな……ね。妖怪にこき使われるのは少し不満だけど、私の大切な友人がピンチなら駆けつけるのは当たり前でしょ?」
「ぐ……」
ユーリは何も言えなかった。ユーリだってこれくらいのことはわかる。だからこそ、何も言い返せない。
「……っぐぅうううっ!クソォッ!こうなったら、全員死ねぇ!!」
「うおっ、危ね!」
長く鋭く尖った爪で襲いかかってきた。
最前線のオレとヘラが剣で押し返す。さすが呪いの剣。頑丈だ。
「吸血鬼って全員すげー力なんだろ?これ、大丈夫なのかよ!?」
「リメルアと戦ったときも同じだっただろ。覚えてないのか?」
「嫌でも覚えてるから聞いてんだよ!!男だからなのか知らねーけどよ、リメルアより強いぞ!」
「私もサポートするわ。ユーリは頭脳戦に弱いの。こんな頭に血が上ってちゃ、冷静な判断なんてできないもの」
まるで一度倒したことのあるような口ぶりだ。……冗談だよな?まさかこいつもリメルアみたいに一度倒されて、復活して、恨みを持った状態で復活したクチじゃないよな?
「わかった!とりあえずあの爪の攻撃を何とかするぞ!」
「おうよ!……こいつを喰らいなっ!」
走り出したヘラは一瞬、ほんの一瞬だけ火力を上げて閃光を作り出した。……こんなことをすれば魔力が無くなるのが早くなるはずなのに……!!
「ぐあっ!」
「効いてるぞ!」
「ありがとう、ヘラ!おかげで麻痺効果のある花の茎を刺すことができたわ!」
「よくそんなのがあったな……」
「く、そ……」
最初は細かったのが今はモンスターのように巨体になっている。そんなユーリは地面に倒れ伏し、麻痺に耐えようとするが、強いものを使ったのか全く耐えられていない。やりすぎだ。
「ここまでだ、ユーリ」
「まだだ……!ま、だ……やれるッ!」
「いいえ。あなたはもう戦えない」
大地の神はユーリの方へと歩いていき、いつも持っている木製の杖を振り上げた。
その途端、大地の神からとてつもない力が発せられた。
「何だ、これ!」
「………………」
「ユーリ。……お疲れ様」
杖を振り下ろし、水気の入った音がした。
「ムジナ、見るな」
「ぅ……うぅ……」
何かを察し、すかさずムジナの前に行って目を隠すヘラ。いや、音だけでわかるだろ……。
「よかった……これで一段落ですね」
「ユーリとは知り合いだったのか?……って見ればわかるか」
「えぇ。アメルが聖ユグドラシル王朝だった頃、一緒にいたの。当時、植物研究家は彼しかいなくて、大地の神である私が研究を手助けしていたのよ。もちろん、正体を隠してね」
「ユーリってそんな昔の奴だったのか!?」
「そうよ。あの頃は全員の名前が『○○・ユグドラシル』だったのよ。彼も『ユーリ・ユグドラシル』だったんだから。一つの種から生まれたから、成長してどれだけ栄えても元のスタンスは変えない……ってことらしいわ」
「ハレティも?」
「えぇ」
ハレティと同じ時期の奴かぁ……。あのあたりって、「強い悪魔」とかと言うよりかは「超人の集まり」って感じがするんだけど……。ハレティだろ?アルメトさんだろ?カリビアだろ?ヤバすぎだろ。
「話を戻すわね。……ある日、ユーリはすごい発見をしたの。未来を決定するような、ね?」
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




