時を超える刑事
第二十一話 vs鬼
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「やい、悪い妖怪どもめ!とっとと退治してやるから、覚悟しろ!」
ビシッ!とレインが指をさして叫ぶ。直後、ろくろ首が後ろからぎゅう、と抱き締めた。
「もー、そんなこと言わないの。私みたいな善良な妖怪だっているんだからぁ」
「ちょ、今はこんなことしてる場合じゃ……もおぉ~っ」
……天狗たちの視線が痛い。とりあえず放置しておくか。
「……すまない。あれは放っておいてくれ」
「お前がリーダーかい?」
「誰がリーダーなんてものはない。俺はただムジナを守るだけ……」
おそらく真ん中に座っている、今話している女性が鬼なのだろう。
なんてプレッシャーだ。少しでも気を抜いたら、自然と膝を折ってしまいそうだ。
はだけた着物は、月光や皇希くらいなら惑わしてしまいそうだ。だが、圧倒的な強さを本能が感じ取ってしまい、それどころじゃなくなるだろう。普通の人間なら声を上げて逃げ出すだろう。
だが、月光ほど狂った人間や、皇希のような命を大事にしない人間なら逆に突っ込んでいきそうだ。まぁ彼らによるが。
「守るべき相手がいるのか。……後ろの黒髪の少年、かね?」
「……っ」
すっ、とムジナを守るように片手を広げる。かわいそうに、ムジナは恐怖で震えているではないか。
「恐ろしいか、死神の少年よ」
「こ、怖くなんか……ないもん!」
「その意気やよし。ムジナ、と言ったか。存分に戦おうぞ」
「お前の相手は俺だ」
「ダメだダメだ。お前には不純物が多すぎる。私は純粋な力と力のぶつかり合いが見たいのだよ」
「……チッ」
こいつ、ドラゴンソウルのことを見抜いてやがるのか……!
確かにあれは俺自身が獲得した力ではない。だが、このままではムジナを戦わせることになってしまう……!
「……俺は……俺はドラゴンソウルを使わない。だから俺と戦え!!」
「…………。嘘はついていないようだな。お前!名乗りを上げよ。互いのことを知ったのち、この戦いは聖戦となる」
よかった。なんとかムジナから興味を逸らすことができた……!
「……ヘラ・フルールだ」
「ヘラ……フルール……。良い名をしている。私は火雨桜花。現世最後の鬼だ」
桜花はスクッと立ち上がり、天狗から受け取った刀を地面に刺す。
すると、台座のようなものが轟音と共に隆起してきた。
「な、なんだ?!」
「お前たちの目的はこれだろう。ここの柱である『廻貌』、『クリスタリオ』たちをここに戻す。クリスタリオはともかく、一番力を持つ廻貌をこの台座に戻す。そうだろう?」
「俺は廻貌との約束を果たしに来ただけだ。手段は知らないが、わざわざ教えてくれて感謝する」
「……。私がお前を本気で殺しにかかると、十秒も持たないだろう。だから、こうしてやる。……『台座に廻貌を戻したら勝ち』というものはどうだろうか?」
「ずいぶんとナメられたものだな」
「おい、お前!さっきから聞いてりゃ何やねん!」
その言葉に天狗が食って掛かる。
だが、それを桜花は制した。
「やめな、無奏。お前は本当に名前の通り、協調性がないな」
「しかし、桜花様……」
「やめなと言っている。それとも無奏、お前から消してほしいか?」
「と、と、とんでもない!俺は向こうでイカヅチと見ています!」
(さりげなく巻き込まれた……無奏、覚えてろ……)
お面の人がヤバいオーラを放っている。あの人に目をつけられる前に決着をつけなければ……!
「……」
「?」
一瞬、イカヅチって呼ばれたお面の人……振り返った?
「では始めるぞ、ヘラ・フルール。一対一の……タイマン勝負だ」
「っしゃあ!やってやる!いくぞ、廻貌!」
「ヘラ、気をつけてね!」
「あぁ!」
桜花はその名の通り、淡いピンクに光る刀を右手に持ち、俺が襲うのを待っている。
くそぅ、ナメやがって……!
俺は廻貌ではなく、魔力で生み出した炎を桜花に投げつける。だが、鬼とは思えない、しなやかな動きで攻撃を避けられた。
そう、それはまるで地上に降りた天女がヒラヒラと舞い踊るようで……。
「当たらねぇ……!」
赤い着物の一部にすら当たらない。
「どうした?それが全力か?」
「んなわけあるか!うおおおおおおっ!!」
廻貌に魔法を纏わせ、斬りかかる。
廻貌と桜花の刀は、俺の腕がビリビリと痺れるほど大きな衝撃を生み出した……。
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今起こったことを話そう。
僕と師匠は駅の改札から外に出た。
ここまでは普通だった。だが……。
「師匠ー!師匠ー!!どこですかー!?」
一瞬で師匠は姿を消してしまったのだ!
「ど、どうしよう……!とにかく、わかりやすいところに行きましょう!まずは高台に…………え?」
足が止まった。
どうしてって?そりゃあ誰だって足を止めるに決まってるじゃないですか。
「び、ビルがない!車もない!しかも家が古くて……!……映画の撮影かな……でもここまで徹底するのかな……」
さっそく現実逃避まで始めてしまった。
映画の撮影なんてありえない!だって誰かの家まで壊すことないじゃないですか!
それに、映画の撮影のような非現実的なものでも本物だって学んだばかりじゃないですか!
「どうしよう……変なところに来てしまった……」
地面を見る。さっきからグラウンドのようにザクザクいっていたのは、コンクリートではなく、本当に足元がグラウンドと同じになってしまっていたからだ。
「そこなお兄さん!」
「へ?」
おばあさんの優しそうで少し焦った声で現実に引き戻される。誰もいないかと思っていたが、よくよく耳を澄ませると生活音がしていたり、話し声がしていた。
そして一番大きかったのは……。
「鬼が出たぞ!早く逃げんしゃい!」
「お、おおお、鬼ぃ?!そ、そんなバカな……」
引きつった顔をしながら一生懸命笑いをこらえる。鬼なんていつの時代だよとは思ったが、ここは信じておばあさんと一緒に逃げるしかない……。
「そうじゃ!お山には鬼が仲間を引き連れて棲んでおる……。その鬼たちは月に一度、山を下りてくるのじゃ!」
「で、ですが、僕は人を捜して____」
「諦めんしゃい!筑後も江戸もなんら変わらん!鬼は人を食うからのぅ。もう食われとるじゃろう!」
「……わ、わかりました……」
気迫に負け、おばあさんを背負って走る。
一度振り返ってみた僕は絶句した。
さっき、僕がいた場所には……もう駅は存在していなかったからだ。
僕は時間を越えてしまったのだ。
地面に落ちていた小さめの新聞を踏んだときに察してしまった。
これは新聞じゃない。教科書で見た『瓦版』だと。
「ーーっ!!」
体の温度が一気に下がる。血の気が引いて、青ざめて、背筋が凍っているのがよくわかる。頭がクラクラしてきた。もうすぐ足が縺れて倒れてしまうかもしれない。だが、そんなことをすればおばあさんが怪我をしてしまうので、自分の意識に鞭打って足を前に出す。
「そんな……そんな!」
体調不良の重爆撃に耐えながらも必死に転がるように前へと進む。
「師匠……助けて、師匠……っ」
声が震えている。泣きそうだ。
僕はどこに向かって走っているのだろうか。とりあえず遠く、遠くへと逃げなくては……。
「……はっ」
「お……うまそうな人間だ」
前に怖い顔をした黒い鬼が。一言で言うとデカい。
僕の横幅の二倍くらいある。
その鬼の大きな牙がある口には赤い、赤い液体がベッタリと……!
「お、鬼じゃああ!」
「おばあさん!?」
勝手に僕の背中から降りたおばあさんが家の方に走っていく。家と言っても、コンクリートのコの字もないのだが。木製の家なんてテレビでしか見たことがない。
「婆さんか……まぁ菓子程度にはなるか」
鬼がその大きな腕で僕の後ろを逃げていくおばあさんを掴まえようとした……!
「させるか!」
僕は剣を取り出し、鬼の腕に斬りかかった。太いし、筋肉もすごいので斬れない。妨害程度にしかならないが、ここでやらなければ刑事の名が廃る。もしかするとマリフはこうなることを見越していたのかもしれない。
今はそんなことはどうでもいい……!人を助けるのに、理由はいらない!
「ほう……面妖な侍だな」
「侍じゃない!僕は……刑事だ!警視庁特別能力推攻課の、黒池皇希だ!!」
____そうやって、僕は無謀な戦いに挑んだ。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




