使えなくなった剣は、ただの杖です
第二十二話 過去と現在
「うわっ!!」
手を払うだけで僕の体は飛ばされ、尻餅をつく。まさかこんなに早く決着がつくとは思わなかったが、おばあさんを守ろうとしてコレは情けない。
「弱いなァ」
「弱くて何が悪いんですか……」
「開き直ったか」
「人間は皆、弱いんです!ですが、誰かがやらないといけません……。桃太郎もビックリなこと、やってみせます!!」
僕の言葉が気に障ったのか、鬼は僕の剣より太い腕を振り下ろす。僕は咄嗟に吹っ飛んでった剣を拾い、避けた。
「まだ動く元気はあるんだな」
「当たり前じゃないですか!」
「なら次で楽にしてやる」
鬼はもう一度腕を振り下ろす。それを剣で受け止めた。
「う、ぐうううっ」
押し返すことはできないだろう。だが、時間を稼いで、どこかにいるはずの師匠が戦闘の音を聞いて飛んできてくれたら……!
「……あ!」
ミシ、ミシ!と剣が悲鳴をあげる。
これはアレだ。ヘラと丘の上で戦ったときに聞いた音だ。
(まだだ、折れるな!師匠を頼りにしちゃダメだ……!耐えろ、耐えろ耐えろ耐えろ!!)
上からの圧力で体がそのまま後ろにズレ、踵が砂を集める。
(僕は……東京に帰るんだ!)
「あああああっ!!」
限界まで力を入れる。
すると、突然体が前に倒れ、勢いで地面に手をつく。何が起こったのかを必死で考える。だが、どう考えても出力された答えは『鬼を倒した』ことだけだった。
「大丈夫?お兄さん」
「え?」
明るい声がしたので、見上げてみると中高生くらいの女の子が鬼の上に座っていた。その手には血が付いた刀があった。
「私は『火雨桜花』。桜花って呼んでよ」
「え、あ、あの……」
「おばあさんは先に保護したから安心して。お兄さん、よく耐えてくれた!グッジョブ!」
少しくすんだオレンジの髪をして、『桜花』の名に合ったピンクの桜が舞っている、薄ピンクの着物を着た女の子はグッ!と親指を立てる。
「そうだ、お兄さんは何て名前なの?」
「あっ、そっ、そうでした!僕は黒池皇希です」
勢いが強すぎて呆気にとられていた。
この桜花って人にはいろいろ聞かないといけないことがある。
「黒池……皇希?ふぅん……珍しい名前だね」
「桜花さん、先程はありがとうございました。あの、いくつかお聞きしたいことがあるのですが……」
「何?答えられる範囲なら答えるよ」
「ありがとうございます。では……」
ここのこと、今は西暦何年か、そして師匠みたいな人を見かけなかったかなどを質問した。
「うーん、まずここは江戸だよ」
「それは……そうみたいですね……」
僕は周囲を見渡す。
ほとんどが歴史の教科書通りだった。
「それで、今の西暦だけど……1685年だよ」
「せっ……!?」
今は二千オーバーしているはずだ。
「あと、帽子で着物なんて人は見かけなかった。お兄さん、夢でも見てんじゃないの?」
「一番夢であってほしいのは僕の方です!!」
時間を越えたなんてそんな馬鹿な。映画でもあるまいし。
「でも……似た人なら……」
桜花さんはチラ、と貼り紙を見る。そこには……。
「し、師匠!?」
師匠っぽい人のお尋ね者の貼り紙があった。
師匠がお尋ね者……。まぁ最初は人間が嫌いだと聞いていたが……。
だが、師匠はそんなことをする人間ではないはずだ。警察である僕のそばにいる人間なのだ。『人を殺してはいけない』。それくらいわかっているだろう。
「師匠って……この人は『獅子ヶ鬼剣一』。人斬りで、お尋ね者なんだよ」
「嘘です!そんなことありません!師匠はついさっき僕とこの時代に来たはず……出会って早々、人を斬るほど野蛮ではありません!」
「でもお兄さんはこの人を『師匠』って呼んだ」
「ぅ……そ、それは……」
言ってしまったものはしょうがない。だが、これは……どう見ても師匠だ。『獅子ヶ鬼剣一』という名前は一度彼の口から聞いたことがある。ということは……本当に師匠が人殺しを?
「……。私、獅子ヶ鬼剣一の家、知ってる」
「え!?本当ですか!?」
「でも!……殺されるかもよ?」
「それでも行きます。師匠の戦闘能力はモニター越しですが、把握していますので」
「モニター……?まぁいっか。山登りだけど男だし行けるでしょ」
「山っ……え?」
山登り。
現代ならまだしも、江戸時代の山って……今より自然に満ち溢れているのでは。熊とか出てくるのでは。
「大丈夫!もし動物が出てもお兄さん強いでしょ!」
「いえ……実は……先程の耐久戦の時、剣にヒビが入ってしまい……」
「え?それ遅かった私のせいだっていうの?」
「ちっ、違います!力不足の僕のせいです……」
チラッと剣を見てみると、柄の根本辺りがグラグラしていた……。
「……しょうがないかぁ……鍛冶屋さんにでも行って、直してもらおっか。お金はある?」
「はい。……あっ」
取り出したのは一万円札と小銭。嫌な予感がする。
「小判はある?」
「な、ないです……魚でも釣って物々交換に持ちかけようと思います……」
「物々交換?!お兄さん、一体どこの人よ……」
はぁ、と呆れる桜花さん。
この国の未来から来ましたなんて言えない。発展じゃなくて衰退だなんて思われたくない。
「しょうがない、私が出す。そのかわり、相応の結果、待ってるから」
「良いのですか?!……わかりました。頑張らせていただきます!」
__________
「そこだっ!」
台座までの道に開いた隙を縫って走る。
ガードは固いものの、あまり攻撃はしてこないようだ。もしこれがいつもの戦い方であれば、攻撃役は無奏なのかもしれない。
「させない」
「くっ……」
血の気の多いヘラのことだ。廻貌を戻すのではなく、鬼を倒そうとしているのだろう。
「タイマンなんて勝てるわけないのに……!くそ、手伝えないのがツラい……!」
「なら応援してれば良いじゃない」
「向こうが何も言わないから応援しにくいんだよ!それとも何だぁ?『桜花さまは絶対に負けないから応援も不要だ』なんて言って応援しないのか?自信の塊すぎだろ」
「……。彼を見てみなさいな。じっと耐えてる」
「えぇ?」
ろくろ首の言う通りにムジナを見てみた。
「………………」
微動だにせず、まるでヘラの戦い方を観察するように見つめている。
「ムジナみたいに静かにしろってか?」
「いいえ、私はレインと話すのが楽しいからこのままでいいわぁ♪」
「……好きにしろ」
ろくろ首は嬉しそうな顔をし、オレに覆い被さる。重いからやめてほしいが、同じ女であるスクーレに同じことを言うと斧でブッ叩っ切られそうなのでやめた。
「……でもなんで反撃しかしないんだろうな」
戦闘の様子を見てポツリと呟く。
その反撃と言っても、わざと逸らして地面を壊し、ヘラの足場を崩すくらいしかしていない。
「そもそもどうして最初からタイマンを望むような言葉を言っていた?複数だと都合の悪いことでもあるのか?」
うーん、と悩む。こんなことを考えても意味無いと思うが、暇なので考えるしかない。ろくろ首は知っているからだろうか、何も言ってくれない。
……今はただヘラの勝利を願うだけだ。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




