鬼の居場所へ
第二十話 最後の部屋
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「ムジナ」
「よっ……えへへ」
ヘラの温かな手を握り、一人がやっと通れるほどの狭さになった廊下を歩く。
後ろを見ると、レインはろくろ首さんとマフラーの取り合いをしていた。
「破れる!破れるっ!あと首絞まるからっ!!」
「あら、締まって死んだら、私が手取り足取り幽霊としての振る舞い方を教えてあげるわぁ」
「イヤだぁ!」
「つれないこと言うのねぇ……昔からそうじゃない。ふふ、変わらないのねぇ」
「お前とはそこまで深くねぇだろ!!」
オレが二人を見て苦笑いしていると、ヘラが舌打ちして冷たい視線を向けた。
「……さっさと来い。来ないならろくろ首と二人きりにするぞ」
「いっ、行きます!行きますって!だああ、離せぇっ!」
「行かなければ一緒になれるのでしょ?ふふふ、全力で邪魔しちゃうわぁ」
「しなくていいわ!!」
レインは喚き散らす。
ヘラは諦めたのか、ポリポリとこめかみを掻いた。
「……行くぞ、ムジナ。俺たちだけで鬼を倒す!」
「無茶だよ、ヘラ!次が最後なら、天狗さんもいるかもしれないんだよ?数で勝ってる方がいいって!」
「お前には天狗が見えない。なら人数が減っても変わらん」
「それは……そうだけど」
「これはある種の『部屋の試練』と考えた方がいい。わざと興味ないフリをしながら進むんだ。レインを焚き付けながら、進まないとレインを失うことになる……そうなったらサニーが悲しむだろ」
「……わかった」
前からヘラ、オレ、レイン、ろくろ首の順番で歩く。
最初はみんなで横一列に並んで歩けたのに、今じゃ一人ずつ体を横にして、壁に手を当ててゆっくりと歩かなければ通れない。
どうして細くなっていったのかはわからないが、たぶん簡単に帰さないという意志がそうさせたのだろう。
エガタはクリスタリオが出てきて以来見ていない。もしかするとエガタ自身が知らない道になっており、変に案内したくないからなのだろう。
「うぅ、せまぁい……」
「我慢しろ、ムジナ。俺だって狭い」
「本当にこんなところに鬼なんかいるの?」
「その鬼のところに行こうとしてるんだろ。イアだって言ってたじゃないか。『地下には鬼がいる』って」
「うん……。勝てるかな?……いや、エガタのためにも勝たないとね!」
ガッツポーズをしたオレの目の前に刃物が向けられる。
何事かと固まる。狭いので逃げるに逃げられない……。
「廻貌!こんなせっまいところで出てくんな!!」
ヘラがキレ気味でエガタの柄を握る。異界に押し戻そうとするが、エガタが抵抗して入ろうとしない。
「何だよ、せっかくヒトが「その意気だ!」って誉めてやろうとしたのに」
「時と場所を選べよ!てかお前『ヒト』じゃないだろ!剣だろ!」
「残念でした、中身はヒトですぅ~」
「くうううっ!!こんのぉ!」
歯を食いしばり、顔を真っ赤にしたヘラが廻貌を異界にブチ込んだ。
「エガタだって、頑張ってほしいって思ってると思うよ」
「それはわかってる……わかってるんだ」
「ヘラ……」
ヘラは前を見る。
もう廊下の出口だ。
鬼、すごく強いって何度も聞いた。……大丈夫だろうか。もし、ここで死んだら……。
「妙なことは考えるな。真っ向勝負なら確実に負ける……だから、作戦は立てているつもりだ。安心しろ。お前は殺させない」
「なら、オレもヘラを殺させない。絶対、絶対、ぜぇーーったい!!」
「その調子だ、ムジナ!やるぞ、魔界を守るんだ!」
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話し声が聞こえる。奴らはもうそこまで来ているのか。
桜花様は目を瞑っている。瞑想でもしているのだろう。
鬼だ、妖怪だと言われ、江戸を追われ、人間界を追われ、魔界を追われ、そしてたどり着いた地下の世界。ここまで追い出されたらどこに住めば良いって言うんだ……!
「もうすぐ来はりますよ……あなたをボコボコにした悪魔たちが……フフフ……」
「うっさいねん、仮面野郎!」
キツネのお面を身につけ、着物を着た軍師に当たる男が桜花様の玉座の向こうから煽ってくる。
「おやおや、頭に血が上って……そんなだから負けたのではないのですか?」
扇子をパンッ!と閉じ、それをこっちに向けてくる。お面の下で光る目は、不気味な雰囲気を醸し出していた。
「そんなわけない!ただ、アイツだけは絶対に許さへん!」
「アイツとは?」
「アイツはアイツや!赤いのと、黄色いのと、黒いののうち、黒いやつ!アイツ、こっちのことが見えてへんらしい!」
「見えていないなら闇討ちすれば良いじゃないですか」
「それやろうとしてんけど、赤いのが鬼の形相で襲いかかってくるから無理やねん!鉄壁やで、あの赤いんは!」
「ですが、式神からの情報ですと、防御はマフラーの少年が一番だと聞いていますよ」
「そういう話やない!」
確かにあの黄色いのは、妖怪が嫌う忌々しい結界を使う。
なぜ悪魔がそんなものを使えるのかはわからない。だが、脅威であることに変わりはない。
____それより死神や、死神……!
死神ってやつはいつもいつも邪魔してくる!江戸におったときもそうや……。せっかく人間を追い詰めて食うたろう思ったのに、いきなり出てきよった死神のせいで逃してんや……!食べモンの恨みは怖いとか言いよるけど、人間くらいなんぼでもおるし、一人くらいええ。
でもなぁ、絶対に死神だけは許さへん!死神は一人残らずぶっ殺さんと気が済まへんのや……!!
「なんですか、そんな怖い顔して……」
「……腹立つんや、お前のその微妙な関西弁が」
「おや、私は京の者ですよ?もっとも、京を捨て、江戸に来ましたがね……」
「せやけど、お前のそのしゃべり方、方言が抜けてへんで」
「あなたほどべったべたな関西弁を話す人は見たことがありませんがね」
「なに中途半端にキレとんねん!」
「キレていません」
「ぐぬぬぬぬ……!」
口もとで扇子を開き、クスクスと笑う。
そういうところが気に入らんって言ってるのに……。
「……二人とも、うるさいぞ」
「おっ、桜花様!」
「申し訳ありません。この馬鹿が騒ぐので、抑えようとしたのですが……」
「イカヅチ、お前もだ。私の左右で喧嘩するなと言っている。無奏、お前が死神を忌み嫌っていることはわかっている。だが、今は抑えろ。わかったな?」
「……はっ」
桜花様の紫色の瞳がギラリと光る。
桜花様……火雨桜花は、とてつもない力の持ち主だ。俺やイカヅチのヤローはかつて彼女にボコボコにされ、それと同時にその力に惚れ、ついていくことにしたのだ。
どれほどの時間、彼女に付き添っているのかわからない。だが、俺たちはこの結果に満足している。
彼女はその強すぎる力故に人間たちから恐れられていた。その噂はこっちの山にまで及んでいた。
彼女を封印するために数々の術師が駆り出されていたが、最後の砦として呼び出された術師が封印に成功した。あれほどの封印術を成功させられる人間が存在することに驚いたが、そいつが跡形もなく消えたので、それは幻として処理された。
俺はそいつが死んだとは思っていない。もしかするとあの黄色のやつに生まれ変わっているのかもしれない。
だが、そんなことはどうでもいい。すべては、いつか悪魔どもをブチのめし、妖怪が気持ちよく暮らせる世界を作るために、俺は……!
「無奏」
「何でしょうか?」
「……あまり力みすぎるでない。お前はいつも通り、お前らしく戦えば良い」
「勿体なきお言葉です」
「……」
……一瞬、桜花様は悲しそうな目をした。
そして、この平穏に終わりが来る。
目の前の扉が吹き飛ばされた。
そこには……煙に包まれた、赤い姿があった。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




