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尋ねると、一度俯いた美鈴は、すぐに顔を上げた。
「神さまなんて、いらない。どんな不条理も、理不尽も、わたしから大切な人たちを奪おうとするなら、全部わたしがやっつける」
美鈴は決然と胸を張って告げた。
その周囲に百以上の神々のうちのひとつだったものが顕現する。さらにあまたの神話の終焉に登場するキーパーソンたちが次々と顕現していく。
世界を滅ぼすには十二分すぎる勢力が、美鈴のライブラリから顕現させられていた。
薫の資料には、今美鈴の魔力数値が表示されていない。
それどころか美鈴を中心にして約五十メートル以内に魔力が溢れ、蜃気楼のように美鈴の姿が歪んで見えるほどに力場が歪んでいた。
その蜃気楼の端ですら、アッガレッシオンを遥かに凌駕するほどの魔力が検出されているという。その中心点、現状での美鈴は一体どれほどの魔力を擁しているのか想像もつかない。
「天沢さん……」
静かな声が、薫を呼んだ。震える拳を握り込んでいた薫は、びくりと肩を跳ねさせて返事を返す。
「この”人たち”を、上手に使ってあげて。間違えると、終わっちゃうから」
なにが終わってしまうのか尋ねたかったが、背筋を這い回る寒気がそれを咎めた。
「任せて。あんな偶像、一瞬で葬って見せるわ」
薫は高射砲を魔力に解体して、無線通信機に作り変えて黄昏の輩に渡した。
瞳を憎悪と殺意にたぎらせた彼らは、まさしく世界中のすべてを怨んでいた。世界を滅ぼす狂気を、薫は実感して竦みあがりそうになる。
「じゃあ、はじめるよ」
静かに、漣すら立たないほど静かな声で美鈴はしっかりとつぶやく。
それに呼応して怒号を上げ、世界を滅ぼさんと憎悪をたぎらせた終焉の軍勢が、手に手に世界を終わらせるための武器を掲げた。
「さあ、神を殺すわよ」
薫が命令を下すと、指示通りに最前列が躊躇うことなく突っ込んでいった。
「我を行かせよ! 神の血を啜らせろ!」
興奮してわめくものは無視して、戦術を練っていく。半数以下にまで減った”目”で何とか敵の弱点を探し出す。
「第一陣は逐一状況を報告しなさい」
世界を壊すための兵隊が、神に立ち向かっていく。
「ああ、来てくれたのね……」
薫がつぶやくと、何かが落ちてきた。
混ざり合った神の頂上から、それは落ちてきた。
鋼色の鎧。絢爛豪華なマント。
手に巨大な剣を持った、それは、
「うれしいわ。アッガレッシオン将軍。自ら、殺されにきたのね」
『我は神聖アルマニア帝国奪還軍軍長、アッガレッシオン・ウンド・エロベルング・ヘッレシャフト・ドゥーチ・ダス・シュヴェード=剣元帥。三桂評議会が第三席。我が戦道にただ一度の敗走を刻みつけた、極辺境の恐るべき大魔女よ、いや、ウンミット・インメル・ゲヴィネン・ヘンリッヒケント=全軍団長。貴将とこの剣を交えんとあい参った』
巨大だ。気迫が、前回とは桁違いだった。あらゆる術を使い、残りの命すらこの戦いの為だけに燃やし尽くしているに違いない万年の戦を渡り歩いた大将軍は”今ここに立っている”のだ。




