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アッガレッシオンが布陣しているであろう場所から、まっすぐに美鈴たちのいる校舎に向けて地面が裂けていた。冗談のように深く刻まれたその裂け目は、美鈴の位置からでは底が見えないほど深い。
「【聖剣】は女王を守るためにしか使えないはずなのに……」
シャルロットの脳裏に絶望的な予想が頭をよぎり、その場に座り込んでしまう。恐怖で胃が締め上げられて吐き気がこみ上げた。
「後方、ここから三千八百メートル離れた敵本陣に、新たな魔法使いが複数転移してきたわ。その中の一人が、魔力の数値化ができないほどの力を持っているようね」
測定不能と書かれた一番最後に転移してきたその人物が、おそらく帝国最高権力者だろう。
「気づかれた、みたいね……」
薫は更新された情報の中に、魔力探査かく乱が一部除去されていることと、偵察機が三機ほど破壊されていることが付け加えられていた。女王の登場は想定していたが、さすがに早すぎる。アッガレッシオンにダメージを与えてからだろうと思っていた。
「アルマニア帝国女王陛下、御出座! 聖ディ・ビズィット・フォン・マイナー・ヴェルト=茨の女帝法王陛下御出座!」
七つの目を持った大鷲の群が、嘶きながら空を埋め尽くす。聴く者の心を掻き毟る耳障りなひび割れ声が、街を埋め尽くす。
その嘶きを、シャルロットは耳を塞ぐように頭を抱えてうずくまった。恐怖に震え上がり、青ざめた頬に涙が伝う。この空を見た者の、それが正しい反応なのだ。
薫は奥歯をかみ締め、ゆかも中空に立ち止まりその空を見上げていた。
空を埋め尽くしていた大鷲どもはいつしか嘶きを止め、ひとつに固まっていく。
轟音と共にゆかが屋上に戻ってきて、そっと三人に寄り添う。美鈴はただ一点、敵本陣をまっすぐに睨んでいた。
「なに、あれ」
ゆかに尋ねられるが、薫も偵察機がすでに半数が撃破されてしまい、情報量が著しく減少している。ましてかく乱まで解けているとなれば、状況は悪い。
「なにか映った」
ゆかが声をあげると、美鈴以外が顔を上げた。上空に浮かんだ黒い塊に、人の影が映った。ベールで隠したような胸像だった。
『わたくし、百九十三代アルマニア帝国皇帝、ディ・ビズィット・フォン・マイナー・ヴェルト=茨の女帝です。最後の煉獄である、極辺境の鬼の皆様。もうご安心ください。本日より、この地は神政アルマニア帝国の統治下になります』
鳴り響く声に、ゆかだけが首をかしげた。
告げられた言葉に、一体どれだけの人々が耳を疑ったか。いや、そもそも続けざまに襲う異変に恐怖しなかったものは居ないだろう。
『つきましては、反抗勢力の殲滅を兼ねて、この街を燃やそうと思います』
燃やすのならば、この街にいる人間すべてを殺すということなのだろうが、その突拍子のなさに我が耳を疑った。
「天沢さん、撃って!」




