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グランドの外に待機していた帝国軍の歩兵たちが次々と戦陣を切っている。分厚いコンクリートの壁を集団魔法を使って破壊しなだれ込んでいた。
「弾種は、矢がいいわ。昔歴史映画で見たのだけれど、脚を使って引く大きな弓があったと思うのだけれど。それの矢を大量に出せる?」
ライブラリから検索。即座に出た回答を元に、美鈴は頷いて美鈴の体ほどもあるコンテナを数十個顕現させた。薫は一瞬首を捻ろうとしたが、すぐにああと頷いた。
「ありがとう」
高射砲の三本ある装填装置が、顕現されたコンテナを掴んで装填口の上に取り付け、砲は敵を直接狙わずに空を狙い圧縮した魔力を薬室で燃焼させ、矢を射た。
美鈴が顕現させたコンテナは矢を大量に納めた、いわば弾倉になっている。ひとつに百本ほども矢が収められたそれにより、薫の砲は一秒間に五発のペースで矢を発射する。射出された矢は一度空へ向かい、鏃と羽の関係から降下を始める。放物線を描いて雨のように進入してくる歩兵たちに降り注ぎ、突き刺さっていく。
若干の魔力を帯びた矢は一本目を防げたとしても、二本目は結界を貫通して歩兵を貫く。
驚異的な雨に動きを止めた敵は、五人ずつ固まりを作って集団魔法の結界を作り守りに徹した。
その様子を資料で見た薫はにっと笑みを浮かべ、無線機を掴む。
「ゆか。入り口で立ち往生している暗愚の群の上を通過して」
『分かった』
刹那、校舎の囲いもろとも地面が裂け、そこにいたものを砕いた。
移動中のゆかは音の四倍の速さである。その彼女が少し剣を突き出して切っ先のごく一部だけ結界を弱めれば、全長数キロにも及ぶ衝撃波の刃が飛び出す。今の彼女は目に見ることすらできない速度で飛ぶギロチンの刃だ。
ゆかの剣に裂かれた大地は、その高温で真っ赤に焼け爛れていた。いかに集団魔法で強固な防御を施したとしても、アッガレッシオンですら吹き飛ばされる攻撃を、なんの特徴も無い兵卒が防げるはずがない。
ことごとく破砕されていく歩兵たちは徐々に戦意をそがれて、でたらめに矢を射ていた。魔力を帯びてはいるものの、殆どが城壁に当たるが虚空を射るだけに終わっていた。
「すごい……」
軍団を相手にたった四人で渡り合っている。現状ではむしろ優勢である事実に、シャルロットは自分が夢を見ているのではないかと疑った。
「こんな程度、ゆか一人でも全滅させられ……」
新たに更新された資料に目を落とした薫は、初めて顔色を変えた。
「美鈴!」
叫ぶ声と、衝撃が重なった。目に見る衝撃の波と共に、金色に輝く魔力の残滓が周囲に四散する。
美鈴の無意識が召還した無数の盾がなければ、その衝撃の根源を食らっていただろう。
「な、なに?」
防いだ本人は状況を理解していなかったが、薫は奥歯を食いしばり被害状況の把握をはじめていた。
「あ、アッガレッシオンが【聖剣】を抜いたんだ……」
シャルロットが震える指で、盾が消えて見えるようになった景色を指さす。
「うそ……」
街で三番目に高いこの校舎の屋上からは、隆起がほとんどないすり鉢状の街を見渡すことができる。見渡せた街に言葉が出なかった。




