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「美鈴。グランドを爆破して」


「え?」


「蛆の嘶きなんて、聞きたくも無い」


 上品な笑みの奥には、確かに憎悪の炎が上がっている。それを垣間見えた美鈴は、素直にグランドの散水装置の中に大量の爆薬を顕現し、起爆させた。


 宣誓をしていた騎士達の足元が、爆ぜる。爆発と同時に逆泉家に伝わる、対魔法結界の刻印が打たれた弾丸が爆ぜた地面から無数に飛び出した。


 最低限の防御結界しか張っていなかった弓兵たちは、一撃にしてその殆どがミンチ肉になった。


 ふんと鼻を鳴らして、薫は死体野原を見下す。まだ息のあるものも居るようだが、体の中に食い込んだ弾丸が変異して毒をまいている。あと二分ほど苦しんで死ぬことだろう。


「美鈴。扇撃ちのかぶら矢をひとつ出してもらえる?」


 一瞬何のことか分からなかったが、自動検索されたライブラリから要望のものがひとつ出てきた。美鈴は自分の右手にその矢をひとつ出し、薫の高射砲に渡した。


 全自動で装填された弓矢は、大昔の戦争で入り江に浮かぶ船の上に立てられた扇の要を正確に射抜いたとされる、必中の矢だ。その矢を装填された高射砲は、膨大な量の魔力をグランドの死体の原から吸い上げて凝視くさせた。


「受け取ってくださる? アッガレッシオン将軍。負け犬の吠え面には、すこし豪勢ですけれど」


 轟音。光線のように、光の尾を引いてかぶら矢が砲身から飛び出した。



 光に匹敵した速度で飛来した矢は、アッガレッシオンの驚異的な動体視力をもってしても捕らえることはできなかった。


 新しく作り直した体の中心を射抜く寸前で、予め薔薇侯爵が展開していた結界が防いだ。激しい閃光が上がり、防いだにもかかわらずアッガレッシオンの胸鎧が溶解している。


「伊達や酔狂で、その名を胸に抱いたわけではなさそうですね」


 薔薇侯爵は戦慄を隠せない顔でつぶやく。


「将軍殿、全軍を投入してみては? いかに秀でた能力を持とうと、所詮は少数」


 薔薇侯爵が進言すると、全身の殆どを魔法機械に置き換えたアッガレッシオンが前に出る。


『全軍、進撃。総火力を以て焼き払え』


 アッガレッシオンはすでに口を使って喋る能力を失っていた。念波を使って一万以上の、帝国奪還軍に指揮を出す。


 全兵が前に踏み出した。



 敵の情報を見た薫はふんと鼻を鳴らして、ちらりと美鈴を見る。


「美鈴、とてつもなく切れ味がいい剣と、ものすごく頑丈な槍ってあるかしら?」


 尋ねられると同時に、美鈴は検索を開始していた。要望ヒットのものは複数ある。神話や伝記の中にはその手の武具が殆どを占める。英雄や神の使う武具というのは前提として壊れず、何ものにもくじけないのだ。


「いっぱいあるよ」


 魔力を温存する関係上、全部というわけには行かない。その中でもどれを出せばいいのか、指揮官である薫に指示を仰ぐ。


「英雄記とか、そういう方が魔力の消費が少ないでしょう? その中から適当に見繕って」


 頷いて二つの武器を顕現化させた。


 それを見て、高射砲に後付けした受話器を掴んだ。


「ゆか。見える? この武器を持って、敵陣を分断してちょうだい」


『分かった』


 その瞬間突風が吹き荒れ、ゆかが美鈴の隣に立っていた。


「もう誰も傷つけさせないから、ね」


 面貌の下でゆかが微笑んだのが、美鈴にも分かった。甲冑の篭手が細心の注意を払いながら美鈴の髪をなでる。それでも直美鈴は眉をハの字にさせて、頭三つ分高いところにあるゆかの顔を見た。


 もう一撫でして、ゆかは新しい武器を両手に持つ。


「じゃ、行ってくるね」


 轟音を残して、ゆかの姿が消える。彼女の魔法は自分の周囲の物理法則を操ることに特化している。魔装具と合わせて使えば、初速で音を超える。そのため爆音と共に立つのが辛いほどの強風を巻き起こした。


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