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「おねがいだから、もう帰って……ッ!」
血を吐くような叫び。それを聞いていたゆかと薫が思わず飛び出していた。
「みーちゃんッ!」
枯れた声で、美鈴を背後から抱きしめる。その背中はあまりにも神々しいのに、痛みを伴っていた。身悶える小さな背中を見るのが、耐えられなかった。
「もう、いいよ。いいから……」
咽ぶゆかの声に美鈴ははっとなり、唇を噛み締めた。
「わたし、わるいこ、だから……」
一瞬意味が分からなかったゆかと薫。美鈴はそっと二人の手に触れ、一歩前に踏み出す。
「帰って。近づかないで」
強く言うと、中空から一振り、鞘つきの片手剣を取り出して鞘を持つ。以前にも使った、敵意を向けるものを自動的に攻撃する太陽神の剣だ。
憎悪で狂っていてもそれが危険だと本能が告げたのだろう。黒騎士の残骸は動きを止めて間合いを計る。
空白のような時間が生まれ、野次馬が出てきた。遠巻きに見て、携帯電話のカメラで黒騎士を撮影する。無用心に近寄らないか、それが気がかりで仕方ない。
そして注意されないと分かり、野次馬達は好奇心から不用意に近づいていく。美鈴は奥歯をかみ締めて、前に出た。
「近寄らないでください。危ないです」
破壊された食べ物屋から美鈴が出ると、一気に視線が集まった。そしてその中にどうやらクラスメイトまでいたようだ、どこかから美鈴を呼ぶ声が聞こえた。心のどこかが冷や汗をかいているが、それどころではない。
すると、野次馬の中から警察官が飛び出してきた。さらにまずい事態になっていく。
「き、君。手に持っているものを捨てなさい!」
まず最初に注意されたのは、美鈴だ。法で規制された長さの十倍近い刃物を持っている少女が居れば、その行動は当然である。
そして部品になっている黒騎士に、警察官の一人が近づいた。
「ダメッ!」
咄嗟に叫んだが遅かった。その瞬間、黒騎士の短くなったマントが警察官の胸に突き刺さった。
「ぐ、ぉお、が」
音を立ててしぼんでいく警察官。とっさに美鈴に近づいていた警察官は、腰の拳銃に手を当てそっちに向かった。
「な、なんだ!? 何が起きて」
そしてその警察官にも、蛇が突き刺さる。
野次馬たちは、やっとそれが危険なものだと気がついたらしい。悲鳴をあげ、その場から逃げ出す。
二人の人間をすすり上げた黒騎士は、元の長さに戻ったマントを使い、蜘蛛のように機敏に動き出し、逃げ遅れた美鈴と年のころが同じくらいの少女に目を向けた。
美鈴は顔をゆがめ、周囲に無数の盾を呼び出してそれが逃げる人を追いかけないように道を塞いだ。
しかし、それはフェイントだった。黒騎士は美鈴の横をすり抜け、その後ろにいたヴィエダーに飛び掛る。
「だめっ!」
体は反応できた。ヴィエダーと黒騎士の間に、盾を割り込ませられた。大きな盾にぶち当たった騎士の胴体は、それを踏み台にもう一度跳躍した。狙いは、
「え?」
ゆかと薫だった。




