↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/13

所謂、あ〜ん、というやつ



シーザー様に体重を預け密着したまましばらく、次に到着したのは中心地より少し郊外にあるという会員制のレストランだった。

服の試着にかなり時間がかかったので、現在の時刻はお昼を結構過ぎていたが、今から昼食を取るらしい。

レストランと言うよりも、貴族の豪邸のような外観。

ここでも店前で車が止まり、2人で降りると少しして自動で敷地奥にあるらしい停車場に走り去っていった。

店前には私達が到着するより前からお店の人が立っていて、歓迎の言葉を口にしたあと中庭に面したテラス席に案内してくれた。



テラス席はこちらから中庭の景色は見えるが、店内や席の側面からはこちらの様子が分からないように上手く生垣に囲まれていて、外なのに個室のようなプライベート空間になったいた。

中庭は色とりどりの花が計算された美しい配列で並んでいて、植木や小さな花をつけた木々もバランスよく並んでいる。

周りから隔離されたようなこの席の空間もあり別世界に来てしまったかのようだ。

トリニトゥリテの温室エリアや庭園エリアも綺麗だけど、ここはまた違った綺麗さが詰まってる。

何より澄みきった青空も、頬に感じる緩(ゆる)やかな風も、空から降り注ぐ光も全部本物。

日本にいた時とは完全に同じものではないのかもしれないけど、それでも久しぶりの太陽で、大地で、外の、自然の中の空気だ。

懐かしさに目頭が熱くなる。



「マナ、気に入った?」


「ーはい、すみません。感動してしまって…」

目尻に浮かんだ涙をシーザー様が親指で優しく撫でてくれる。



「マナは今日、初めてお店の外に出たんだよね。

外はマナの見た事ない物で溢れてるんだろうけど、それを僕も一緒に見れて嬉しいよ。

したい事や見たいもの、知りたい事があったら何でも言って。

マナが嬉しいと僕も嬉しいし、マナの初めてをたくさん貰えるなら、僕は何でもするよ」



わざとキザったらしくウインクして言ってくるシーザー様が何だかおかしくて、小さく笑ってしまった。

「ありがとうございます。」

そう言って笑顔を向けると優しく笑って抱きしめ、頭を撫でてくれる。

その腕の中が心地よくて暖かくて、凄く安心する。



そうして私の気持ちが落ち着くまで抱きしめ続けてくれた後に運ばれてきた料理や飲み物は、見た事無いものから、トリニトゥリテでも扱ってるものまで様々だった。

この世界の食事情は見た目は洋食に近い物が多い。

味は自分で食べる機会が今までなかったから分からないけど…摂取許容範囲内なら食べても大丈夫だろう。

死ぬ前も私は食べることが好きだったし、正直すごく興味ある。

興味深そうに眺めている私にシーザー様は食べたい物があるか聞いてくれた。

トリニトゥリテに来るお客様は、愛玩人形の取り扱いについて一通り教えられているので、シーザー様も私達の普段の食事事情を知っているのだろう。

正直無作法だと思う私の事を咎める事もなく、嬉しそうに見守ってくれている。

興味が惹かれるものを端からどんな味がするのか聞くと、分かりやすく食材や味、食感などを教えてくれる。

目移りしながら尋ね続けても嫌な顔ひとつ、彼はしなかった。

その中からいくつか選んで、少しづつだけ貰うことにした。

カプセル以外の食べ物を口にするのは今日が初めてだけど、ヤージュから一般的な摂取許容量は教えて貰ってる。

お店では食べ物も飲み物も口にしたことはなかったし、プライベートエリアでもカプセル以外の摂取はなかった。

検診の時にヤージュの前でだけ、少量の飲み物を飲んだくらい。

それでもこれくらいならまだまだ余裕だろう。



そんな事を考えていたら、私用に切り分けを終えたシーザー様が、おいで、と横にくっついて座っていた私を抱き上げて、自身の膝に私を横抱きのような体勢に座らせた。

突然のことに何の抵抗も出来ず座らされ、何が起こったのかを理解した時には既に、口元に切り分けられた食べ物があった。

その食べ物から食べ物を刺しているフォーク、それを持っている骨ばった男性的な大きな手、しなやかなのにしっかりと筋肉がついているのが服の上からでも分かる腕と視線を滑らせ、私をこの体勢にした本人の顔に辿り着くと、思っていたよりも近くにその男性的で綺麗な顔があった。

印象的なグレーの瞳が甘やかに細められている。



「口を開けて、マナ」


「あの、シーザー様、自分で、食べられますっ」



膝に乗せられ給餌された事なんてもちろんない。

バリバリの日本人的な感覚の私にはもう恥ずかしさが限界突破して顔が爆発するんじゃないかと思うくらい真っ赤だ。

絶対、半端なく真っ赤だ。

予想外の事に頭の中がわあわあなって、何も上手く考えられなくて、手もあわあわと胸の前で変な動きをしていて、ひたすら自分で食べられる、と主張を繰り返したけれど、シーザー様は全く譲る気がないらしく微笑んだまま。口元のフォークに刺さった食事もそのままだ。

無言の圧力に負けて、心底困り果てた末、大人しく口を開いた。

シーザー様は嬉しそうにそっと私の口の中にフォークを差し入れて、私がもぐもぐ咀嚼するのをじっと眺めた後、次はこれだとまた別の料理を口元に持ってくる。

それは、私用に切り分けられた全部を食べ終わるまで続けられた。

正直、恥ずかしさと緊張で味なんて分からなかったが、私を膝に乗せたまま嬉しそうに自分の分の食事を始めた彼を見て、仕事としてはやり切った達成感も少し感じ、ホッと胸を撫で下ろした。






まだまだシーザーの甘々攻撃続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
続き楽しみに待ってます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。