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嘲りの中で灯る真なる眼

 

 間宮と出来流は次の研修室に向かうまでの間、ずっと言い合っていた。

 俺はその間で相槌を求められているだけだった。


 まったく、やめてくれ。

 俺の前で知らん喧嘩をするのは。


——俺たちは次の研修室に到着した。

 長机がいくつか並んでいて、そこに「三つ」の座席が用意されていた。


「なあ、ユウ!」

「裕翔くん」


 二人は眩しいような、競争心に満ち溢れた闘牛のような瞳を俺に向ける。


 どうやら俺は、ここで、次の研修に備えたパーティーメンバーを決めなくてはならないらしい。


「えー……とりあえず新入社員の皆さん。そんな入り口に立ってると邪魔だから、空いてる席に座ってね」


 少し肌の焼けた、細めの中年男性社員がそう言った。


「……」


 俺は決めかねていた。

 次の研修では、四輪プラモデルを組み立てる。


 その際に、仲間にするならば間違いなく間宮だろう。

 なぜなら、頭が良さそうだからだ。


 だが、出来流はどうだろうか。

 彼も頭はキレる。それに、プラモ作りも好きそうな雰囲気だった。


「はいはい。もう二回も言ってるよ?そこの三人。一番前の席に座って」


 男性社員は呆れたような口調で俺たちにそう言った。


 そうか。椅子は三つあったんだ。

 どちらか片方だけを選ぶ必要がないんだ!

 つまり俺は、この一つの長机に、出来流と間宮を座らせても構わないのだ。


「わかりました」


「ゆ、ユウ?」


「裕翔君?」


「出来流さん。間宮さん。一緒に座りましょう」


 俺の言葉を聞くと、二人は顔を見合わせた。


「一次停戦だな」


「仕方ないわね……」


 なんの停戦だか知らないが、俺は長机の真ん中の席に座った。


 よしっ!


 これで、わからないことを両サイドから聞ける。

 怖いものなしだ。


——チャイムが鳴ると、焼けた肌の男性社員は、全ての新入社員に四輪プラモデルを配った。


「はい。今から君たちにはね、これからこのプラモデルを作ってもらいます……。とまあそんな話をしている私が誰かと申しますと、私は恩田です。実はね、私はこの本社の近くに別荘を買っててね、まあ、別荘といっても……」


 恩田はひたすらに自分語りを始めた。

 プラモデルのことを忘れてしまったのだろうか?

 俺もあるな。そういうこと。

 俺は共感しながら聞いていた。


 だが、出来流と間宮は違った。

 出来流は俺でもわかるくらい下手な作り笑いをしながら話を聞いている。

 間宮はため息をつきながらシャープペンシルを回していた。


「はい。とまあ前置きはこれくらいにして……」

 時計の長い針は半分ほど傾いていた。

 ここにきて、恩田はようやくプラモデルの組み立て方について語り出した。


 なんて言ってるのかはわからなかった。

 恩田が話し終えると、みんなは一斉にプラモデルを組み立て始めたのだから、作っていいと言っていたのだろう。

 

 開封と同時に、同封されていた説明書を広げた。


 よし。手伝ってもらおう。


「す、すみません……間宮さん」


「何かしら?」


「ここ、わからないのですが……」


「ああ。ここね。ここは——」


 間宮が俺に教えようとしてくれた時だった。


「それくらい、自分でできないとダメじゃない?」


 背後から声がした。

 妙に甲高く、嘲笑を浮かべるような、呆れるような声。

 そいつは……。


——恩田だった。


 どうやら、これがこいつの本性らしい。

 だが、俺はそんな対策は既に知っている。

 なぜなら、俺はずる賢いことにもかなり自信がある。

 こんな時、機転の効く男なんだ。


「い、いえっ……恩田、さん」


「言い訳?」


 嘲笑うようにして俺を見ている。

 いいさ、笑いたくば笑え。

 見せてやるよ。


 俺の実力を……。


 さっき、こういうこともあろうかと、組み立て方そっちのけで説明書の注意書きを読み込んでいた。

 そして、俺は見つけた。


 説明書の一番最初の欄。

 子どもと大人の絵。

 その下には三角の中にビックリマーク。

——わからないばあいは、しゅういのひととそうだんしてね!——


「説明書には、分からない場合は周囲の人と相談するように書いてあります」

「……」

「なので、説明書通りです」


——決まった。

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