能ある鷹は爪を隠す
恩田は俺の論理を前に黙ってしまった。
その後も恩田は何かを話していたが、気持ちよくなっている俺の前では意味をなさなかった。
まあ、きっと、負け惜しみだろう。
それから、間宮と出喜流に手伝ってもらい、プラモデルは完璧な仕上がりになった。
「じゃあ完成した四輪プラモデルについて、どこをどう具体的に工夫したのか、一人ずつ五分以内で発表してもらいます。まずは飯田からで」
俺は名指しされた。
「飯田って……あの恩田ってやつ、なかなか失礼だよな」
出喜流は小さな声でそう言った。
「ええ……気に食わないわね」
間宮が初めて出喜流に共感した。
「ほら、さっさとして。社会人なら、呼ばれたらすぐに出られないとダメでしょ?」
恩田は甲高い声で俺に圧をかける。
一体、俺が何をしたって言うのか。
「はいっ」
俺は席を立つ。
出喜流は俺の席につき、間宮の隣に座った。
「じゃあ、説明して」
恩田はため息をつくと、タイマーを押した。
一秒間隔で刻むデジタル時計だった。
俺は持ってないタイプのやつだ。
やれやれ。
見せてやろうか。
俺の必殺技ってやつを。
——デジタル時計は一分の経過を示した。
「……」
「なあ、飯田。やる気ある?」
恩田の声が耳に流れてくる。
その声を俺は受け取らず、目を閉じた。
——ここは、俺の世界。
深き深淵に時折響くのは、小さな鈴音。
そこは、外界から遮断された世界。
どんな声だって、ベルの鈴音に置き換えられる。
——ヂリ゙ン゙ヂリ゙ン゙ッ
ふっ。
今日はやけに風が吹き荒れているみたいだな。
鈴音を掻き分けるようにして耳を澄ませると、ある音が聞こえてきた。
——ピピピピっ……
深き深淵の奥。
その音の先から光が見えた。
目覚めの時だ。
——目を開けると、俺は恩田に怒られていたらしい。
周囲の新卒たちは俺を見ていた。
だから見せたくなかったんだよ。
奥の手は。
バレちまうだろ。
俺の隠しきれない鷹の爪がよ。
恩田はまだ何やらネチネチ言っているが、こんだけ長いこと話してるんだ。
きっと、俺のことじゃないだろ。
恩田の声が響く中、俺は誇らしげに胸を張り、自分の席へ向かった。
「社会人、舐めてる?そんなんだったら……」
俺は着席した。
すると、恩田はようやく静かになった。
そうだぞ。
次が控えてるんだ。
もう誰かを怒るのはやめてやれ。
「……」
恩田は口を開け、目を大きく見開いていた。
どうやら、俺の必殺技が遅れて効いてきてしまったらしい。
少し大人気なかったな。
後で謝っておいてやるか。




