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労働時間外

 

 四輪プラモデルの講習を終えた俺たちは社員食堂で昼食を済ませた。


 午後からの研修は、この社員寮の使い方についての説明だった。

 だが、あいにく俺は眠気と格闘をしているために説明を聞いている余裕などなかった。


 17時30分。


 終礼が始まる。


「では、研修はこれで終わりになります。ですが。あなたたちはもう、正社員です。学生ではありません。寮に戻ったら、しっかりと今日の『復習』をするように!」


 正社員が今日の研修についてのオチを語っていた。

 どうやら、俺たちは無事に一日目の研修を乗り越えられたらしい。


「俺、向こうの寮だわ!明日もよろしくな、ユウ!」


「はい!出喜流さん」


「私は女子寮ね。また明日、会えたらね」


「はい!間宮さん」


 夕陽が窓枠の影を落とす中、今日を乗り越えた俺たち三人は散り散りになった。


 やり切った気持ちと、どこか背筋が寒くなるような心地。

 たった一日を終えただけなのに、何日も前から出喜流たちとは旅を共にしていたような妙な感慨があった。


 俺たちは会社が用意したそれぞれの寮へと向かった。

 この一日、出喜流と会い、間宮と知り合い、変なおっさんたちと沢山出会った。

 思い返せば、この今日という一日は俺にとって激動だった。


 正社員が最後に放った言葉。


 今日の復習……。


 いや、俺にはそんな無駄なことをする暇はないな。

 

 この時間からは給料も発生しない。

 つまり、この時間からは俺が正社員ではないことを意味し、同時に社会人でもないということを定義する。


 なぜなら、勤務し給料をもらうのが社会人であり、社員なのだから。

 

 あの正社員の言葉は引っかけでありフェイクだ。


 真実に気づけた俺は、ウマブラをし、一刻も早く英気を養うことにした。


 はやる気持ちで寮の部屋へ着く。

 鍵を回す手が震えている。

 半日もゲームに触れてないんだ。

 こんなにもゲームが楽しみな日はこれまでになかった。


 鍵をくるりと回し、扉を開けた。


 そこに広がる世界は……。


「な……なんだ、ここ?」


 少しシミのついた小さな固いベッド。

 背もたれのない丸椅子。

 小さな机。

 クローゼット。


 俺はもう一度見渡した。

 いや、見落としなんてない。


 そもそも見落としがあるほど大きな部屋じゃない。


 ない。

 テレビも。

 ゲーミングチェアも、PCも。


 そこは、社会人の収容所だったのだ。

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