↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ダンジョンマスター(仮)ですが、聖女が迷宮を“実家”扱いして出ていきません』  作者: 腐柿


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/80

第42話「迷宮学校(寺子屋)」

ダンジョンに子どもの笑い声が響いた。

セレナが先生ぶってる。ぶってない、先生だ。

俺はなぜか“保護者席”に座らされた。


「はーい、皆さん席についてくださいねー」


迷宮の廊下に、明るく澄んだ声が響き渡った。

俺がリビングから顔を出すと、昨日まではただの広い空間だった場所に、木製の机と椅子が整然と並ぶ『教室』が生えていた。


正面には黒板があり、教壇には純白のドレスに割烹着というお馴染みのスタイルで、セレナが立っている。


机に座っているのは、商店街で働く魔物たちの子ども(小さなゴブリンやオーク)と、噂を聞きつけて地上から遊びに来た人間の人間の子どもたちだ。

種族の壁など存在しないかのように、みんな仲良くノートを開いている。


「迷宮に、学校ができたのか……」


俺が頭を抱えていると、ジャージ姿のリースが真剣な顔で横に並んだ。


「教育は国家の礎だ。ユウ殿の迷宮は、ついに次世代の育成機関まで内包したということだな。素晴らしい防衛戦略だ」


「だから防衛とかじゃなくて、ただのホーム指数の暴走なんだよ……」


俺がぼやいていると、教壇のセレナがこちらに気づいて、ふわりと微笑んだ。


「あ、家主さん。ちょうどよかったです。今日は保護者面談の日なんですよ」


「は? 保護者面談?」


「はい。そこの席に座ってください」


彼女が指差したのは、教壇のすぐ目の前にぽつんと置かれた、パイプ椅子のようなものだった。


「いや、俺は子どもなんかいないし、そもそも俺がこの迷宮の管理者なんだけど」


俺の抵抗も虚しく、セレナの「座ってくださいね(にこ)」という無言の圧力に屈し、俺は大人しくパイプ椅子に腰を下ろした。


教室の子どもたちが、興味津々でこちらを見ている。

セレナはチョークを置き、出席簿のようなものを小脇に抱えて、俺の前に立った。


「ユウくんの保護者の方ですね」


「俺がユウだよ」


「最近のユウくんですが、少し帰りが遅いことが多いですね。それに、ご飯を食べるのが早すぎます。もっとよく噛まないと、胃を悪くしますよ」


完全に俺への個人的な説教だった。

しかも、先生と生徒の保護者という謎のロールプレイを通しているため、妙な居心地の悪さがある。


「あ、はい……気をつけます」


俺が小さく頷くと、セレナは満足そうに微笑んだ。


「それと、もう一つ」


彼女は出席簿で口元を隠し、少しだけ顔を近づけてきた。

甘い石鹸の香りがふわりと漂い、俺の心臓がドキンと跳ねる。


「……夜更かしも、ほどほどにしてくださいね。私が心配しますから」


小さな声で囁かれたその言葉に、俺の顔は一気に熱を持った。

子どもたちが見ている前で、なんという破壊力だ。


「ヒュー! 先生と家主さん、ラブラブー!」


「けっこんしろー!」


子どもたちが無邪気に囃し立てる。

俺は耳の先まで真っ赤にしながら、ただひたすらに下を向くしかなかった。

迷宮学校の初日は、俺の精神力をゴリゴリと削り取る授業となったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。