ばらのちょうせんじょう ④
「そうねぇ、日本円でいうなら1000万位ね?足りないかしら?」
いっせんまん…呟く六花を、目を細めてローズは見つめる。用意したお茶を勧めて自身も、ゆっくり飲み干す。
「ローズ様、残念ですけど足りません。」
「あらあら、欲張りさんね。いいでしょう、あなたの言い値でお話をしましょうね。その代わり、悠人とは別れてくださいね。あなたなんかと結婚しても、悠人は幸せになれないわ。」
でしょう?と、首を傾げて言うローズ。ふぅと息を吐いて、顔を上げる六花はすくっと立ち上がった。
「1億積まれても、足りません!どれだけって言われても、悠人さんとは比べ物になりませんもの。私と結婚して悠人さんが幸せになれないなら、私が悠人さんを絶対に幸せにします!!」
「口だけって事もあるわよ?」
「口だけって…そんな事ないです、私は悠人さんと出会ったのが職場で、おうちがどうんな状況なのか知らずに好きになりました。例え借金背負ってても、悠人さんと出会ったらなら惹かれたと思います。周りの環境じゃなくて、悠人さん本体が、好きなんですッ!」
勢い余って、テーブルを叩いてしまった。その点は小さく謝って、ストンと椅子に座った。
六花はティーポットからお茶を注いで、叫んでしまった為にお茶を飲んで喉を潤し、ローズにどう言えばいいのかと悶々と悩む。
「ほ…ほほほほほほほほ、あらいやだごめんあそばせ?ほほほほほ…」
「ほ?」
目線を上げると、ローズは上品に爆笑していた。
「バーンって、バーンてテーブル叩いちゃって…あらごめんあそばせ?あなたがとても真剣なんですもの、恥ずかしい位まっすぐな方ね。」
パンパンと手を叩けばメイドのメアリが、すっと出てきてローズが何事かを言うと外に向かって出て行った。入れ違いに入って来たのは悠人だ、苦虫を噛み潰した顔でローズを睨みつける。
「ばーさま、ちょっとやり過ぎ。」
「ごめんなさいね、まぁお座りなさい。」
「座りません!六花、帰ろう」
無言のまま、六花が転びそうな位の勢いで歩く。
「ごめん、ばーさまが酷い事言ったみたいで。」
部屋に戻ると心配そうな顔で覗きこまれ、笑って六花は否定する。
ローズも、心配だったから自分で婚約者を世話したんだろうと。
「物分かり良すぎるんだよ、もっともっと我儘いいなさい。」
抱きしめられて、身を起こすと六花は嬉しそうに笑って、悠人の顔を触る。
「んじゃ、今度から言う~♪でも、今で十分幸せだよ?」
暫くの間、部屋では小さく会話する声だけが響いた…。
翌朝の朝食時に、食堂に行けば六花が昨日見た顔3名が席に就いていた。
目線を辿って、悠人は『あぁ』と頷く。
「あの3人が、昨日の?」
「うん、ヴィンセントの婚約者だって、おばあさまが言ってた。」
「…まさか、あの3人は既婚者だよ。本当に…まったく、六花が知らないからって担いだんだな。」
「け…けっこんしてるの?」
ニヤと笑って頷く。朝食後に六花と目が会ったローズは、ニッコリ笑い退室し既婚者3人は悠人が捕獲して部屋に連行した。
「ゴメンナサイ?グランマ メイレイ ゼッタイ」
昨日目礼した女性は、マーガレットと言い少し日本語が分かってカタコト喋れる。残り2名は、全く日本語が分からないらしい。2名はユーリとサラ、マーガレットに教えてもらい「ゴメンナサイ」を連発していた。
「この3人は、イトコなんだよね…。ホント迷惑な。」




