第9話 料理スキルE
チキン南蛮を食べ終えたアキラは、スマホを取り出した。
「そうだ。スマホ画面でステータスを見れるぞ」
「スマホで?」
「俺はさっき確認したからな」
アキラが自分のスマホを操作する。
すると、画面にステータスが表示された。
「ほら」
「私もやってみる」
ユウも自分のスマホを取り出した。
だが、いくら操作してもステータス画面が出てこない。
「……出ない」
「おかしいな」
「私にはステータスがないの?」
「いや、そんなはずない」
アキラは考え込んだ。
「もしかして……」
そう言って、ユウのスマホを受け取る。
そして検索画面を開いた。
「アゲダマ戦記」
「え?」
「ゲームをダウンロードしてみる」
「でも、ログインできないんでしょ?」
「ログインはできない。でも、アプリ自体はどうなんだ?」
アキラがダウンロードを開始する。
すると、普通にダウンロードが始まった。
「……できる」
「え?」
「ダウンロードはできるぞ」
ユウが目を丸くする。
「ログインできないのにダウンロードはできるんだ」
数分後。
インストールが完了した。
アキラがアプリを起動する。
「おっ」
画面に、いつものアゲダマ戦記のロゴが表示された。
しかし、ログイン画面には進めない。
その代わり。
「ステータス」
アキラが画面を操作する。
すると、ユウのステータスが表示された。
「出た!」
ユウが身を乗り出す。
【名前】ユウ
【レベル】4
【速筋】15
【遅筋】9
【打たれ強さ】7
【魔力】19
【ギフト】料理E
【ギフト効果】2時間、料理によるプラス1補正
「料理?」
ユウが首を傾げる。
「私のギフト、料理なの?」
「おぉ!」
アキラの目が輝いた。
「料理バフあるんだ!」
「バブ?」
「バフ。バブじゃなくてバフ」
「バフって何?」
「ゲーム用語だよ」
アキラは得意げに説明を始める。
「能力を一時的に強化したり、何かにプラスの効果を与えたりする状態のことだ」
「へぇ……」
「ちなみに、バフという言葉は英語のbufferから派生したという説がある。もともとは緩衝材とか、何かの差を埋めるものって意味だ。それがゲームでは、能力を強化する効果を指すようになった」
ユウは呆れた顔をする。
「流石ゲーマーね」
「まあな」
アキラは満足そうに頷いた。
「じゃあ、俺のステータスはどうかな?」
「見てみよう」
アキラのステータスを表示する。
【名前】アキラ
【レベル】8
【速筋】27
【遅筋】28
【打たれ強さ】30
【魔力】25
【ギフト】鑑定
「……」
ユウが画面を見る。
「アキラ、強くなってる」
「レベル8だからな」
「でも、ギフトは鑑定だけ?」
「そうみたいだな」
アキラは画面をじっと見る。
「鑑定はアルファベット表記がないんだな」
「料理はEなのに?」
「ああ」
アキラはユウのステータスをもう一度見る。
【料理E】
「てことは……」
アキラが考え始める。
「料理を訓練すれば、EがD、C、B、A……その先にSとかまで上がる可能性がある」
「そうなったら?」
「料理の補正が強くなるんじゃないか?」
「例えば?」
「今は5時間、プラス1補正だろ?」
「うん」
「これがDになればプラス2、Cならプラス3……みたいに、補正そのものが強くなる可能性がある」
ユウの目が大きくなる。
「じゃあ料理が上手くなれば、みんな強くなれる?」
「そういうことだ」
アキラは即座に決断した。
「ユウ」
「なに?」
「お前、毎日俺に飯を作れ!」
「プロポーズかよ!」
ユウの顔が真っ赤になる。
「違う! 料理スキルを鍛えるんだよ!」
「分かってるよ!」
「ならいいけど……」
ユウは赤くなった顔を隠すように横を向いた。
アキラは全く気にせず、立ち上がった。
「よし」
そして、壁に立てかけてあった槍をユウへ渡した。
「これ持って」
「え?」
「今日から少しずつ戦闘も経験してもらう」
ユウが槍を見る。
モップの棒に30センチの柳葉包丁を固定した、即席の槍。
「これ……本当に使うの?」
「使う」
続いてアキラは、台所の奥から巨大な柳葉包丁を取り出した。
刃渡り60センチ。
マグロ解体用の、まるで刀のような包丁だ。
「俺はこれ」
「それ、本当に大丈夫なの?」
「鞘も作ったしな」
ユウが作った段ボールをビニールテープで補強した鞘に収める。
「これなら持ち歩ける」
アキラは時計を見る。
もう夕方になっていた。
「夕方だな」
「どうするの?」
「バフ2時間」
アキラは巨大柳葉を腰から抜き、軽く振った。
「2時間狩りするぞ」
「2時間!?」
「パーティ組んでおけば、俺が倒した分の経験値も入る」
「でも私、戦えるかな……」
「最初は無理に戦わなくていい。俺の近くにいろ」
アキラは玄関へ向かった。
「行くぞ」
「待って!」
ユウも慌てて槍を握る。
玄関のドアが開く。
外は、すでに夕暮れだった。
赤く染まった空の下。
街には、人の姿がほとんどない。
遠くから魔物の鳴き声が聞こえる。
アキラは巨大な柳葉包丁を握り直した。
「今日はどれだけレベルが上がるかな」
ユウも槍を構える。
「……怖い」
「大丈夫」
アキラは笑った。
「俺がいる」
2人は、夕暮れの街へ歩き出した。
2時間の狩りが始まる。




