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アゲダマ戦記:ゲームが現実に降臨して世界のルールが急変したお話。  作者: 忍絵 奉公


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第10話 公園のかわいいスライム


家を出たアキラとユウは、近くの公園へ向かった。

夕暮れの公園は、昼間とはまるで雰囲気が違っていた。

ブランコは風に揺れ、滑り台の周囲には誰もいない。

「この公園、ポケモンのケルディオが出たことあるんだ」

アキラが何気なく言った。

「ポケモン?」

「関係あるの?」

ユウが不思議そうに聞く。

「かなりのレアものだぞ」

「そうなんだ……」

ユウには、いまひとつピンとこない。

その時だった。

ピョン。

ピョン。

公園の奥から、水色の物体が跳ねてきた。

「……かわいい」

ユウの顔が緩む。

水色のスライムだった。

丸くぷるぷるした身体で、地面を跳ねている。

ピョン。

ピョン。

「かわいくねぇ!」

アキラが叫んだ。

「え?」

「お前、あいつ凶悪だぞ!」

アキラは槍を構える。

「服を溶かす!」

「服を?」

「そう。初期の頃、ゲームで油断してたら服を全部溶かされて、素っ裸で街に帰ったことがある」

「……」

「そのまま衛兵に捕まった」

「何してるのよ!」

「だから言ってるだろ! 油断するな!」

アキラはスライムを睨みつけた。

「かわいいフリして、あの子、わりとやるもんだねと……」

「なに、それ」

「歌の歌詞みたいだろ」

「知らんわ」

その時、水色のスライムがピタッと止まった。

そして、アキラたちの方を向いた。

「……気づいたな」

ピョン!

スライムが跳ねた。

「来るぞ!」

ピョン!

さらに跳ねる。

そして一気にアキラへ向かって突進してきた。

「アキラ!」

「任せろ!」

アキラは巨大な柳葉包丁を抜いた。

ズバッ!

スライムの身体を斬る。

だが――。

「しまった!」

中心を外した。

水色の体液が飛び散る。

ピチャッ。

「うわっ!」

アキラのズボンの裾にかかった。

ジュゥゥゥ……。

布が煙を上げる。

「ほら!」

ユウが叫ぶ。

「服が溶けてる!」

「心配するな!」

アキラは裾を確認する。

「人体には影響ない。あくまで装備を溶かす」

スライムは地面に落ちた。

ぐぐっ。

溶けたように広がった身体が、再び丸く固まっていく。

「見たか?」

「元に戻った……」

「そういうことだ」

アキラはユウを見る。

「俺が斬るから、着地したところを槍で突け」

「分かった!」

スライムが再び跳ねる。

アキラはタイミングを合わせた。

「今だ!」

ズバッ!

今度はスライムの上から斬りつけた。

水色の身体が地面に落ちる。

ぐぐっ。

また元の形に戻った。

「ユウ!」

「はい!」

ユウが槍を構える。

「えいっ!」

ズブッ!

槍の先端が、スライムの中心に突き刺さった。

ピキィィィン!

スライムの身体が一瞬で固まる。

そして――。

ポンッ。

身体が消えた。

地面に残ったのは、水色の魔石だった。

「やった!」

ユウが拾い上げる。

「2センチだ」

「これが魔石……」

ユウが嬉しそうに眺める。

その時だった。

「……待て」

アキラが公園の奥を見る。

滑り台の横。

そこにあるトンネル型の遊具。

その中から――。

ワラワラ。

ワラワラ。

「え?」

スライムが出てきた。

1匹。

2匹。

3匹。

次々と這い出してくる。

しかも、水色だけではない。

赤。

緑。

黄色。

白。

黒。

様々な色のスライムが、夕暮れの公園に現れた。

「……多くない?」

ユウが槍を握る。

「全部で7匹だ」

アキラが数える。

「どうする?」

「逃げるか?」

「でも……」

ユウはスライムを見る。

「身体に影響ないんでしょ?」

「装備は溶けるけどな」

「だったら、レベル上げいいんじゃない?」

アキラは少し考えた。

「お前がいいならいいけど」

「やる!」

「よし」

アキラが巨大柳葉を構えた。

「じゃあ行くぞ!」

赤いスライムが跳ねてくる。

「赤は俺が斬る!」

ズバッ!

赤い身体を斬り裂く。

「ユウ!」

「はい!」

ユウがすかさず槍を突き出す。

ズブッ!

中心に命中。

赤いスライムが消え、赤い魔石が転がった。

「よし!」

だが――。

残りのスライムが一斉に散開した。

「しまった!」

7匹のスライムがバラバラに動く。

「囲まれた!」

アキラとユウは背中合わせになる。

円陣を組むように構えた。

「ユウ、落ち着け!」

「無理!」

ピョン!

スライムが跳ねる。

「えいっ!」

ユウが槍を突き出す。

外れた。

ピチャッ!

体液が飛ぶ。

「うわっ!」

アキラの服にかかった。

ジュゥゥゥ。

「また服が!」

別のスライムが跳ねる。

「こっち!」

ズバッ!

アキラが斬る。

しかし中心を微妙に外した。

ピチャッ!

また体液が飛ぶ。

「くそ!」

シャツに穴が開く。

ユウは槍で距離を取っているため、体液をほとんど浴びない。

一方。

アキラは至近距離で斬り続けている。

そのたびに――。

ジュッ。

ジュゥッ。

ジュワッ。

服だけが消えていく。

「なんで俺だけ!」

アキラが叫ぶ。

ズバッ!

ピョン!

ズバッ!

ピチャッ!

ついにシャツがボロボロになった。

最後の布が、はらりと地面へ落ちる。

「……」

アキラは上半身を見た。

そして叫ぶ。

「ずるいぞ!」

「何が!」

ユウが槍を構えたまま叫び返す。

「お前、後ろだろ!」

「前に来い!」

「私、槍だし!」

「だからって俺ばっかり服がなくなるのおかしいだろ!」

「知らないよ!」

ピョン!

ユウが飛び込んできたスライムを槍で突く。

ズブッ!

「1匹!」

残り2匹。

アキラも巨大柳葉を握り直す。

ズボンもかなりボロボロになっている。

「あと2匹……」

そのうちの1匹が、夕日の光を反射した。

キラッ。

「ん?」

アキラが目を細める。

「……金色?」

スライムの身体が、夕日に照らされて黄金色に輝いている。

だが、ただの光の反射ではなかった。

明らかに他のスライムとは違う。

「なんだ、あいつ……」

金色のスライムが跳ねた。

ピョン!

アキラが斬りかかる。

ズバッ!

「当たった!」

しかし――。

スッ。

金色のスライムが空中で身体をひねった。

刃が空を切る。

「なに!?」

普通のスライムなら、跳ね上がったら落ちてくる。

その動きは一定だった。

だが、こいつは違う。

空中で停止したかと思うと、重力を無視するように横へ移動した。

そして、そのまま地面へ落ちる。

「……今の見たか?」

ユウが呟く。

「見た」

アキラの表情が変わった。

ゲームの知識では説明できない。

金色のスライムは、こちらをじっと見ている。

まるで――。

こちらの攻撃を理解しているかのように。

「こいつ……」

アキラは巨大柳葉を構え直した。

「普通のスライムじゃないぞ」

金色のスライムが、再び跳ねた。

今度は、アキラの予想とは全く違う軌道で――。

夕暮れの空を飛んだ。



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