第11話 スライム
「あと1匹!」
ユウの槍が、残ったスライムの中心を正確に貫いた。
ぷるん、と大きく震えたスライムの体が一瞬だけ膨らむ。
次の瞬間、光になって消えた。
チャリン。
地面に落ちたのは、赤い魔石だった。
「やった!」
ユウが拳を握る。
その瞬間、スマートフォンから音が鳴った。
ピロン!
【レベルが上がりました】
「また上がった!」
「よし! 残るは……」
アキラが振り返る。
そこには、夕日に照らされて金色に輝くスライムがいた。
「こいつだけだな」
アキラは、もはや上半身裸だった。
服はほとんど溶かされ、下半身もショートパンツのような状態になっている。
「……アキラ」
「なんだ?」
「その格好、すごいね」
「誰のせいだと思ってるんだ!」
「私じゃないでしょ!」
「スライムだよ!」
2人が言い合っている間にも、金色のスライムはゆっくりと跳ねていた。
ポヨン。
ポヨン。
そして、その体がユウの方向を向く。
「……え?」
ユウが槍を構える。
「ちょっと待って」
金色のスライムが沈み込んだ。
「まさか……」
次の瞬間。
ビュン!
「速っ!」
ユウめがけて飛んできた。
「ちょ! ちょっと!」
ユウは槍を振り回す。
ブン!
外れた。
「こっち!」
ポヨン!
また外れた。
「ちょっと待ってってば!」
ブン!
ブン!
ブン!
槍を何度も突き出すが、金色のスライムは空中で軌道を変える。
「なんで当たらないのよ!」
「そいつ、普通のスライムじゃない!」
アキラも走り出した。
「挟み撃ちにする!」
アキラが金色スライムの横へ回り込もうとする。
だが。
「うおっ!」
足元の小石に躓いた。
「しまった!」
体が前につんのめる。
その拍子に、手に持った柳葉包丁が大きく振り出された。
「うわあああ!」
ズバッ!
予想外の方向へ伸びた刀身が、金色スライムの左側を切り裂いた。
「当たった!」
だが、中心には届いていない。
「まだだ!」
金色スライムの体が大きく歪む。
その瞬間。
バシャッ!
飛び散った体液がユウの背後へ飛んだ。
「え?」
ユウのジーパンのお尻の部分にかかった。
ジュウウウ……。
「……」
「……」
「……あ」
ユウの顔が引きつった。
「アキラ」
「はい」
「こいつ……」
ユウの握る槍に力が入る。
「私の服まで溶かした!」
「怒ってる?」
「怒ってる!」
ユウが地面を踏み込んだ。
「うりゃあああ!」
ググッ!
金色スライムが着地した瞬間、ユウの槍が中心を貫いた。
ズドン!
「入った!」
金色スライムの動きが止まる。
そして。
パアアアッ!
黄金色の光が公園を照らした。
金色スライムは消滅し、地面にはひときわ輝く魔石が残った。
「やった……」
ユウが息を切らしながら槍を下ろす。
その直後。
ジュウウ……。
「……」
ユウが自分の服を見る。
「まだ溶けてる……」
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃない!」
ユウは慌てて背中を向けた。
「見ないで!」
「見てない、見てない!」
「絶対見たでしょ!」
「かわいいお尻だね!」
アキラは自分の姿を見下ろした。
上半身は完全に裸。
下もほとんど残っていない。
「……まあ、俺よりはマシだな」
「比較するところじゃない!」
2人はしばらく無言になった。
そして。
ピロン!
ピロン!
2人のスマートフォンから同時に音が鳴った。
【レベルが上がりました】
アキラのレベルが1上がった。
そしてユウは。
【レベルが2上がりました】
「2つ上がった!」
「俺は1か」
「やっぱり、最後の金色がかなり経験値を持ってたんだ!」
ユウは嬉しそうにスマートフォンを確認する。
アキラも頷いた。
「普通のスライムとは別格だったな」
「それにしても……」
ユウが地面を見る。
そこには、赤、青、緑、そして黄金色。
倒したスライムたちが残した色とりどりの魔石が転がっていた。
「いっぱいあるね」
「全部拾おう」
2人で魔石を拾い始める。
青。
赤。
緑。
黄色。
それぞれ大きさも微妙に違う。
「これ、集めて売ったら結構な金になるんじゃない?」
「たぶんな」
アキラが最後の魔石を拾った、その時だった。
ドドドドドドドドッ!
「……ん?」
地面が揺れた。
公園の外。
道路の向こう側から、何かがこちらへ向かってくる。
「アキラ……」
「見えてる」
土煙の向こうから姿を現したのは。
巨大な角。
分厚い体。
そして、ものすごい勢いで突っ込んでくる魔物。
「まさか……」
アキラの顔が引きつる。
「チョリキ!」
「えええええっ!」
チョリキはそのまま、公園へ向かって一直線に突撃してきた。




