↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アゲダマ戦記:ゲームが現実に降臨して世界のルールが急変したお話。  作者: 忍絵 奉公


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
62/65

第62話「日南の海、レットが見たもの」


ストツーは山道をひた走っていた。

「いた!」

前方から、何頭ものチョリキが道路へ飛び出してくる。

「多いな!」

アキラは速度を落とさない。

「サトミ、頼む!」

「任せて!」

サトミがストツーの魔法装置に魔力を流し込む。

屋根の魔法配線を通って、魔力が一気に走る。

「いっけー!」

水の刃が次々と飛び出した。

ズバッ!

ズバッ!

チョリキが吹き飛ばされる。

「次!」

今度は別の方向からチョリキが現れる。

「まだいる!」

サトミが魔法を撃ち続ける。

ストツーはほとんど減速することなく、山道を進んでいった。

「車の中から倒せるの、便利だな!」

ユウが感心する。

「これなら山道でもかなり楽だ!」

アキラも笑う。

だが、山道にいる魔物はチョリキだけではなかった。

道路脇の森から、紫色の鹿が飛び出してきた。

「鹿?」

瀬里奈が目を凝らす。

「普通の鹿じゃない!」

紫色の体。

角も異様に大きい。

ストツーよりも大きな体格をしている。

「でかっ!」

サトミが驚く。

「遠距離でいくぞ!」

アキラが叫ぶ。

ストツーの魔法攻撃が一斉に放たれる。

炎。

水の刃。

そして瀬里奈の矢。

紫色の鹿がこちらへ突進してくる。

だが、魔法と矢の集中攻撃を受け、道路脇へ吹き飛ばされた。

「よし!」

「まだ来るよ!」

ユウが叫ぶ。

その直後。

ズズズズズ……。

道路の先で、巨大な何かが動いた。

「……蛇?」

全員が固まる。

山の斜面から出てきたのは、とてつもなく巨大な大蛇だった。

「ストツーよりデカいぞ!」

アキラが叫ぶ。

大蛇が鎌首をもたげる。

舌がチロチロと動く。

そして――。

シャアアアアッ!

巨大な口を開けて襲いかかってきた。

「撃て!」

ストツーから一斉攻撃が放たれる。

サトミの魔法。

瀬里奈の矢。

ユウの魔法攻撃。

アキラも運転席から魔力を送り込む。

巨大な大蛇が道路をのたうつ。

やがて動かなくなった。

「……倒した」

ユウが呟く。

「山、魔物多すぎだろ」

アキラは苦笑した。

それでもストツーは止まらない。

山道を抜け、さらに進む。

やがて景色が変わった。

建物が増えてくる。

「街だ!」

ユウが声を上げる。

「日南市に入ったな」

道路標識を確認しながら進む。

国道222号線を走る。

しばらくすると、歴史を感じさせる赤レンガの建物が見えてきた。

「あれ何?」

サトミが尋ねる。

「赤レンガ館だな」

瀬里奈が答える。

「へぇ……」

4人は窓の外を眺めながら走る。

そして、やがて海が見えてきた。

「油津港だ」

アキラが言った。

「昼飯、ここで食うか?」

「海!」

ユウが叫んだ。

「海!」

サトミも叫ぶ。

「海だー!」

瀬里奈まで叫んだ。

3人が一斉に喜ぶ。

「お前ら、海くらいでそんなに喜ぶか?」

「喜ぶよ!」

「海だよ!」

「海だもん!」

アキラは笑った。

ストツーを港の近くに停める。

4人とレットは波止場へ向かった。

潮の香りがする。

風が吹く。

目の前には、どこまでも広がる海。

「……海だ」

ユウが小さく呟いた。

「きれい……」

サトミも海を見つめる。

瀬里奈はしばらく黙っていた。

そして、

「来てよかったね」

と笑った。

4人は波止場に腰を下ろした。

「じゃあ、昼飯にするか」

アキラが弁当を取り出す。

「おお!」

ユウが蓋を開けた。

「……え?」

アキラが固まる。

弁当の中には――。

アキラそっくりのキャラクター。

ユウそっくりのキャラクター。

サトミそっくりのキャラクター。

瀬里奈そっくりのキャラクター。

それぞれの顔を再現したキャラ弁だった。

「お前……余裕だな!」

アキラがユウを見る。

「だって海だよ? せっかくだから!」

ユウは得意そうに笑う。

「俺の顔、なんか変じゃない?」

「似てるよ!」

サトミが笑う。

「私のも!」

「おお! そっくり!」

瀬里奈も自分の弁当を見せる。

「私も似てる!」

「すげぇな」

アキラは感心した。

「料理Cって、こういうところにも能力使ってんのか?」

「関係ないよ!」

ユウが笑う。

その横ではレット用の弁当も用意されていた。

「お前のもあるぞ」

アキラが取り出す。

それは――。

レットそっくりのおにぎりだった。

クリーム色の毛並みまで海苔などで再現されている。

「キュー!」

レットの目が輝いた。

「具は?」

アキラが持ち上げて見る。

「……チャオチュール?」

「レット用だからね」

「お前、米も食えるんだ」

レットはおにぎりを、

ぱくっ。

「キュー!」

嬉しそうに食べる。

「単になんでも食えるけど、チュールが大好物ってだけなんだな」

「キュー!」

レットは満足そうに頷いた。

4人は笑った。

漁港には何隻もの船が停泊している。

波が静かに揺れている。

遠くには青い海。

潮風が頬を撫でる。

しばらくの間、誰も魔物の話をしなかった。

ただ海を眺めながら、弁当を食べた。

「うまいな」

「うん」

「最高!」

「海で食べると、なんでも美味しく感じるね」

そんな穏やかな時間だった。

そのとき。

「グー……」

レットが唸った。

「ん?」

アキラが振り返る。

レットはおにぎりを食べながら、海を見ていた。

そして、もう一度。

「ググ……」

レットの顔から、笑顔が消える。

「……え?」

アキラも海を見る。

「今?」

レットが見ているのは――。

海だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。