第60話「ストツー、日南へ出発!」
翌朝。
「ユウ、朝飯頼む!」
アキラが台所に向かって声をかける。
「はいはい。今日はお弁当も作るんでしょ?」
「ああ。海で食べるかもしれないからな」
ユウは慣れた手つきで朝食の準備を始めた。
最近のユウは、すっかり料理担当として定着している。
それもそのはず。
ユウのギフト『料理』は、いつの間にかCまで上がっていた。
【ギフト:料理C】
【効果:4時間、料理によるプラス10補正】
「プラス10、4時間……」
アキラはスマートフォンを見ながら呟く。
これはかなり大きい。
料理を食べてから4時間の間、さまざまな能力にプラス10の補正がかかる。
長時間の狩りでは、この差が生死を分ける可能性すらある。
「ユウ、もう料理職人じゃん」
「職人っていうほどじゃないよ」
「いや、俺なら絶対ほしいギフトだぞ」
「じゃあ毎日作ってあげるよ」
「よろしく!」
「即答なんだ……」
ユウは苦笑しながら弁当を詰めていく。
その横で、アキラは自分たちの現在のステータスを確認した。
【アキラ】
速筋:125
遅筋:122
打たれ強さ:110
動体視力:100
魔力:115
「お?」
アキラは新しく追加された項目を見つめた。
「動体視力が増えてる」
「前はなかったよね?」
ユウもスマートフォンを覗き込む。
「ああ。レベルが上がったから表示されたんだろうな」
アキラは少し考える。
ゲーム時代の記憶を掘り起こす。
「確か、まだあったはずなんだよな」
「何が?」
「反射速度とか、跳躍力とか……」
「じゃあ、それもレベルが上がれば出てくるかも?」
「たぶんな」
アキラにも確信はない。
ゲームでも、一定のレベルに到達したときに新しいステータス項目が解放されることがあった。
だが、現実になった今、ゲームとまったく同じ仕様なのかは分からない。
「まだ隠しステータスがある可能性もあるな」
「ステータス、いっぱいあるんだね」
「俺も全部は覚えてない。もう忘れたわ」
そう言いながら、アキラは他の3人のステータスも確認した。
すると、意外な結果が出た。
「おい!」
アキラが声を上げる。
「何?」
サトミが振り返る。
「魔力、サトミがトップだ」
「えっ!」
サトミがスマートフォンを確認する。
【サトミ】
魔力:222
「222!」
サトミは両手を広げて喜んだ。
「エンジェルナンバー!」
「そこかよ!」
アキラが突っ込む。
「だって222だよ! すごくない?」
「まあ、すごいけどな」
サトミの魔力がここまで高くなった理由は、おそらく後方支援だった。
これまでサトミは、戦闘のたびに火球や水の刃を撃ち続けている。
魔法を使い続けてきた結果、魔力が大きく伸びていたのだろう。
「でも、次にレベルが上がったら変わるかもよ」
「そのときはまたエンジェルナンバー探す!」
「楽しそうだな……」
そして、もう1つ驚く数字があった。
「動体視力トップはユウだ」
「え?」
ユウの動体視力は、
151。
「151!」
ユウが目を丸くする。
「私が?」
「ああ。すげぇな」
「魔物の動き、最近よく見えると思ってたけど……」
ユウは少し嬉しそうに笑った。
最初のころは、ゴブリンの動きすら追えなかった。
今では、空中を跳ねるスライムや、突進してくる魔物の動きまで見極められる。
成長している。
そして最後。
「速筋トップは瀬里奈」
「私?」
瀬里奈の速筋は、
178。
「178!?」
ユウが驚く。
「私、そんなにあるんだ」
「弓矢の速射が効いてるのかな?」
アキラも首をひねる。
「弓を何本も撃ってるからじゃない?」
「それなら私、かなり鍛えてることになるね」
瀬里奈は自分の腕を見ながら笑った。
4人とも、それぞれ違う方向へ成長している。
アキラは近接戦闘。
ユウは動体視力と料理。
サトミは圧倒的な魔力。
瀬里奈は速筋と弓による遠距離攻撃。
「バランスいいな、俺たち」
アキラが満足そうに言う。
「レットは?」
ユウが尋ねる。
「レットは……」
全員が、ソファの上を見る。
そこには、ふわふわのレットが丸くなっていた。
「キュー」
「寝てる」
「いつものことだね」
レットは何事もなかったように再び目を閉じた。
「まあいい。今日は海だ!」
朝食を終え、弁当を積み込む。
飲み物、回復アイテム、魔力回復用のアイテム、武器。
必要なものを次々とストツーへ積み込んでいく。
そして4人とレットは、ハイラックスへ乗り込んだ。
「忘れ物ない?」
ユウが確認する。
「大丈夫!」
サトミが答える。
「弓も積んだよ」
瀬里奈も確認する。
アキラは運転席へ座った。
「よし」
エンジンがかかる。
ストツーが低い音を響かせる。
「日南へ出発!」
「おー!」
ユウとサトミが声を合わせた。
瀬里奈も笑いながら手を上げる。
レットは後部座席で、
「キュー!」
と鳴いた。
海。
そして、その途中には魔物の巣と化したアオンがある。
「まずはアオンの様子を見てからだな」
アキラはアクセルを踏み込んだ。
ストツーがゆっくりと道路を走り出す。
今日の目的は、海を見ること。
だが、途中で何が起きるかは、誰にも分からなかった。




