第59話 明日は海へ行こう!
夜。
夕食を終えたアキラたちは、リビングに集まっていた。
テーブルの上には、それぞれのスマートフォン。
明日、どこへ行くか。
それを決めるための作戦会議だった。
「さて、明日はどこへ行く?」
アキラが地図を広げる。
「候補は3つだ」
指を立てる。
「案1。金剛岳公園」
「山?」
ユウが地図を見る。
「ああ。山は魔物が多い可能性がある。標高は472メートル」
「結構高いね」
「でも、車で山頂まで行ける」
アキラが地図を拡大する。
「ストツーで山頂まで行って、魔物を倒しながら山を攻略する」
「それは面白そう」
サトミが乗り気になる。
「でも山かぁ……」
ユウは少し考える。
「次」
アキラが指を動かす。
「案2。志布志か日南の海」
「海!」
ユウの顔が一気に明るくなった。
「海、見たい!」
サトミもすぐに反応する。
「私も海がいい!」
「だよな」
アキラは笑った。
「志布志か日南まで、魔物を倒しながらドライブする」
「最高じゃん!」
「海見たい!」
女子2人が完全に海に傾いた。
「それから案3」
アキラが地図を指す。
「アオンの討伐」
空気が少し変わった。
アオン。
かつて侵入した大型商業施設。
その奥には、ゾンビをはじめとする大量の魔物が潜んでいる。
そして、その奥には高レベルの魔族がいる可能性がある。
「アオンは……」
ユウが少し考える。
「まだ危ないよね」
「うん」
瀬里奈も頷いた。
「前に見た感じだと、普通の魔物の巣じゃなかった」
「俺もそう思う」
アキラは腕を組む。
「だから、今すぐ討伐するかどうかは悩むところだ」
3つの候補。
山。
海。
アオン。
しばらく全員で地図を眺める。
「海!」
ユウが言った。
「海!」
サトミも続く。
「……海か」
アキラは笑った。
「まあ、たまには海もいいか」
「やった!」
ユウが喜ぶ。
「でも、どっちの海にする?」
「志布志か日南だな」
アキラが地図を見る。
どちらも海に面した街。
しかし現在の世界では、どちらも人の少ない辺境の街になっている。
「うーん……」
アキラは地図を眺めた。
「日南に行ってみるか」
「なんで?」
「途中でアオンの前を通るから」
「え?」
ユウが顔を上げる。
「じゃあ、アオンを通り過ぎながら様子を見ればいいんじゃない?」
「そういうこと」
アキラが頷く。
「魔物が外まで溢れてるのか、中にどれくらいいるのか。ストツーから確認するだけでもいい」
「危なそうなら?」
「そのまま日南へ行く」
「安全そうなら?」
「そのまま日南海岸だ」
サトミが笑った。
「結局、日南なんだ」
「まあな」
アキラは地図を閉じた。
「決まり。明日は日南」
「海!」
ユウとサトミが嬉しそうに声を上げた。
「海だ!」
「海水浴できるかな?」
「今の状況で海水浴する気か?」
「だって海だよ?」
「魔物いるぞ」
「……そうだった」
サトミが真顔になる。
全員が笑った。
「じゃあ、明日に備えて寝るか」
「おやすみ」
それぞれが部屋へ向かっていく。
そして――。
問題が1つあった。
「レット、どこで寝る?」
クリーム色のふわふわした精霊。
レット。
「キュー」
レットは首を傾げる。
「俺のところで寝る?」
「キュー」
レットは嫌そうな顔をした。
「なんでだよ!」
アキラが抗議する。
レットは普段、猫のように誰かの布団へ勝手に入り込んで寝る。
昨日はユウ。
一昨日はサトミ。
その前はアキラ。
そして今日は――。
レットが、とことこと歩いていく。
向かった先は瀬里奈の部屋だった。
「え?」
瀬里奈が驚く。
「私?」
「キュー!」
レットが布団の上へ飛び乗る。
そして、ふわっ。
布団の中へ潜り込んだ。
「ちょっと!」
瀬里奈が笑う。
「もう……仕方ないな」
レットは丸くなる。
数秒後。
「キュー……」
もう寝ている。
「寝るの早っ!」
瀬里奈が布団を少し持ち上げる。
レットは完全に熟睡していた。
「まあ……可愛いからいいか」
瀬里奈も布団へ入る。
「おやすみ、レット」
「……キュー」
小さな寝言が返ってきた。
こうして、明日の行き先は決まった。
目的地は――日南。
海を目指して、魔物を倒しながらのドライブ。
そして途中には、あのアオンがある。
明日、何が待っているのか。
まだ誰にも分からなかった。




