↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アゲダマ戦記:ゲームが現実に降臨して世界のルールが急変したお話。  作者: 忍絵 奉公


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/62

第6話 料理人の家は武器庫だった

スマホのアゲダマ戦記を見ると、ステータスとパーティ登録のボタンだけがある。

ユウをパーティ登録した。

「大丈夫だ」

アキラは、震えているユウに向かって、妙に自信満々に言った。

「パーティ登録すれば、50メートル以内だったら経験値を共有できる。だからレベルが上がるまで、ここにいろ」

「……パーティ?」

「そう。俺がモンスターを倒せば、ユウにも経験値が入る」

「じゃあ、アキラが外に出るの?」

「俺が1人で狩りをしてくる」

「えっ?」

ユウの顔が引きつった。

さっきまで家の前でハウンドドッグと戦っていた男が、今度は1人でモンスターを狩りに行くと言っている。

「危ないよ!」

「大丈夫。俺にはゲームの知識がある」

「でもレベル3なんでしょ!」

「……それは言うな」

痛いところを突かれた。

アキラは少しだけ目を逸らす。

「とにかく、俺が狩ってくる。その間、ユウはここにいろ」

「でも……」

「それと」

アキラは台所を指差した。

「飯でも作ってくれ」

「なんで!?」

「腹が減るから」

「モンスターを狩りに行く人の言葉じゃないよ!」

「腹が減ったら戦えないだろ」

妙に説得力がある。

ユウはしばらくアキラを見つめたあと、深いため息をついた。

「……何が食べたいの?」

「肉」

「分かったよ!」

ユウが台所へ向かう。

その間にアキラは武器を作り始めた。

まず取り出したのは、刃渡り30センチほどの柳葉包丁。

それをモップの棒の先端に当てる。

そしてビニールテープを取り出した。

「これでいいだろ」

ぐるぐる。

ぐるぐる。

さらにぐるぐる。

念入りに巻き付ける。

完成したのは、どう見ても素人製の槍だった。

「……槍?」

ユウが台所から顔を出す。

「そう。包丁槍」

「怖いんだけど……」

「接近戦よりはマシだろ」

アキラは完成した槍を持ち上げる。

30センチの刃先が、天井の照明を反射して鋭く光った。

だが、アキラはそこで何かを思い出した。

「そういえば……」

台所の奥にある大型の収納棚へ向かう。

そこを開けた瞬間、ユウが目を丸くした。

「なにこれ……」

そこにあったのは、異様に長い包丁だった。

刃渡り60センチ。

まるで日本刀のような細長い刀身。

マグロの解体に使う、巨大な柳葉包丁だった。

アキラの父親は料理人だ。

しかも元ミシュラン3つ星。

一般家庭にはまず存在しないような業務用の調理器具が、この家には普通に置いてある。

「これなら……」

アキラが持ち上げる。

ずしり。

長い。

そして、怖いほど切れそうだった。

「……強そうだ」

「それ、包丁だよね?」

「そうだけど」

「絶対に持って外に出ないでよ」

「鞘がないんだよな」

アキラは巨大な柳葉包丁を眺める。

刃渡り60センチ。

これをむき出しで持って歩くのは危険すぎる。

「鞘があれば使えるんだけどな」

そして、アキラはユウを見る。

「ユウ」

「嫌な予感しかしない」

「時間が余ったら、これの鞘を作ってくれ」

「無理!」

即答だった。

「だって鞘なんて作ったことないもん!」

「なんとかなるって」

「ならないよ!」

「じゃあ頼んだぞ」

「話聞いてる!?」

アキラは包丁槍を肩に担いだ。

そして玄関へ向かう。

「ちょっと! 本当に行くの!?」

「行ってくる」

「気をつけて!」

「大丈夫だ」

アキラは靴を履く。

ドアを開ける。

外から、冷たい風が吹き込んできた。

さっきまでの日常とは、もう完全に違う空気だった。

遠くから、何かの鳴き声が聞こえる。

グギィ……。

アキラの表情が変わった。

「……いるな」

モンスターだ。

しかも、1匹ではない。

ゲームの知識が頭の中を駆け巡る。

どこにいる。

何が出る。

どのモンスターなら今の自分でも倒せる。

そして、どこまでなら安全に狩れる。

アキラは槍を握り直した。

「ゲームじゃない」

小さく呟く。

「でも、ゲームの知識は使える」

そして、アキラはモンスターが潜む街へと歩き出した。

背後からユウの声が飛んでくる。

「アキラ! 絶対に死なないでよ!」

アキラは振り返らず、片手を上げた。

「飯、頼んだぞ!」

「そっち!?」

玄関のドアが閉まった。

ユウはしばらく呆然と立ち尽くしたあと、巨大な柳葉包丁を見た。

「……これの鞘、本当に作るの?」

家の中には、異世界のような武器と、料理人の家にしかない巨大な調理器具。

そして、これから料理を作らなければならない女子高生が1人。

「もう……めちゃくちゃだよ」

ユウはため息をつきながら、冷蔵庫を開けた。

そこには大量の肉が入っていた。

「……何作ろう」

外では、再びモンスターの咆哮が響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。