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アゲダマ戦記:ゲームが現実に降臨して世界のルールが急変したお話。  作者: 忍絵 奉公


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57/62

第57話 世界ランキング1位と2位


 アゲダマ戦記には、世界中に名を知られたプレイヤーが存在していた。

 その中でも、特に有名なのがランキング上位者たちだった。

 世界ランキング1位。

 ヤンキーローズこと、デビッド・リー・ローズ。

 アゲダマ戦記のサービス開始以来、圧倒的なプレイ時間と課金額、そして戦闘能力でランキング1位を維持してきた男だった。

 だが――。

 ゲームが現実世界と融合してから、デビッドはゲームをしていなかった。

 そんなものは、もう必要なかった。

「集まったか?」

「はい!」

 フロリダ州。

 トロピカーナ・フィールド。

 かつて野球場として使われていた巨大なドーム球場を、デビッドたちは拠点として占拠していた。

 その広大な球場には、大勢の人間が集まっている。

 アゲダマ戦記時代のデビッドのクランメンバー。

 その数、158名。

 デビッドは、世界が変わった直後から、少しずつ仲間を集めてきた。

 食料を確保する。

 武器を集める。

 魔物を倒す。

 怪我をした仲間を治療する。

 そして、拠点を守る。

 現在のデビッドのレベルは33。

 組員158名の平均レベルは12。

 決して小さな組織ではない。

「よし……」

 デビッドは大型スクリーンを見上げた。

 そこにはニュース映像が流れている。

 島津吉貴との戦闘。

 アキラ。

 ユウ。

 サトミ。

 瀬里奈。

 そして、巨大なハイラックス。

「……なんだ、これ」

 デビッドの目が見開かれた。

『本日、霧島神社で確認された低級魔族が討伐されました』

「魔族……?」

 デビッドは画面に近づく。

 何度も映像を確認する。

 魔族が炎を放つ。

 それを4人が連携して攻撃する。

 最後には巨大な樹木まで動き出し、魔族を貫いていた。

「……」

 デビッドの表情が変わった。

「こんなに進んでるやつがいるのか!?」

 焦り。

 世界ランキング1位だった男が、初めて感じた焦りだった。

「俺はレベル33だぞ……」

 ゲーム時代なら、誰もが追いつけないと思っていた。

 だが現実になってから、状況は変わった。

 レベル。

 装備。

 仲間。

 魔石。

 そして魔族。

 すべてが現実のものになった。

「……急がないと」

 デビッドは拳を握った。

「俺たちも、もっと強くなるぞ!」

「おおおおお!」

 158名の声が、ドーム球場いっぱいに響いた。

 

一方――。

 台湾。

 台北101。

 ここにも、巨大な組織が存在していた。

 世界ランキング2位。

 ブルーズ・リーこと、ジャン・リー。

 台湾籍のアゲダマ戦記フリークである。

 彼もまた、世界が変わった直後から行動していた。

「集まったか」

「はい!」

 ジャン・リーの周囲には、台湾在住のアゲダマ戦記プレイヤーたちが集まっている。

 彼らは「海蛇連合」と呼ばれる協力組織を作っていた。

 その本拠地は台北101。

 巨大な高層ビルの最上階。

 そこをジャン・リーの拠点としている。

 そして、その下の階にはレベルの高い者。

 さらにその下には、少しレベルの低い者。

 まるで巨大な階層型の城塞だった。

「現在の俺のレベルは35」

 ジャン・リーはワイングラスを傾ける。

 そして、テレビに映ったニュースを見る。

「……魔族討伐?」

 ジャン・リーは映像を見つめた。

 アキラたちの戦闘。

 ハイラックスから放たれる魔法。

 そして、魔族を倒した瞬間に表示される報酬。

 ジャン・リーの眉間に皺が寄った。

「……先を越されてるな」

 手に持っていたワイングラスに力が入る。

 パリンッ!

 グラスが砕けた。

「ボス!」

「大丈夫だ」

 ジャン・リーは立ち上がった。

 彼らには、デビッドたちとは違う強みがあった。

「捕獲班は?」

「順調です」

 海蛇連合には、ギフト「捕獲」を持つメンバーが1人いた。

 その能力によって、生きた魔物を捕獲する。

 そして――。

 安全な場所へ運ぶ。

 倒す。

 レベルを上げる。

 この方法で、海蛇連合は効率的に戦力を増やしていた。

「もっと捕獲しろ」

「はい!」

「我々も、魔族を探す」

 ジャン・リーは再びニュースを見る。

 画面の中では、アキラたちが戦っている。

「世界ランキング1位も、俺も……」

 ジャン・リーは拳を握った。

「このままでは終われない」

 世界各地で、同じような動きが始まっていた。

 かつてのアゲダマ戦記の上位プレイヤーたち。

 彼らはゲームの中で競い合っていた。

 だが今は違う。

 ゲームの世界そのものが現実になった。

 ランキング。

 レベル。

 特殊ギフト。

 クラン。

 魔石。

 そして魔族。

 すべてが現実の戦力になっている。

 しかし、そんな彼らにも大きな問題があった。

 空路だ。

 世界各地を移動するための飛行機。

 現在、その多くが運航を停止していた。

 原因は――。

 魔物。

 鳥が飛行機に衝突するバードストライク。

 それと同じように、現在は魔物が飛行中の航空機に衝突する。

 いわば――。

「魔物ストライク」

 航空関係者の間では、そう呼ばれ始めていた。

 巨大な飛行型魔物が機体へ突っ込む。

 翼に取りつく。

 エンジンへ侵入する。

 そして、最悪の場合――墜落する。

 現在、通常の航空機で目的地まで無事に到着できる確率は10%未満とされていた。

 そのため、一般旅客便はほとんど運航されていない。

 世界は広い。

 だが、その世界をつなぐ空路が失われていた。

 デビッドも。

 ジャン・リーも。

 そして世界中の上位プレイヤーたちも。

 同じ問題を抱えていた。

「日本へ行くには……どうする?」

 デビッドが呟く。

「台湾から外へ出る方法がない」

 ジャン・リーも同じことを考えていた。

 世界ランキング1位と2位。

 かつてはゲームの中で、世界中のどこにいるプレイヤーとも競争できた。

 しかし今は――。

 海がある。

 国境がある。

 魔物がいる。

 そして、飛行機が飛べない。

 世界は広すぎた。

 だからこそ。

 アキラたちの存在が、さらに大きく見えていた。

「……あいつらは、どうやってあそこまで行った?」

 デビッドが呟く。

 ジャン・リーも同じ疑問を抱いていた。

 世界ランキング上位者たちは、まだ知らない。

 その答えが――。

 金の魔石で強化された、1台のハイラックスだということを。


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