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アゲダマ戦記:ゲームが現実に降臨して世界のルールが急変したお話。  作者: 忍絵 奉公


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第56話 アラファト魔石売買所、大ピンチ!


「……くそっ!」

 アラファトこと荒木は、目の前の大型モニターを睨みつけていた。

 そこに映っているのは、アキラたちが島津吉貴と戦っている動画だった。

 何度も再生される戦闘シーン。

 アキラの剣。

 ユウの槍。

 後方から飛んでくる瀬里奈の矢。

 サトミの魔法。

 そして、異様なまでに頑丈なハイラックス。

「余計なことをしやがって……!」

 荒木は歯ぎしりした。

 問題は、魔族を倒したことではない。

 その動画に、ハイラックスがしっかり映っていたことだった。

 車体に取り付けられた魔石。

 そこから放たれる水の刃。

 炎の玉。

 さらに、車体そのものが魔物の攻撃を受けても傷一つつかない。

 世界中の人間が、それを見てしまった。

 そして理解してしまったのだ。

 魔石には、とてつもない価値がある。

「ただでさえ……」

 荒木は机の上に置かれた資料を見る。

 そこには、アラファト魔石売買所の現在の買い取り状況が書かれていた。

「まだ10個程度しか買い取れていないっていうのに……」

 魔石買い取り所を作った。

 魔石を持っている人間から買い取る。

 それを集めて売る。

 単純な商売のはずだった。

 だが、現実には大きな問題があった。

「そもそも魔石を回収できる奴が少なすぎる」

 魔物を倒せる人間自体が少ない。

 さらに、魔物を倒しても魔石を探して拾う必要がある。

 危険な場所まで戻って回収しなければならない。

 だから、市場に出てくる魔石そのものが少ない。

 そしてもう1つ。

「安く買い取れなくなった……」

 これが致命的だった。

 魔石が便利なものだと知られていなければ、安い値段でも買い取れる。

 だが今は違う。

 動画によって、魔石が武器にもなり、魔法にも使えることが世界中に知れ渡ってしまった。

 そんなものを、

「はい、1個1000円です」

 などと言えば、

「ふざけるな!」

 と怒鳴られるに決まっている。

「高く買えば利益が出ない……安く買えば誰も売ってくれない……」

 荒木は頭を抱えた。

「どうすりゃいいんだよ……」

 しかも、アラファト魔石売買所の名前は、すでに世界中で知られ始めている。

 最初に魔石の買い取りを始めた企業として注目を浴びているのだ。

 荒木はモニターに映るアキラの姿を睨む。

「お前……ゲームの時から余計なことばっかりしやがって……」

 

一方、その頃。

 アキラたちは自宅に戻っていた。

「疲れた~!」

 サトミがソファに倒れ込む。

「今日は結構倒したね」

 ユウもスマートフォンをテーブルに置く。

 瀬里奈はレットにチュールを与えている。

「キュー!」

 レットは嬉しそうに舐めていた。

 アキラがテレビをつける。

「ニュースでも見るか」

 すると、いきなり見覚えのある映像が流れた。

「ん?」

 アキラが画面を見る。

 そこには――

 自分たちが映っていた。

「え?」

「え?」

「え?」

 4人が固まる。

 ニュース番組では、島津吉貴との戦闘動画が大きく取り上げられていた。

『本日午後15時ころ、動画投稿サイトにアップされた映像が、世界中で大きな話題となっています』

 画面にはアキラの姿。

 続いてユウ。

 さらに瀬里奈。

 そしてサトミ。

『こちらをご覧ください』

 映像が戦闘シーンに切り替わる。

『アキラ大帝様と呼ばれている、この人物は凄いですね』

「アキラ大帝様……」

 アキラが眉をひそめる。

「誰だよ、それ」

「アキラ君でしょ」

 サトミが笑う。

「クラスLINEでそう呼ばれてるじゃん」

「俺は認めてないんだけどな……」

 ニュースキャスターは続ける。

『そして、横にいる槍を持った女性も相当な戦闘能力を持っているようです』

 ユウが画面を見る。

『さらに後方から飛んでくる矢。これも非常に正確です』

 瀬里奈が驚く。

「私、めちゃくちゃ褒められてる……」

「よかったな」

 アキラが笑う。

 ところが、次の映像に切り替わった瞬間、全員がさらに驚いた。

『そして、こちらの装甲車のような車両は一体何なのでしょうか?』

「装甲車?」

 アキラが吹き出す。

「これハイラックスだぞ」

 画面では、魔物がハイラックスへ突進していた。

 しかし――

 ガンッ!

 魔物が弾き飛ばされる。

 車体には傷一つない。

『ご覧ください。魔物が何度も車両を攻撃していますが、傷一つついていません』

 さらに映像が続く。

 車体から水の刃が飛び出す。

 別の場面では炎の玉。

 さらに別の場面では、植物のようなものまで伸びている。

『さらに、車両から水の刃や炎の玉が発せられているようにも見えます』

「……」

 アキラは黙った。

 ユウがゆっくり振り返る。

「アキラ……」

「うん」

「これ……バレちゃったんじゃない?」

「……完全にバレたな」

 サトミが笑う。

「もう隠す気ないでしょ」

「いや、隠すつもりだったんだけどな……」

 ニュースキャスターは、さらに驚くべき数字を口にした。

『なお、この動画ですが、本日15時ころにアップされたものにもかかわらず、すでに現時点で――』

 画面に数字が表示される。

 8億再生。

「8億!?」

 4人が同時に叫んだ。

「嘘だろ!」

「8億って……」

「世界人口のかなりの人が見てるんじゃないの?」

「アゲダマ戦記のプレイヤーだけでも相当数いるからな……」

 アキラは頭を抱えた。

 しかしニュースは、さらに続く。

『ただ、これだけの再生数となれば、動画投稿者には相当な収入が入る可能性がありますが……』

 キャスターの表情が少し曇る。

『現在、世界各国で通貨の価値が急速に低下しているため、単純に再生数が増えれば資産が増える、という状況ではありません』

 画面に世界各国の為替情報が並ぶ。

 円。

 ドル。

 ユーロ。

 その他の通貨。

 その価値が、大きく揺らいでいる。

『魔物による物流網の寸断、工場の停止、輸送能力の低下、金融市場の混乱などにより、各国の通貨は大きく下落しています』

 ユウが不安そうに画面を見る。

「お金の価値がなくなってきてるの?」

「正確には、通貨の価値が大きく変動してるってことだな」

 アキラが答える。

 ニュースでは続いて、金や銀の映像が流れた。

『一方で、金貨、銀貨など、現物として価値を持つものへの注目が急速に高まっています』

 画面には金塊、銀塊、金貨などが映る。

『現在、一部地域では、現金よりも金や銀、食料、医薬品など、実際に使える物資を重視する動きも出ています』

 アキラは黙ってテレビを見る。

 そして、小さく呟いた。

「……世界が変わってきたな」

 ユウも頷く。

「うん」

 アキラは自分のスマートフォンを見る。

 そこには、新しく解禁されたアゲダマショップ。

 そして、魔石自動回収バック。

 さらに、今日倒した魔族。

 世界中に拡散された動画。

 魔石の価値。

 通貨の下落。

 金と銀への注目。

 すべてが一本の線でつながっているように感じた。

「……これから、もっと大変なことになるぞ」

 アキラはそう言った。

 その頃、世界各地では――

 人々が、自分たちの持っているものの価値を見直し始めていた。



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