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アゲダマ戦記:ゲームが現実に降臨して世界のルールが急変したお話。  作者: 忍絵 奉公


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第54話 アゲダマショップ、解禁!


島津吉貴が倒れた。

吉貴の死体から黒い霧のようなのが、どこかに流れて行った。

まるで魂のように。

その瞬間だった。

周囲にいた魔物たちが、一斉に逃げ始めた。

マンキーが木々の間へ消えていく。

ビッグバッドが空へ飛び去る。

トリッキーも、枝を揺らしながら森の奥へと逃げていく。

「逃げていくぞ……」

瀬里奈が呟く。

「吉貴がいなくなったからかな」

サトミが周囲を見回す。

アキラは刀を下ろした。

「とりあえず、終わった……のか?」

全員がスマートフォンを見る。

すると――。

ピコン!

ピコン!

ピコン!

ピコン!

全員の画面に、同じ表示が出ていた。

【レベルアップ!】

「え?」

ユウが画面を見つめる。

【レベル40】

「40!?」

瀬里奈が叫んだ。

「私も!」

サトミも確認する。

「私も40!」

ユウが自分の画面を見て叫んだ。

「私も40!」

アキラもスマートフォンを見る。

【レベル40】

「全員40だ!」

「すげぇ!」

4人が顔を見合わせる。

「一気に上がった!」

「魔族って、経験値どれだけ持ってるのよ!」

「とんでもないな……」

しかし。

ピコン!

ピコン!

ピコンピコンピコンピコン!

今度はLINEの通知が始まった。

「……何これ?」

ユウが画面を見る。

通知が止まらない。

「ちょっと待って!」

瀬里奈がスマートフォンを確認する。

「私も!」

「俺もだ」

サトミの画面も通知で埋まっていく。

どうやら――。

アゲダマアカウントを持っている全員に、何らかの通知が送られたらしい。

つまり。

世界中。

1億人以上。

「……」

アキラが絶句する。

そして、アゲダマ内チャットを開いた。

そこは完全なカオスだった。

『今の何!?』

『魔族って何?』

『誰か倒したの?』

『レベル40の魔族ってなったんだけど!』

『世界通知って出たぞ!』

『日本の霧島ってところらしい!』

『霧島どこ!?』

『誰が倒したんだよ!』

『人類初って出てたぞ!』

『魔族ってゲームにいたっけ?』

『俺、レベル上がってないぞ!』

『なんで!?』

『経験値もらった人いる?』

『誰か説明してくれ!』

『アゲダマって何!?』

「うわぁ……」

ユウが頭を抱えた。

「世界中が大混乱してる」

「そりゃそうだろ」

アキラも苦笑する。

「いきなり1億人のスマホに世界規模の通知が飛んだんだから」

その時だった。

ユウが地面を見る。

「ねぇ」

「ん?」

「吉貴の魔石は?」

アキラも周囲を探す。

「……ない」

島津吉貴が倒れていた場所。

そこには、魔石が落ちていない。

「普通なら魔石があるよな?」

アキラが眉をひそめる。

スマートフォンを確認する。

すると、新しい表示が出ていた。

【低級魔族1体討伐済み】

【討伐報酬】

【5000アゲダマ】

【討伐参加者:4名】

そして、その下。

【合計30000アゲダマ】

「……」

アキラが画面を見つめる。

「ちょっと待て」

ユウが覗き込む。

「5000×4人なら20000じゃない?」

「そうなんだよ」

アキラが眉をひそめる。

「なんで30000なんだ?」

「あ、さっきの報酬1万?」

4人で画面を見る。

すると、その下に小さな表示があった。

【管理リーダー報酬】

【10000アゲダマ】

「……」

全員がアキラを見る。

「あんただけ?」

サトミが聞く。

「らしい」

アキラの画面には、

【管理リーダー:アキラ】

と表示されていた。

一方、ユウたちの画面には、

【管理リーダー:アキラ】

と表示されている。

「何これ?」

ユウが首を傾げる。

「俺にも分からん」

アキラは画面をスクロールする。

そして――。

「……」

その下に、見慣れない項目があった。

【アゲダマショップ】

「こ……これは……」

アキラの目が輝いた。

「開いてみよう」

タップ。

画面が切り替わった。

【アゲダマショップ】

【回復ポーション・小】

【回復ポーション・中】

【回復ポーション・上】

【回復ポーション・特上】

「おお……」

さらに下。

【魔力回復ポーション・小】

【魔力回復ポーション・中】

【魔力回復ポーション・上】

【魔力回復ポーション・特上】

「マカより効くのか?」

アキラが呟く。

さらにスクロール。

武器。

防具。

アクセサリー。

道具。

消耗品。

様々な商品が並んでいる。

「20種類くらいあるぞ」

瀬里奈が驚く。

「これ……買えるの?」

ユウが聞く。

アキラは商品をタップする。

価格が表示された。

「買える」

「本当に?」

「アゲダマで買える」

4人の間に沈黙が落ちる。

世界が変わって1カ月。

魔物を倒し。

魔石を集め。

食料を確保し。

自分たちで武器を作ってきた。

だが――。

今、ゲーム世界と現実世界を繋ぐ、本物のショップが出現した。

アキラは小さく笑った。

「……世界が、また変わるぞ」

そして、その時。

ユウが気づいた。

「アキラ」

「ん?」

「さっきの戦い……動画撮ってたよね?」

「撮ってた」

アキラは運転席を見る。

ハイラックスの運転席には、ボス戦の様子を撮影するためのスマートフォンが取り付けてあった。

「せっかくだから、LINEに上げるか」

「世界中が大騒ぎしてるところに?」

「うん」

「さらに?」

「さらに」

アキラは動画をLINEにアップロードした。

タイトル。

『霧島神社 魔族・島津吉貴戦』

送信。

数秒後。

ピコン。

ピコン。

ピコン。

ピコンピコンピコンピコンピコン!

通知が爆発した。

『動画きた!』

『これ本物!?』

『魔族ってこんなに強いの!?』

『こいつ人間じゃないだろ!』

『どうやって倒した!?』

『御神木が動いてるぞ!』

『最後の攻撃何!?』

『魔族!滅!』

『アゲダマショップって何!?』

『管理リーダーって誰!?』

『アキラってあのアキラ!?』

『ギュン!アキラ大帝様!?』

『攻略方法教えて!』

「……」

アキラはスマートフォンを見つめた。

「やばいな」

ユウも画面を見る。

「完全にカオスだね」

サトミが笑う。

「世界中がアキラ君探してるんじゃない?」

瀬里奈も笑った。

「これ、もう隠れて生きるの無理じゃない?」

アキラは少し考える。

そして――。

「動画見たらアラファト議長焦るだろ」

「なんで?」

「魔石の使い方がオープンになったら、独占市場じゃなくなる」

アキラはハイラックスの運転席に戻った。

「俺たちは今まで通り、魔物を狩って、飯を食って、生きていくだけだ」

エンジンをかける。

「それに――」

アキラはスマートフォンの画面を見る。

【アゲダマショップ】

「これ、ちょっと面白そうだろ?」

ハイラックス――ストツーが、再び霧島神社の参道を走り始めた。


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