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アゲダマ戦記:ゲームが現実に降臨して世界のルールが急変したお話。  作者: 忍絵 奉公


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第53話 人類初、魔族討伐!


ゴォォォォォ……。

島津吉貴の両手から噴き出す炎が、明らかに大きくなっていた。

さっきまでとは違う。

炎の勢いが増している。

熱気だけで、広場の空気が揺らいでいた。

「……まずいな」

アキラが刀を構える。

吉貴がニヤリと笑った。

「ここからが――」

「無酸素運動!」

アキラが突然叫んだ。

「は?」

ユウが目を丸くする。

「押しまくれ!」

アキラが叫ぶ。

「息が続く限り攻撃するぞ!」

「どういう作戦!?」

「しぬまで息を止めて攻撃だ!」

「それ作戦なの!?」

アキラは答えなかった。

すでに吉貴へ突っ込んでいた。

「うおおおおお!」

ザンッ!

刀を無茶苦茶に振る。

吉貴がかわす。

「甘い!」

「まだだ!」

逆方向から切り返す。

ザンッ!

吉貴が身体をひねる。

その隙にユウが突っ込む。

「せいっ!」

槍が突き出される。

吉貴がバックステップ。

しかし、その先に水刃が飛んできた。

「水刃!」

サトミの攻撃。

吉貴は身体を反らして避ける。

その直後。

バシュッ!

瀬里奈の矢が飛ぶ。

「そこ!」

吉貴が首をひねる。

矢が頬をかすめる。

「ちっ!」

吉貴が舌打ちした。

「押せ!」

アキラが叫ぶ。

「押せ! 押せ! 押せ!」

刀。

槍。

水刃。

矢。

炎。

そしてハイラックスからの魔法攻撃。

次々と攻撃が飛んでいく。

吉貴は避ける。

右。

左。

後ろ。

上。

身体をひねり、跳び、しゃがみ、回転する。

まるで踊っているかのようだった。

だが――。

少しずつ。

ほんの少しずつ。

攻撃が当たり始めた。

「そこだ!」

ザシュッ!

アキラの刀が白装束を切り裂く。

「ぐっ!」

吉貴の身体に傷が入る。

「いける!」

ユウの槍が腹をかすめる。

「ぐあっ!」

さらに水刃。

シュパッ!

肩を切り裂く。

バシュッ!

瀬里奈の矢が腕に刺さる。

「ぐっ……!」

吉貴の動きが、わずかに鈍った。

「効いてる!」

ユウが叫ぶ。

「もっとだ!」

アキラが踏み込む。

ザン!

ザン!

ザン!

連撃。

吉貴が避ける。

だが、完全には避けきれない。

少しずつ。

少しずつ。

その身体が削られていく。

吉貴が息を荒くする。

「待て……」

アキラが刀を振る。

「聞こえん!」

「話を――」

「聞こえん!」

ザンッ!

「少し待――」

「聞こえん!」

ユウも槍を突き出す。

「私も止まらないよ!」

シュッ!

「ぐっ!」

サトミも魔力を込める。

「水刃!」

シュパッ!

瀬里奈も弓を引く。

「そこ!」

バシュッ!

吉貴が避ける。

しかし、逃げる場所がない。

前にはアキラ。

横にはユウ。

後方からサトミ。

さらに瀬里奈の矢。

「逃がすな!」

アキラが叫ぶ。

「おお!」

「せいっ!」

「ファイヤーボール!」

「そこ!」

全方向から攻撃が飛び交う。

吉貴は必死に避け続ける。

だが――。

ついに足が止まった。

「ぐ……」

膝をつく。

「今だ!」

アキラが刀を振り上げる。

その瞬間。

ズズズズズ……。

地面が揺れた。

「え?」

アキラが振り返る。

巨大な御神木が、ゆっくりと動いていた。

太い枝が大きく持ち上がる。

吉貴が顔を上げた。

「な……」

ズドォォォン!

御神木の巨大な枝が、槍のように突き出された。

「ば……」

ドスッ!

太い枝が、吉貴の身体を貫いた。

「ば……かな……」

吉貴の口から血が流れる。

身体が力を失う。

そして――。

ドサッ。

島津吉貴は倒れた。

静寂。

広場にいた魔物たちも、動かない。

アキラも。

ユウも。

サトミも。

瀬里奈も。

しばらく、その場に立ち尽くしていた。

「……死んだ?」

ユウが恐る恐る聞く。

アキラが近づく。

鑑定する。

反応なし。

「死んだ」

その瞬間だった。

ピコン!

全員のスマートフォンが同時に鳴った。

【人類初の魔族討伐、おめでとうございます!】

【特別討伐ボーナス!】

【1万アゲダマを獲得しました!】

「……」

アキラがスマートフォンを見る。

「え?」

ユウも見る。

「なに?」

サトミも見る。

「1万?」

瀬里奈も覗き込む。

「アゲダマ?」

アキラがスマートフォンを見ながら首を傾げた。

「1万アゲダマボーナス?」

するとユウが、突然ものすごく冷静な顔になった。

「ねぇ」

「ん?」

「そもそも、アゲダマってどんな意味なの?」

「……」

アキラが固まる。

「今さら?」

「だって知らないもん」

「いや、ゲームやってただろ?」

「ログインすら出来てませんから」

「そうだっけ?」

ユウは腕を組む。

「そもそもアゲダマって何?」

アキラは少し考えてから答えた。

「ゲーム内通貨の名称だよ」

「通貨?」

「ああ」

アキラはスマートフォンを見ながら説明する。

「円、ドル、アゲダマ」

「……」

「ゲーム内では、それが普通だったんだよ」

ユウが納得したように頷く。

「なるほど」

サトミが首を傾げる。

「じゃあ、1万アゲダマって日本円でいくら?」

「知らん」

「え?」

「ゲーム内通貨だから、現実の円とは別物だ」

瀬里奈が笑った。

「じゃあ、この1万アゲダマ、何に使えるの?」

アキラはスマートフォンを見つめる。

そこには、今まで見たことのない新しい表示があった。

【アゲダマ残高:10,000】

「……」

アキラの目が輝いた。

「これは……」

ユウが嫌な予感を覚える。

「何?」

アキラがニヤリと笑う。

「ゲーム内ショップが、現実世界で使える可能性がある」

「え?」

「ちょっと待て」

アキラがスマートフォンを操作し始めた。

霧島神社。

魔族を倒したことで。

世界に、また新しいルールが追加されようとしていた。



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