第48話「銀の魔石は0.003%」
あれから2週間が過ぎた。
アキラたちの生活は、すっかり変わっていた。
庭には、新しくアーチェリーの練習場ができている。
的の中心に向かって、瀬里奈が弓を引き絞る。
「……ふっ!」
シュッ!
矢が一直線に飛んでいく。
ドン!
的の中心近くに突き刺さった。
「よし!」
瀬里奈が小さくガッツポーズをする。
「かなり上手くなったな」
アキラが感心する。
「毎日練習しましたから」
「矢先もミスリルにしたしな」
瀬里奈の矢は、矢先だけがミスリルになっている。
普通の矢よりもはるかに頑丈で、魔物の硬い皮膚や甲殻にも対応できる。
そして、この2週間でアキラたち自身も大きく成長していた。
宮崎県を囲む城壁は、なんと9割近くまで完成している。
各地から人や資材が集められ、急ピッチで建設が進められていた。
そしてアキラたちも。
レベル30。
アキラ。ギフト鑑定※変化なし。野草なども鑑定出来る事が分かった。
レベル30。
ユウ。ギフト料理D※バフは+2補正、3時間継続
レベル28。
サトミ。ギフト結界E※魔力結界も加算された。結界の色が水色から黄緑に変化
レベル27。
瀬里奈。ギフト収納E※段ボールの大きさから、3立米くらいになった。
全員が、かなり強くなっていた。
「あと少しで全員30台だな」
アキラが庭を見渡す。
「でも……」
ユウが遠くを見る。
その視線の先には、アオンがある。
2週間前、ゾンビと遭遇した場所。
今では、完全に状況が変わっていた。
「アオン、魔族の巣窟になってるよね」
「そうだな」
アキラは頷いた。
アオンの周囲には、ゾンビ。
ゴブリン。
オーク。
その他にも、これまで見たことのない魔物が徘徊している。
さらに、その奥には魔族らしき存在も確認されていた。
しかし、誰が頭なのかは分からない。
「まだ攻撃はできない」
アキラが言う。
「レベル30でも?」
「相手の正確な戦力が分からない。それに、あそこには高位魔族がいる可能性が高い」
「じゃあ近づけないね」
「近づかない方がいい」
アキラはそう言った。
今のところ、アオンから魔族が大規模に出てくる様子もない。
だからこそ、アキラたちは戦力を蓄えながら様子を見ていた。
そのときだった。
バタバタバタバタ……。
空からヘリコプターの音が聞こえてきた。
「ヘリ?」
サトミが空を見上げる。
ヘリコプターが都城の空を飛んでいる。
そして、そのヘリから何かが大量に落とされていた。
「紙?」
アキラが庭に落ちた紙を拾う。
チラシだった。
そこには大きな文字で書かれている。
【宮崎県の施設が充実します】
そして、その下には。
【9月27日、日曜日、10時】
【避難所に集まってください】
【宮崎県への避難ヘリを出します】
「避難ヘリか」
アキラはチラシを眺めた。
ユウが横から覗き込む。
「どうする?」
アキラは少し考えた。
「どうするって言われてもな……」
サトミもチラシを見る。
「行った方が安全なんじゃない?」
瀬里奈は少し考えてから言った。
「でも、私たちって特に不便してないよね」
「まあな」
「むしろ、避難所に行ったら自由じゃなくなるかもね」
「それはある」
アキラたちの生活は、今ではかなり安定していた。
肉類は、バルログなどの魔物の肉。
野菜は家庭菜園。
さらに、人がいなくなった畑から収穫できる野菜もある。
移動手段もある。
4トントラック。
そしてハイラックス。
どちらもアキラが無免許で運転している。
「武器もかなり揃ったしな」
アキラは庭を見渡す。
ミスリルの剣。
オリハルコンの槍。
炎の杖。
雷の杖。
ミスリルの矢。
そして、自宅の壁。
「家の壁も今やオリハルコンだ」
「最初は発泡スチロールだったのにね」
ユウが笑う。
「それを金の魔石で変えたんだよ」
アキラは右手を見る。
そこには、金色の魔石を使った指輪がある。
「あと、銀の魔石があれば完璧なんだよな」
「銀の魔石?」
サトミが聞く。
「それって、どんな魔物が持ってるの?」
「それが分からない」
「え?」
アキラは苦笑した。
「超レアなんだ」
「どのくらい?」
「ゲームでは、くじ引き要素だった」
アキラは指を立てる。
「銀の魔石の出現確率は、0.003%」
「0.003%……」
ユウが考え込む。
「ちなみに金は?」
「0.001%」
「金、持ってるじゃん」
ユウが即答した。
「……そうだな」
「今まで狩った魔物の数って、大体1000くらいだろ?」
「まあ、そのくらいだな」
ユウは少し考える。
そして、すぐに答えた。
「10万のうち3つね」
アキラの目が丸くなった。
「すごいな!」
「え?」
「頭いい!」
「そんなことで?」
「賢い!」
アキラが大げさに褒める。
「ギュン!」
サトミも両手を握って叫んだ。
「ギュン!」
「いや、サトミまで言うなよ!」
ユウが少し照れる。
「だって計算しただけだし……」
「いや、こういう感覚が大事なんだよ」
アキラは笑った。
「ゲームの確率と現実の試行回数を考えると、今まで金の魔石が出たこと自体がかなり幸運なんだ」
「じゃあ銀は?」
瀬里奈が聞く。
アキラはアオ9ンの方向を見る。
「銀の魔石が欲しいなら……」
しばらく黙る。
「魔物をもっと倒さないとな」
遠くに見えるアオン。
その周囲には、今も魔物が徘徊している。
まだ、アキラたちはそこへ近づけない。
しかし。
レベル30になった今。
少しずつ、状況は変わり始めていた。
そして9月27日。
避難ヘリが飛ぶ日も、近づいていた。




