↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アゲダマ戦記:ゲームが現実に降臨して世界のルールが急変したお話。  作者: 忍絵 奉公


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/62

第45話「ペーパードライバー、4トントラックを運転する」


「もっと速く!」

アキラが叫んだ。

「これ以上は無理です!」

運転席の瀬里奈は、必死にハンドルを握っていた。

しかし、その運転はひどかった。

「……瀬里奈」

「はい!」

「今、何速?」

「1速です!」

「なんでだよ!」

「分かりません!」

「分かりませんじゃねぇ!」

瀬里奈はアクセルを全開に踏み込んでいた。

ブォォォォォン!

エンジンがものすごい音を立てる。

しかし、トラックは思ったほど進まない。

ガクン!

ガクガクッ!

「うわっ!」

車体が激しく揺れる。

「ノッキングしてるぞ!」

「ノッキングって何ですか!?」

「エンジンが苦しんでる!」

「私も苦しいです!」

「ギア上げろ!」

「どうやって!?」

「マニュアルだろ!」

「私、オートマ普通免許です!」

「え?」

アキラの顔が固まった。

「じゃあ、このトラック……」

「マニュアル車です!」

「お前、免許本当に持ってるのか?」

「持ってます!」

瀬里奈が叫んだ。

「でもオートマ普通免許! しかもペーパーです!」

「なんでそんな奴に運転させたんだ俺は!」

「アキラ君が運転してくれって!」

「俺も4トンなんか運転したことねぇよ!」

「じゃあ私と同じじゃないですか!」

「全然違う!」

そのとき。

ガリガリガリッ!

「うわぁぁぁ!」

トラックの右側面が壁をこすった。

「内輪差!」

アキラが叫ぶ。

「内輪差って何ですか!」

「曲がるとき後ろのタイヤが内側を通るんだよ!」

「先に言ってください!」

「普通は知ってる!」

「ペーパーの上、オートマだし、普通免許です!」

「そうだった!」

また車体がガクガクと揺れる。

そのたびに、狭い車内で3人が押し合う。

「ちょっと、アキラ!」

「なんだ!」

「動かないで!」

「動けないんだよ!」

ユウが困った顔をする。

「なんか硬いのが当たってるんですけど」

「俺だって知らねぇよ!」

サトミも身動きできずに言う。

「こっちにも当たってるよ?」

「だから狭すぎるんだよ!」

アキラが必死に身体をずらす。

「シフトノブだ!」

「え?」

「シフトノブ!」

アキラが叫んだ。

「俺の身体じゃない! シフトノブだ!」

「……ああ」

ユウが納得する。

サトミも頷いた。

「紛らわしいね」

「紛らわしくねぇよ!」

そんなことをしている間にも、トラックは1速のまま走っている。

ブォォォォォン!

ガクガクガクッ!

「もう駄目だ!」

アキラが前方を指差した。

「アオンの隣にスタンドがある!」

「スタンド?」

「ガソリンスタンド!」

「そこに行け!」

瀬里奈がハンドルを切る。

「分かりました!」

「ゆっくり!」

「はい!」

ガリッ!

「ゆっくりって言っただろ!」

「無理です!」

どうにかこうにか、トラックはガソリンスタンドへ入った。

そして、奇跡的に給油スペースへ到着する。

「止まれ!」

瀬里奈がクラッチを踏み損ねる。

ガクン!

「うわっ!」

エンジンが大きく震えた。

「止まりました!」

「……エンストしただけだ」

「止まったからいいじゃないですか!」

「まあ……そうだな」

アキラは深く息を吐いた。

ようやく静かになった。

4人は全員、ぐったりしていた。

「生きてる……」

ユウが呟く。

「車に乗っただけなのに疲れた……」

サトミも疲れた顔をしている。

アキラはトラックから降りた。

「とりあえず給油するぞ」

ガソリンスタンドは無人だった。

セルフ式らしく、給油機だけが動いている。

「これ、使えるのかな?」

ユウが心配そうに聞く。

アキラは給油機を確認する。

「普通に電源が入ってるな」

試しにお金を入れる。

すると、画面が表示された。

「給油できるぞ」

「本当に?」

「ああ」

ノズルを取って給油を開始する。

ゴォォォ……。

ガソリンがタンクへ入っていく。

「すごい……」

瀬里奈が呟いた。

「世界中が大変なことになってるのに、セルフの給油機は普通に動いてる」

「電気が生きてる場所は、まだ使えるってことだな」

給油を終える。

アキラはトラックを見上げた。

「このトラックはいただこう」

ユウが驚いた。

「いいのかな?」

瀬里奈が真顔で言った。

「持ち主、ゾンビですよ」

「そうだった!」

サトミも頷く。

「じゃあ問題ないね!」

「問題はあると思うけどな……」

アキラは苦笑した。

しかし、今の世界では移動手段そのものが貴重だ。

4トンも積めるトラックなら、食料や魔石、資材を大量に運べる。

何より瀬里奈は、一応普通自動車の免許を持っている。

「よし」

アキラがトラックの荷台を確認する。

「これからこいつを使おう」

「私が運転ですか?」

瀬里奈が恐る恐る聞く。

「……練習しろ」

「はい!」

「ただし、次は1速全開禁止な」

「分かりました!」

アキラは周囲を見渡した。

そして、道路の先を見る。

「そうだ」

「どうしたの?」

ユウが聞く。

「レットの餌だ」

アキラはレットを見る。

レットはユウの頭の上で、

「キュー」

と鳴いている。

「この222線には、ドラッグストアが3件ある」

「ドラッグストア?」

「食料やペット用品がある可能性が高い」

「レットの餌を探すの?」

サトミが聞く。

「そうだ」

アキラは頷いた。

「今後、こいつを連れて行くなら餌の確保は重要だ」

レットが、

「キュー!」

と嬉しそうに鳴いた。

「お前、分かってるのか?」

アキラがレットの頭を撫でる。

レットは目を細める。

「キュー……」

「よし。次はドラッグストアだ」

アキラが運転席を見る。

そして瀬里奈を見る。

「瀬里奈」

「はい!」

「今度は2速に入れてみよう」

「……2速って、どこですか?」

「お前ぇぇぇ!」

222線の静かな道路に、アキラの叫び声が響き渡った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。