第42話「レベル14、追いつく!」
「私は飯田瀬里奈。18歳です」
黒い羽を揺らしながら、瀬里奈が自己紹介した。
「趣味はゲームと神社巡り。あと、オートマの免許を持っています」
「お!」
アキラが振り返った。
「免許持ちは頼もしいな!」
「車は?」
サトミが聞く。
「ないです」
「そこはないのか!」
アキラが笑った。
「でも免許があるだけでも助かるぞ。車を手に入れたとき、運転できる奴がいるのは大きい」
「確かに」
ユウも頷いた。
「ところで、瀬里奈のレベルは?」
瀬里奈はスマートフォンを取り出した。
「えっと……」
画面を見る。
「さっきので、レベル7になりました」
「え?」
サトミも慌ててスマートフォンを見る。
「私も!」
「何?」
「レベル5になりました!」
「おお!」
アキラが嬉しそうに笑った。
「すごいな。バルログは経験値も高いからな」
「そんなに高いんだ?」
瀬里奈が聞く。
「ああ。最初の頃に倒す敵としては、かなりおいしい」
「じゃあ、すぐに差が縮まる?」
「そうだな」
アキラがスマートフォンを見る。
「俺は……」
画面を確認する。
「レベル15になってる」
「えっ!」
ユウも自分のスマートフォンを見る。
「私は14!」
そして、にやりと笑った。
「もうすぐアキラ追い越す!」
「それは無理だ!」
アキラが笑う。
「なんで?」
ユウが眉を寄せる。
「無理じゃないでしょ」
「無理だって」
「無理じゃない!」
「無理!」
「追い越す!」
「無理!」
「追い越す!」
「無理!」
「なんでよ!」
「だから無理なんだって!」
2人の会話を聞いていた瀬里奈が首を傾げる。
サトミも不思議そうに見ている。
実は、この2人は少しだけ話が噛み合っていなかった。
ユウは単純にレベルの話をしている。
レベルなら、いつか追いつくことはできる。
しかしアキラが言っているのは、経験値の話だった。
アキラはゲーム開始直後から、誰よりも多くの魔物を倒している。
その差は簡単には埋まらない。
たとえユウがレベルで追いついても、積み重ねてきた総経験値まで追いつくわけではない。
だが、それを説明する気はないらしい。
「とにかく!」
ユウが指を突きつける。
「いつか追い越すから!」
「はいはい」
アキラは笑った。
「頑張れ」
「絶対だからね!」
そんなやり取りをしながら歩いていると、目的地が見えてきた。
「着いたぞ」
アキラが立ち止まる。
目の前には、大型商業施設。
イオンだった。
だが、入り口は閉まっている。
自動ドアも動いていない。
シャッターも下りている。
「閉まってるね」
サトミが言う。
「まあ、そうだろうな」
アキラは周囲を見る。
「でも、おかしい」
「何が?」
ユウが尋ねる。
「ここまで来る途中、結構な数の建物が壊れてただろ」
「うん」
「なのに……」
アキラはイオンの外壁を見上げる。
ガラスは無傷。
窓も割れていない。
外壁にも大きな傷はない。
入り口周辺にも、魔物が暴れたような跡がない。
「綺麗すぎる」
瀬里奈が周囲を見回す。
「確かに……」
アキラは入口の前まで歩いた。
自動ドアを押してみる。
動かない。
「鍵が掛かってる」
「裏口は?」
ユウが聞く。
「一周しよう」
アキラが歩き出す。
4人と1匹は、イオンの建物に沿って歩いていく。
表から見ても異常はない。
側面も無傷。
窓ガラスも割れていない。
駐車場には何台か車が残っている。
だが、人の気配はない。
「……静かすぎない?」
瀬里奈が小声で言った。
「そうだな」
アキラも声を落とした。
そして、建物の裏側へ回った。
そこにも、壊れた場所はなかった。
「なんでここだけ……」
サトミが呟く。
レットが突然、足を止めた。
「キュー……」
「ん?」
アキラがレットを見る。
レットはイオンの建物を見上げていた。
そして、小さく鼻を鳴らした。
「グー……」
アキラの表情が変わった。
「……またか」
全員が立ち止まった。
無傷のイオン。
人の気配がない建物。
そして、レットの悪意察知。
アキラはミスリルの剣に手をかけた。
「中に何かいるぞ」




