第38話「サトミのスカジャン」
生姜焼き定食を食べながら、4人は今後のことについて話していた。
「ところでサトミ」
「なに?」
「料理はできるのか?」
「……できない」
サトミは即答した。
「まったく?」
「まったく」
「包丁は?」
「怖い」
「米は?」
「炊飯器なら」
「じゃあ料理担当はユウだな」
「え?」
ユウが顔を上げる。
「サトミは洗濯と風呂掃除担当」
「わかった!」
サトミは素直に頷いた。
「床掃除は?」
「ルンバ君がいる」
アキラが指差した先では、丸いロボット掃除機が黙々と床を走っていた。
「……便利な時代だね」
「こういう時代だからな」
「どういう時代よ」
ユウが呆れた顔をする。
そのとき、レットがテーブルの下から顔を出した。
「キュー」
「あ、そうだ」
アキラはレットを見る。
「ところでレットは何を食べるんだ?」
「キュー?」
「この前、チャオチュールをおいしそうに食べてたよ」
ユウが答える。
「ニャンコか!」
「キュー!」
レットは嬉しそうに鳴いた。
「く~! かわいくなく……」
「キュー!」
「かわいいな!」
アキラはあっさり負けた。
「今度、ペットショップに行ってレットのご飯を探そう」
「ペットショップ?」
サトミが反応する。
「そういえば、アオンにあったな」
アキラが言った。
ユウが首を傾げる。
「また?」
「いや、違う。アオンだ」
「?」
「歩いて3分。パチンコ屋の隣にあるやつ」
「あぁ、そっちね」
ユウが納得する。
「でも、開いてるかな?」
「わからん」
アキラは箸を置いた。
「明日行こう」
「おお!」
サトミが元気よく返事をした。
「それと、炎の杖はサトミに持たせる」
「え?」
ユウが驚いた。
アキラは当然のように説明する。
「後方支援だ」
「え?」
「ユウ、お前は槍も使えるし、雷も撃てるだろ」
「うん」
「前衛だろ」
「私が?」
「そうだ」
アキラは真顔で言った。
「後ろから雷を放たれたら全滅する」
「味方まで?」
「味方まで」
「……気をつけます」
ユウは神妙に頷いた。
「だからサトミは後ろから炎」
「わかった!」
サトミは嬉しそうに炎の杖を見つめた。
「魔法使いみたい!」
「実際、魔法使いみたいなもんだ」
「やった!」
サトミの目が輝く。
そして食事が終わると、アキラが立ち上がった。
「あとサトミ」
「なに?」
「スカジャン選べ」
「え?」
「クローゼットにあるから」
「スカジャン?」
「この前、店から持ってきただろ。6着ある」
「選んでいいの?」
「いいぞ」
「やった!」
サトミは一気にテンションを上げた。
クローゼットを開けると、そこには6着のスカジャンが並んでいた。
サトミは1着ずつ手に取って確認していく。
「これもいい……こっちもいい……」
そして最後に、1着の前で止まった。
「これ!」
背中には、マリリン・モンローの有名な、スカートが風でめくれるシーンが大胆に刺繍されていた。
「それか……」
アキラが苦笑する。
「これがいい!」
サトミは満面の笑みだった。
「じゃあ、それに合う皮パンも持っていけ」
「いいの?」
「ああ」
「やった!」
サトミはスカジャンと皮パンを抱えて、自分の部屋へ持っていく。
アキラは黄金の指輪を取り出した。
「そうだ。これ、素材を返還しておこう」
スカジャンの特殊素材を元の状態へ戻す。
「これで普通のスカジャンだ」
サトミは大切そうにスカジャンを眺めていた。
「明日は朝飯7時」
アキラが言った。
「出発8時。よろしく」
「おお!」
ユウも頷く。
「わかった」
「あとサトミ」
「はい!」
「2階のユウの隣の部屋な」
「わかった!」
サトミは嬉しそうに答えた。
「じゃあ、解散」
3人はそれぞれの部屋へ向かっていった。
レットだけは、アキラの後をついてくる。
「キュー」
「お前も寝るのか?」
「キュー」
「じゃあ明日はペットショップだな」
「キュー!」
アキラは冷蔵庫を開けた。
中からビールを1本取り出す。
プシュッ。
缶を開け、一口飲む。
そしてソファーに座り、テレビの電源を入れた。
ニュース番組が映る。
画面の中では、今日も世界各地の混乱が報じられていた。
アキラはビールを飲みながら、静かに画面を見つめる。
明日はアオン。
そして、レットの食料探し。さらに炎の杖の実戦投入。
アキラは少しだけ笑った。
「明日も忙しくなりそうだな」
隣ではレットが丸くなった。
「キュー……」
テレビから流れるニュースの音だけが、静かな夜のリビングに響いていた。




