第37話「炎の杖、完成!」
「アキラ、できたよー!」
家の中からユウの声がする。
「おう!」
返事をしながら、アキラは庭の駐車スペースに座り込んでいた。
目の前にあるのは、グリズリーから手に入れた赤い魔石。
5センチ。
かなり大きい。
「これで杖を作る」
アキラは魔石を眺めながら呟いた。
「……」
しかし、ふと手が止まった。
「待てよ」
昨日作った雷の杖。
あれは魔石そのものから電気が発生していた。
つまり――
「この魔石、火だよな」
アキラは赤い魔石を見る。
「なら、杖から炎が出る」
ここまではいい。
問題は――
「杖も手も燃えるな」
「……」
アキラは頭を抱えた。
「どうすればいい?」
腕を組む。
「考えろ~」
「考えろ~」
庭を歩きながら、何度も呟く。
「…………」
「…………」
「………………」
そして突然。
「突破!」
アキラが顔を上げた。
「まず魔石を先端に持っていく」
赤い魔石を手に取る。
「持ち手は熱に強くて、丈夫なチタンがいいな」
アキラはホームセンターから持ってきた大量の針金を取り出した。
魔石を針金で固定する。
ただ巻くだけではない。
「こうして……」
魔石を両側から挟み込むように針金を巻く。
まるで金属の手が魔石を握っているような形だ。
「かっこいいな」
アキラは満足そうに眺める。
そして金の指輪を近づける。
「素材変化」
魔力を流す。
針金が光った。
チタンへと変化する。
「よし!」
魔石はチタン製の固定具にがっちりと掴まれた。
「これなら燃えない」
次にアキラは、物干し竿を持ってきた。
「これを……」
約1メートル。
ちょうどいい長さに切断する。
そして先ほど作った魔石の固定具を先端に取り付けた。
「固定して……」
再び魔力を流す。
物干し竿がチタンへ変化する。
すると――
スッ。
魔石を固定した先端と、チタンの物干し竿が完全に一体化した。
「おお……!」
そこには、見事な杖が完成していた。
「売れば、かなりの値がつくだろうな」
アキラは満足げに杖を眺める。
しかし――
「待て」
また何かに気づいた。
「雷の杖……」
アキラは昨日の杖を見る。
「魔力伝導率が高かったから、あんなに強烈な電撃が出たんだった」
目の前のチタン製の杖を見る。
「チタンは……そこまで魔力を通さない」
「……」
「これじゃ魔力が魔石まで届かない」
アキラは再び考え込んだ。
「なら……」
物干し竿に針金を巻きつける。
今度は単なる固定ではない。
デザインのように、螺旋状に巻いていく。
「魔石から持ち手まで、これで魔力を通す」
そして、その針金だけを――
「マグネシウム!」
素材変化。
針金がマグネシウムへ変わる。
「これなら魔力を通しやすい」
アキラは杖を握った。
「よし」
魔力を流す。
すると――
ジジジ……。
魔力が螺旋状のマグネシウムを伝わっていく。
先端へ。
そして赤い魔石へ。
ボッ!
魔石が真っ赤に輝いた。
「おお!」
杖の先端から炎が噴き出す。
「成功!」
アキラは興奮した。
「よし、行け!」
杖を振る。
しかし――
ボオオオッ!
炎は杖先から出続けるだけだった。
「……」
アキラが固まる。
「飛ばない」
炎はただ杖の先端で燃えている。
「何!」
アキラは杖を振る。
右。
左。
上。
下。
「なぜだ!」
それでも炎は飛ばない。
「どうすればいいんだ?」
アキラは考える。
「魔力を……」
杖を見る。
「魔力を断ち切る?」
魔石へ流していた魔力。
それを途中で強制的に止める。
「やってみよう」
アキラはもう一度魔力を流した。
赤い魔石が輝く。
炎が生まれる。
そして――
「切れろ!」
魔力を勢いよく断ち切った。
その瞬間。
ボンッ!
炎の塊が杖先から飛び出した。
「うおっ!」
火球は一直線に飛んでいく。
そして――
ドゴン!
庭の塀に命中した。
ボオオオオッ!
塀の周囲、約1.5メートルが一気に炎に包まれた。
「……」
アキラは固まった。
「……あ」
次の瞬間。
「やば!」
アキラは杖を放り出すと、庭のホースを掴んだ。
「消せ消せ消せ!」
ジャーッ!
大量の水を炎へ浴びせる。
「もっと!」
ジャーッ!
「消えろ!」
しばらくして、ようやく炎が消えた。
庭には白い湯気が立ち上っていた。
その時。
「アキラ!」
家の中からユウが飛び出してきた。
「今の何!?」
その後ろからサトミも出てくる。
「爆発したの!?」
「いや……」
アキラはずぶ濡れのホースを持ったまま、赤い魔石の杖を見る。
「火球」
「火球!?」
ユウの目が輝く。
「魔法!?」
「……成功した」
アキラは庭の焦げた塀を見る。
そして、少しだけ笑った。
「本物の火の杖だ」
だが、その威力を見た3人は――
しばらく黙って、焼け焦げた塀を見つめていた。




