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アゲダマ戦記:ゲームが現実に降臨して世界のルールが急変したお話。  作者: 忍絵 奉公


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第29話「結界Fと悪意察知C」


アキラがシャワーを浴びている間も、クラスLINEは大騒ぎだった。

しかも今度は、本人だけではなかった。

《うちの妹、加速F!》

《姉貴が結界F!》

《ばぁちゃん、木登りFだって》

《登るな!》

《ばあちゃん何してんのwww》

《木登りFって何に使うんだよ!》

《山に行ったら最強じゃん》

《うちの父ちゃん、掃除F》

《母ちゃん、裁縫F》

《弟、鼻が利くF》

《なんだよ鼻が利くFってwww》

《うちの犬は?》

《犬はギフトないだろwww》

家族まで巻き込んだことで、メインのグループチャットは完全なカオスと化していた。

そんな中。

「ふぅ……」

シャワーから上がったアキラが、タオルで髪を拭きながら戻ってきた。

「私もシャワー入る」

ユウが立ち上がる。

「あ、そうだ」

「なに?」

「特殊ギフトと回復のグループチャット作ったから、招待したからよろしく」

「分かった」

「じゃあ行ってくるね」

ユウはスマートフォンを持ったまま、浴室へ向かった。

アキラはソファに座り、メインのグループLINEを開く。

「……なんだこれ」

家族まで参加したことで、通知数はさらに増えていた。

だが。

アキラの目が、あるメッセージで止まった。

《姉貴が結界F!》

「……結界?」

アキラは画面を凝視した。

「結界がいるじゃないか!」

思わず声が出る。

「貴重すぎる!」

アキラは慌てて、その投稿に返信した。

《紹介してくれ!》

すぐに返信が来る。

《え? 浮気ですか?》

「違うわ!」

《ナンパ?》

「違うわ!」

《彼氏いるって言ってたけど》

「だから違うわ!」

アキラは必死に打ち返す。

《結界が貴重なの!》

少し間があった。

そして。

《じゃあ言っとくから、明日10時にうちに来てください》

「よし!」

アキラは即座に返信した。

《OK》

結界。

ゲーム時代でも非常に希少だった魔石。

そして、それを扱える可能性があるギフト。

もし本当に結界を張れるなら、自宅の防衛能力が一気に変わる。

「これは絶対に仲間にしたい」

アキラは画面を見ながら笑った。

その時だった。

「グー!」

突然、レットが叫んだ。

「ん?」

アキラが振り返る。

「どうした?」

「グー!」

レットが今まで聞いたことのない声を出している。

普段なら、

「キュー」

と鳴く。

それが今は違った。

「グー……!」

低く、警戒するような声。

「レット?」

アキラはすぐに鑑定を使った。

【名前】レッドホット

【種族】ポムポム

【ギフト】悪意察知C

「……悪意?」

アキラが目を見開く。

「悪意察知C……?」

レットが、

「キュー」

と鳴いた。

そして、コクッとうなずいた。

「分かるのか?」

「キュー」

「誰かがいる?」

「キュー!」

アキラの表情が変わった。

今までのレットとは違う。

明らかに何かを感じ取っている。

アキラは立ち上がった。

「装備する」

スカジャンを着る。

強化した服を身につけ、腰に刀を差す。

そして玄関へ向かった。

その頃には、ユウもシャワーを終えていた。

髪を濡らしたまま、ドライヤーを手にしている。

「アキラ、どうしたの?」

「外に出る」

「え?」

「レットが何かを感じた」

アキラは玄関を開けた。

外はまだ明るい。

時刻は18時。

夕暮れ前の通りに、長い影が伸びている。

アキラは通りへ出た。

そして。

角を曲がったところに、それはいた。

「……オーク」

大きな身体。

緑色の皮膚。

太い腕。

そして、その手には巨大な棍棒。

ズシン。

ズシン。

オークがこちらへ歩いてくる。

「こっちに向かってきてるな」

アキラは鑑定する。

【種族】オーク

【ランク】D

【瞬発】D

「Dか」

アキラは刀の柄に手を置く。

「なんとかなるだろ!」

スッ。

刀を抜く。

そして、鞘を地面に落とした。

カラン。

乾いた音が、静かな通りに響いた。

オークが棍棒を握り直す。

アキラも刀を構えた。

「さて……」

レベル12の身体。

ミスリルの刀。

強化された装備。

そして、初めて敵意を事前に察知してくれたレット。

「どっちが強いか、試してみるか」

オークが、

「グオオオオッ!」

と咆哮した。



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