第28話「特殊ギフトを探せ」
「……身体能力系はいらないな」
ステーキを食べながら、アキラがクラスLINEを眺めていた。
「え?」
ユウが顔を上げる。
「なんで?」
「身体能力はレベルアップすれば上がるからだ」
アキラは箸でステーキを切りながら説明する。
「速筋とか遅筋とか、打たれ強さとか。これはレベルが上がれば自然に強くなる。わざわざギフトで持ってる必要はない」
「なるほど」
「魔法系も、今のところ微妙だ」
「魔法も?」
「ああ。火魔法、水魔法、植物操作……そういうのは魔石で代用できる可能性がある」
「魔石で?」
「色付き魔石には、それぞれ属性があるだろ。だったら、魔法そのものを覚えるギフトより、魔石を使ったほうが早い」
アキラはスマートフォンの画面をスクロールする。
「俺が欲しいのは、そういう普通の能力じゃない」
「じゃあ、何?」
「特殊なやつだ」
アキラの指が止まった。
「例えば、これ」
《透過F》
「透過?」
ユウが画面を見る。
「何それ?」
「文字通りだ」
アキラはニヤリと笑った。
「身体ごと壁を抜けられる」
「えっ?」
ユウが目を丸くする。
「壁を?」
「抜けられる」
「全部?」
「たぶんな。Fだから、最初は薄い壁しか抜けないとか、時間制限があるとか、そういう制限はあるだろうけどな」
アキラは続けた。
「それだけじゃない。投げた物にも透過効果を乗せられる可能性がある」
「投げた物?」
「例えばナイフを投げる」
アキラは箸を持ち上げた。
「普通なら壁に当たる。でも透過できれば、壁を通り越して、その向こうにいる相手を攻撃できる」
「……」
ユウが固まる。
「それ、めちゃくちゃ強くない?」
「鍛えればチートだぞ」
「Fでも?」
「Fなら、多分かなり弱い」
アキラは笑った。
「でも、鍛えてランクが上がったら話は別だ」
「なるほど……」
次にアキラが見つけたのは、
《死霊F》
だった。
「死霊は?」
ユウが聞く。
「ネクロマンサーだな」
「ネクロマンサー?」
「死体を操る奴だ」
アキラの目が輝く。
「死体を自由にコントロールできるようになれば、面白いぞ」
「どう使うの?」
「お化け屋敷」
「お化け屋敷かよ!」
ユウが吹き出す。
「いや、かなり重要だぞ」
「どこが?」
「ネクロマンサーは強い死体が必要なんだ」
アキラは真面目な顔になる。
「強い魔物を倒したあと、その死体を操れるなら戦力になる。でも序盤は人骨とか、弱い魔物の骨ばかりだ」
「それって強いの?」
「弱い」
即答だった。
「叩いたらすぐバラバラになる」
「……」
「だから前半は雑用係だな」
「雑用係のネクロマンサー……」
「掃除とか運搬とかには使える」
「夢がない!」
ユウが笑う。
「でも、強い死体を手に入れたら化ける」
「なるほど」
アキラは次のギフトを見る。
《念力F》
「これは?」
「これはすごいぞ」
「念力?」
「物を念じて動かせる」
「どれくらい?」
「Fなら、たぶん鉛筆くらいだな」
アキラはテーブルの上の鉛筆を見る。
「でも鍛えて強くなったら?」
「武器も遠隔操作できるかもしれない。敵の武器を奪ったり、飛んでくる矢を止めたり、物を浮かせたり……可能性はかなりある」
「……特殊ギフトって面白いね」
ユウが画面を見る。
クラスLINEには、まだ大量のギフトが流れている。
アキラはステーキを最後の一切れまで食べると、スマートフォンを置いた。
「ユウ」
「なに?」
「回復と特殊ギフトのグループチャットを作れ」
「グループ?」
「ああ。身体能力系と普通の魔法系は除外していい」
「分かった」
「そこに俺からヒントを教える」
「ヒント?」
「鍛えてものになれば、仲間にするってな」
「鍛えて……もの?」
「鍛えて強くなったらだよ」
「今、ちょっと噛んだでしょ」
「うるさい」
ユウは笑った。
「分かった。今晩やっておくね」
「頼む」
アキラは立ち上がった。
「俺、シャワー浴びてくる」
「うん」
アキラが浴室へ向かう。
その姿を見送ると、ユウはすぐにスマートフォンを手に取った。
「さて……」
まずは、今日見つかった特殊ギフトを整理する。
透過。
死霊。
念力。
回復。
そして他にも、
《使役F》
《投術F》
《隠密F》
《音感F》
《発明F》
《植物鑑定F》
《毒耐性F》
《気配察知F》
「……どれが使えるんだろう」
ユウは悩みながら、一人ずつクラスメイトのプロフィールを確認していく。
そして個人LINEを送った。
《突然ごめんね》
《特殊ギフト持ってる人だけのグループ作るんだけど、入らない?》
返事が来る。
《何それ?》
《入る!》
《俺、使役Fだけどいい?》
《投術Fなんだけど……》
《特殊って何?》
《回復Fです》
ユウは次々と招待していく。
1人。
また1人。
そしてまた1人。
気がつけば、グループの人数はどんどん増えていた。
「……思ったよりいる」
ユウは画面を見ながら、少し驚いた。
特殊ギフト。
それは、一見すると役に立たなそうな能力ばかりだった。
だが。
アキラが言った。
鍛えれば、化ける。
ならば、この中に。
まだ誰も知らない、とんでもない能力の持ち主がいるかもしれない。
ユウはそんなことを考えながら、微笑んだ。
「どんな人がいるんだろう」
浴室からシャワーの音が聞こえてくる。
新しい仲間探しは、こうして静かに始まった。




